ピックルボールの殿堂入り2026年組が発表され、選手3人に加えて、審判制度を一から築いた女性2人が貢献者部門で選ばれた。米公式サイトPickleball.comが9月14日に伝えたもので、2人はリンダ・レイモン氏とマーシャ・フレソ氏。試合を裁くルールと人材がなければ大会は成立しないという当たり前の土台を、競技の草創期に作った功労者だ。大会が急増し国際化する日本にとっても、審判という縁の下の仕事がどう整えられてきたかは、これから運営を担う人が知っておきたい話になる。
審判の教科書を最初に書いた2人の女性
殿堂は選手の栄誉と思われがちだが、2026年組では貢献者部門の2人が競技インフラの担い手だった点に厚みがある。スター選手の記録は華やかでも、その記録は公正に裁く審判がいて初めて成立する。レイモン氏とフレソ氏は、審判をボランティアの善意任せにせず、研修と認定という仕組みに落とし込んだ世代だ。
ベトナムの大会がAIによる判定支援を導入するように、いまや判定は技術で補強される時代に入った。それでも判定基準を定め、人を育てる土台がなければ機械も機能しない。2人の仕事は、その土台そのものだった。
リンダ・レイモンが25年で整えた研修の型
レイモン氏は25年以上をピックルボールの普及に費やし、USAピックルボールの理事として研修と審判制度の整備を主導した。夫のリン氏とともに、この競技で初めての体系的な審判研修プログラム、手引き、判定ガイドラインを作り上げたと紹介されている。つまり、いま各国で使われている審判教育の原型を書いた人物だ。
ルールブックがあっても、それを実際のコートでどう適用するかを教える教材がなければ審判は育たない。レイモン氏が整えたのは、ルールと運用の間を埋める実務の型だった。大会の数が増えるほど、この標準化された研修の価値は増していく。
マーシャ・フレソが5か国で審判を育てた
フレソ氏は、USAピックルボール公認審判の最初の10人の1人だ。夫のバイロン氏とともに、まだ職業として確立していなかった審判を草創期に形づくり、米国内にとどまらずインド、中国、ベルギー、イングランド、ベトナムで審判を指導した。育成の対象がアジアや欧州に及んでいた点は、この競技の国際化が審判の裾野づくりと並走してきたことを示す。
指導先にベトナムやインド、中国というアジアの主要国が入っていることは、日本のプレーヤーにも無関係ではない。国際大会でアジア各国の審判と接する機会が増えるなかで、判定の共通言語をたどれば、こうした草創期の育成にたどり着く。
審判を職業として認めるという発想自体が、当時は新しかった。プレーの技術は選手個人が磨けても、判定の質は制度でしか担保できない。フレソ氏が各国を回って認定審判を増やしたことは、競技が国境を越えて同じルールで戦える前提を作った。日本の大会がアジアの選手を迎えるとき、その前提の恩恵を静かに受けている。
選手3人と貢献者2人が並んだ2026年組
| 部門 | 名前 | 主な功績 |
|---|---|---|
| 選手 | マット・ライト | プロ通算460勝超、法律家と二足のわらじ |
| 選手 | ルーシー・コバロバ | シングルス・ダブルス・ミックスで王座、世界1位 |
| 選手 | デイブ・ワインバック | 複数部門で主要タイトル、トップ指導者 |
| 貢献者 | リンダ・レイモン | 初の体系的審判研修・手引き・判定指針を策定 |
| 貢献者 | マーシャ・フレソ | 公認審判最初の10人、5か国で審判を指導 |
※Pickleball.com(9月14日)より。
日本の大会運営に審判研修の型をどう移すか
日本では大会や体験会が各地で立ち上がり、選手が教える側へ回る動きも出てきた。次に整えるべきは、選手を裁く審判の層だ。エントリーが埋まる大会が増えるほど、公正な判定を安定して供給できるかが運営の質を決める。レイモン氏らが作った研修の型は、その整備を一から考えずに済む出発点になる。
日本が世界ベスト4に入った国際大会のような舞台では、判定の一つが結果を左右する。競技力の底上げと審判の育成は車の両輪で、片方だけ伸ばしても大会は成熟しない。殿堂が貢献者に光を当てたことは、日本がこれから審判に投資する意味を後押しする。
11月13日の式典で何が起きるか
式典は2日構成だ。11月12日にドキュメンタリー上映、翌13日にアリゾナのゴールドキャニオン・リゾートで殿堂入りセレモニーが開かれる。あわせて、100の個人や団体が500ドルずつを拠出して競技の歴史を保存する「The Keepers 100」という基金も動いている。記録を残す取り組みまで含めて、競技が自らの来歴を大切にし始めた段階に入った。
日本の運営者が次にできることは、目の前の大会で審判を一人でも多く育て、その手順を書き残すことだ。いまは海外の研修体系をたどれるが、いずれ日本のコート事情や気候に合った手引きが必要になる。屋内外の球の違い、施設ごとのローカルルール、初心者大会での運用など、現場に即した判断基準は日本で書き足すしかない。殿堂入りの2人が草創期にやったことを、規模を変えて日本でもなぞる番が来ている。審判が育てば、大会はもっと開きやすくなる。
参照元
Pickleball.com「Pickleball Hall of Fame welcomes the Class of 2026」

