ツアーの第一線から退いていた米国のプロが、コートではなく用具の世界で表舞台に戻ってきた。3度のPPAツアー金メダルを持ち、いまはPickleball TVで解説を務めるトーマス・ウィルソンが、自身のパドルブランド「Witness Pickleball」を立ち上げた。米メディアpickleball.comが2026年9月9日に報じたもので、第1号のパドルは2026年秋の発売を予定している。選手が用具ブランドの当事者になる流れは北米で加速しており、市場が育ち始めた段階の日本にとっても、パドル選びと仕入れの景色を変えうる動きだ。
ガレージの試作から生まれたWitness、第1号は2026年秋
pickleball.comによれば、ウィルソンは2024年以降、長引く呼吸器の不調で公式戦から離れていた。試合には出られない期間に取り組んだのが、選手時代から続けてきたパドルづくりだった。自宅のガレージで無数の試作を削り出し、量産にあたっては中国のメーカーと直接面談を重ねてブランド化にこぎつけたと報じられている。商品はまだ写真も価格も公開されておらず、確定しているのは会社名「Witness Pickleball」と、2026年秋という発売時期、そして創業者がウィルソン本人であることだ。
同メディアのインタビューで、ウィルソンは「ツアーにいた頃、多くのプロや周囲の人間が、自分がパドルに取り憑かれていることを知っていた」と語り、開発の動機を「試合に持ち込める感触を探して、数えきれないほどの試作を試してきた」と振り返っている。既製品を売る立場ではなく、自分が現役で使いたかった1本を形にする、という順序で始まったブランドである点が、この話の芯にある。
| 項目 | 確認できている内容 |
|---|---|
| ブランド名 | Witness Pickleball |
| 創業者 | トーマス・ウィルソン(本人) |
| 経歴 | PPAツアー金メダル3個、現在はPickleball TVの解説者 |
| 開発の経緯 | ガレージで試作を反復し、中国メーカーと面談して量産へ |
| 第1号の発売 | 2026年秋(製品仕様・価格は未公表) |
| 出所 | pickleball.com(2026年9月9日報道) |
3度のPPA金メダルからマイク側へ、止まっていた現役
ウィルソンは北米のツアーで実績を残してきたダブルスの選手だ。過去にはミックスダブルスでビビアン・デイビッドと組み、ヒューストンの大会で勝ち上がった試合がThe Dinkなどで取り上げられている。金メダル3個は、単発ではなくツアーで繰り返し勝ち上がってきた選手であることを意味する。日本ではまだ知名度の高い名前ではないが、北米では「元トップ選手が解説席にいる」という認識が定着している人物だ。
いまはPickleball TVの解説席にいる
現役から解説に軸足を移した選手は珍しくないが、ウィルソンの場合は引退宣言ではなく健康上の理由による中断という位置づけになる。試合を見る側・語る側に回りながら、用具の細部を評価し続けられる立場は、パドル開発と相性がよい。プロの試打感覚と、放送で使う言語化の力の両方を持つ作り手は、そう多くない。
2024年で止まった試合出場
2年近く公式戦から離れている事実は、Witnessにとって二面性がある。現役のトップ選手が自分の名前で売るブランドは強い訴求力を持つが、ウィルソンは「いま勝っている選手」ではない。ブランドの説得力は、本人の直近の戦績ではなく、開発への執着とプロダクトそのものの完成度で示す必要がある。
選手が自分のパドル会社を持つ動きが広がっている
ウィルソン個人の物語であると同時に、これは2026年のパドル市場を映す1コマでもある。大手ブランドが選手と契約して名前を借りる従来の形に対し、選手側がブランドの所有者に回る例が、北米やアジアで表に出てきている。ベトナムでは、若手のクアン・ズオンが自らの名を冠したパドルの第2世代Wika QD V2をハノイで披露しており、アジア発でも「選手=作り手」の座組みが動き始めた。ウィルソンのWitnessは、その北米版として並べて読める事例だ。
供給側の環境も追い風になっている。パドルは金型と素材が決まれば中国の工場で量産でき、個人でも中国メーカーと直接組めば小ロットからブランドを立ち上げられる。だからこそ市場は新製品であふれ、日本の店頭に届く前に海外で完売する型番も出てきた。pickle-timesでも日本未入荷の新パドル5本を取り上げたが、フォーム系コアなどの新しい設計が短い周期で入れ替わっている。大手もJOOLAが初のフルフォーム「POWER FX」で構造を刷新するなど、技術の更新速度は上がる一方だ。選手個人ブランドは、その速い流れに小回りで入り込む余地を突いている。
日本のプレーヤーとショップが見ておくべきこと
日本の読者にとって、Witnessの発売は「秋に買えるか」という単純な話にとどまらない。個人・新興ブランドが海外で立ち上がるとき、日本のユーザーが直面するのは価格でも性能でもなく、入手性とサポートの薄さだからだ。ここを冷静に見ておくと、輸入待ちで焦る買い方を避けられる。
海外直販が中心で手に入りにくい
新興ブランドは初回ロットが小さく、公式サイトの直販か一部の海外通販でしか手に入らないことが多い。送料と関税を含めると実質価格は跳ね上がり、破損時の交換や公認(トーナメント使用可否の認証)の扱いも読みにくい。Witnessは製品情報が未公開のため、発売時に「認証の有無」「日本への発送可否」「保証条件」の3点を最初に確認したい。ここが不透明なうちは、実戦投入用ではなく試打・話題性として捉えるのが安全だ。
ショップ・スクールの仕入れ判断
用具を扱う店やスクールにとっては、選手個人ブランドは扱いの難しい商材だ。物語性は集客に効くが、供給が不安定で在庫リスクが高い。初期は数本だけ試打用に確保し、顧客の反応と再入荷の安定度を見てから発注量を決める、という段階的な入れ方が現実的だろう。ブランドのストーリーを店頭やSNSで伝えられる体制があるかどうかも、仕入れ判断の分かれ目になる。
まとめ、いま日本でできる一手
Witness Pickleballは、勝っている現役ではなく、パドルに取り憑かれた元トップ選手が自分の手で始めたブランドだ。製品の実像は2026年秋まで見えないが、選手が作り手に回る世界的な流れの一つとして、日本のプレーヤーとショップは今から観察しておく価値がある。まず取れる一手は、Witnessの公式発表チャネルをブックマークし、発売時に「日本への発送可否」と「トーナメント認証の有無」を最初に問い合わせることだ。この2点が押さえられて初めて、話題のパドルは実戦の選択肢になる。
参照元:
pickleball.com「Thomas Wilson announces new paddle company」(2026年9月9日) pickleball.com

