米ノースカロライナ州カリーで開かれたPPAツアーの年間王座決定戦「ヴェオリア・ピックルボール・ナショナル選手権」で、ミックスダブルスの第1シードだったアンナ・リー・ウォーターズ/ベン・ジョンズ組が、準決勝で第3シードのジョーヤ・ジョンソン/JWジョンソンの兄妹ペアに逆転負けを喫した。試合は9月5日の土曜夜。ウォーターズとジョンズは女子・男子それぞれのトップに君臨してきた2人で、この顔合わせでは22勝2敗と圧倒していた。その相手に足元をすくわれた一戦は、日本のミックス強化を考えるうえでも中身を見ておく価値がある。
22勝2敗の相手にジョンソン兄妹が競り勝った
第1ゲームを落としてからの逆転
第1ゲームはウォーターズ/ジョンズが11-4で圧倒し、下馬評どおりの立ち上がりだった。ところが第2ゲームをジョンソン組が11-9で取り返すと、第3ゲームも11-6で振り切り、3ゲームマッチをひっくり返した。序盤の劣勢から自分たちの時間へ引き寄せた展開で、この2人はシーズンの準決勝で初めて姿を消すことになった。
カリーで2年続けて同じ相手を破った
ジョンソン兄妹がこの2人をカリーで下すのは、2025年4月に続いて2年連続になる。同じ会場、同じ顔ぶれの再戦で、しかも今回は勝ち上がりの重みが違う準決勝だった。相性の一言で片づけられない積み重ねが、スコアの裏側にある。
ウォーターズとジョンズはなぜ倒しにくかったのか
男女それぞれのトップが同じコートに立つペア
ウォーターズは女子で長く勝ち続け、ジョンズは男子で史上最強格(GOAT)と呼ばれてきた。片方だけでも手強い選手が2人そろえば、守るコースも打ち合いの精度も跳ね上がる。しかもこの22勝2敗は、ほかでもないジョンソン兄妹との直接対決の通算成績だ。兄妹から見れば通算2勝22敗の格上であり、その相手を3ゲームマッチで競り落としたからこそ、今回の一勝は番狂わせと呼ばれる。
| ゲーム | スコア | 取ったペア |
|---|---|---|
| 第1 | 4-11 | ウォーターズ/ジョンズ |
| 第2 | 11-9 | ジョンソン兄妹 |
| 第3 | 11-6 | ジョンソン兄妹 |
第3シードでも格上に届いた要因
兄妹は普段から近い距離で練習を重ねてきた間柄で、前衛と後衛の入れ替わりや詰めの速さに迷いが出にくい。ホームに近い会場の後押しも大きく、劣勢の第1ゲームを引きずらずに立て直せたのは、コート上の意思疎通が短い言葉で済むペアだからこそだった。
選手と大会側はこの一戦をどう語ったか
「観客が毎回現れてくれた」——ジョーヤの言葉
ジョーヤ・ジョンソンは勝因を観客の後押しに求め、「観客だと思う。毎回本当に足を運んで、盛り上げてくれた」と語った。会場の空気を味方につけた実感が、逆転の推進力になったことをうかがわせる。
JWは相手を「弱点はない」と評した
兄のJWジョンソンは、破ったウォーターズ/ジョンズの弱点を問われて「弱点はまったくない」と相手を持ち上げたうえで、「自分たちのAゲームを貫き、戦略から外れずにやり続けただけだ」と勝ち方を説明した。穴のない相手を力でこじ開けたのではなく、自分たちの型を最後まで崩さなかったという受け止めだ。大会側や現地報道も、この試合をウォーターズがシーズンの準決勝で初めて落とした瞬間として扱い、開幕戦でのトリプルクラウンの芽が消えたと伝えている。
日本の選手とファンがこの結果から読み取れること
兄妹・家族ペアという日本にも作れる強み
格上を倒したのが、有名選手を寄せ集めたペアではなく兄妹だった点は見逃せない。同じJWジョンソンは男子ダブルスでは10歳のタマ・シマブクロと組み、上位ペアが総入れ替えになった新シーズンへ臨んでいる(島袋がJWジョンソンと組む、PPA新シーズンで上位ペアが総入れ替えに)。個の力で組み替えを繰り返す潮流の一方で、長く一緒に打ってきたペアの阿吽の呼吸が土壇場で効くことを、今回のミックスは示した。練習相手を固定しづらい日本でも、家族やクラブ単位で長期間ペアを組み続ける発想は、限られた強化資源で戦ううえで現実的な選択肢になる。
ミックスは序列が動きやすい種目
男女が交互に守るミックスは、片方の一瞬の判断で流れが変わりやすく、実績で劣る側にも勝ち筋が残る。15歳のシマブクロが深センのミックスで金を取った(15歳シマブクロが深センでミックス金、パドル歴2年で三冠にあと一歩)ように、若手や新顔が一気に序列を押し上げやすいのもこの種目だ。日本代表がワールドカップで世界ベスト4に入った実績を踏まえれば、伸びしろの大きいミックスに強化の的を絞る意味は小さくない。
決勝はブライト&パトリキンが制した
兄妹は決勝で3ゲーム連取される
準決勝の勢いを持ち込んだジョンソン兄妹だが、決勝ではアンナ・ブライト/ヘイデン・パトリキン組に11-9、11-3、11-7で敗れ、優勝には届かなかった。ブライトとパトリキンにとっては、2026年2月のメサに続く2度目のペア戴冠になる。王者を倒した側が、そのまま頂点に立てるとは限らない厳しさが出た。
王座の主役が入れ替わる流れ
第1シードの敗退と、別のペアによる優勝が重なったこの大会は、ミックスの序列が固定されていないことを一枚の結果表に凝縮した。ウォーターズ個人に目を向ければ、チーム戦のMLPでは2年越しの雪辱を果たして優勝したばかりで(ニュージャージー5sがMLP初優勝、ウォーターズ2年越しの雪辱)、個人ツアーでの取りこぼしとチーム戦での戴冠が同じ時期に同居している。強い選手ほど全戦全勝が難しくなってきた現状が読み取れる。
| ラウンド | 勝者 | 敗者 | スコア |
|---|---|---|---|
| 準決勝 | ジョンソン兄妹 | ウォーターズ/ジョンズ | 4-11, 11-9, 11-6 |
| 決勝 | ブライト/パトリキン | ジョンソン兄妹 | 11-9, 11-3, 11-7 |
PPAツアーの結果を追うには
配信と結果の確認先
ヴェオリア・ナショナル選手権はPPAツアーの大会で、対戦結果やハイライトは公式サイトと動画配信で追える。海外ミックスの試合運びは、序盤を落としたあとの立て直し方や、前衛の詰めの間合いなど、日本のプレーヤーがそのまま持ち帰れる要素が多い。番狂わせの一戦は、勝った側だけでなく崩れた王者の対応の遅れにも学ぶ点がある。
次に見るべき一戦
まず追うべきは、ウォーターズ/ジョンズが次戦でどう立て直すかだ。今回の敗因が一時的なものか、ミックスの勢力図が動き始めた兆しかは、次の顔合わせで見えてくる。あわせて、ジョンソン兄妹が準決勝の番狂わせをタイトルへ結びつけられるかも見どころになる。手元でできる具体的な一歩として、次のPPA大会のミックス準決勝以降を、スコアの推移まで追いながら見比べてほしい。逆転が起きた試合の第2ゲーム冒頭に、必ず流れの変わり目が刻まれている。
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