テスラが8月20日、ピックルボール用パドル「Aurum(オーラム)」を米国で発売した。用具メーカーのセルカーク(Selkirk)との共同開発で、価格はパドル単体が295ドル(約4万4千円、1ドル148円換算の概算)、専用ケース付きが350ドル(約5万2千円)。ボディカラーは同社の自動運転タクシー「Cybercab(サイバーキャブ)」の外装色を写した金銅色で、2025年に出した第1弾「Tesla Plaid」に続く2作目にあたる。
この製品が海外メディアで注目を集めた理由は、色や価格よりも売り方の条件にある。購入できるのはテスラ車のオーナーに限られ、自分の車が登録されたテスラアカウントにサインインして所有を確認しないと決済に進めない仕組みになっている。数量を絞った米国内だけの販売で、40ドルのTシャツも同時に出た。日本のプレーヤーには購入が実質的に困難だが、自動車メーカーがなぜパドルを作るのか、その戦略は売り方そのものに表れている。

第1弾Plaidとの違いはCybercab色と、オーナー限定販売
Aurumは前作Plaidの特別仕上げ版という位置づけで、内部の技術は引き継いでいる。変わったのは外装で、Cybercabの金属的な塗装をパドル面に落とし込んだ。デザインはテスラの製品デザイン責任者Javier Verduraと、セルカークのTom Barnesが手がけた。第1弾が一般に購入可能だったのに対し、今回は車の所有確認を挟む点が最大の差だ。パドルそのものの性能を競うより、テスラという所有体験の一部として配布する色合いが強い。
テスラの空力チームが持ち込んだ「車の設計言語」
テスラ側の説明によれば、設計チームは抗力係数や乱流パターン、幾何形状の変化がスイングの加速に与える影響を調べ、その知見をパドルの空力デザインに反映したという。これはメーカーの言い分で、第三者による性能検証は公表されていない。パドルの空力効果は車体ほど単純には作用しない。実際の飛びやコントロールを左右するのは、面の素材とコアの構成のほうが大きい。それでも、車づくりの語彙をそのまま用具に持ち込む見せ方は、セルカークがコメディ映画に自社パドルを主役として組み込んだブランド露出の積極性と軌を一にしている。用具の性能訴求と、話題づくりのための物語は、別のレイヤーで走っている。
フルフォームコアとInfiniGrit、打感を決めるのは色ではない

構造はフルフォームの「PureFoam」コアに2層カーボンのフェース、スピンをかけるためのInfiniGrit表面、振動を抑えるTPU Power Ringを組み合わせている。フォームコアは現在、ハニカムから主役が替わりつつある方式で、芯を外した打点でもボールが暴れにくく、コントロール寄りの手応えが出やすい。裏を返せば、Aurumの打感は色やロゴではなく、この構成が決めている。スピン表面を売りにするパドルは、10月に控える回転数の上限規制とも無関係ではなく、大会で使うなら認証区分の確認が必要だ。295ドルの限定品を試合で使う人は多くないだろうが、道具としての中身は一般的なプレミアムパドルの範囲に収まる。
日本のプレーヤーが買えない一本から読み取れること
Aurumは米国のテスラ車オーナー向けで、日本からは実質的に購入できない。それでも見ておく価値があるのは、パドルづくりと縁のなかった企業が、ライフスタイルとロイヤルティ施策としてピックルボールに参入してくる型だ。所有者限定という条件は、値段の高さではなく「テスラを持つ人だけの特典」という囲い込みを狙っている。日本でもSansanのように本業の異なる企業がコートやチームに投資し始めており、用具はその関係を可視化する小道具になり得る。プレー用に一本選ぶなら、テスラの名より、フルフォームコアと2層カーボンという構成そのものを国内で流通するブランドから探すほうが現実的だ。ブランドの物語に払う分と、打感に払う分は分けて考えたい。
295ドルのAurumは色で選ぶ一本、打感はフルフォームコアと2層カーボンが決める
Aurumは8月20日発売、単体295ドル・ケース付き350ドル、Cybercab色をまとった第2弾で、テスラ車オーナー限定・米国内・数量限定という売り方が本体だ。技術はPlaidから据え置きで、打感を決めるのはフルフォームコアと2層カーボンの側にある。日本で似た手応えの一本を探すなら、色やコラボ名を外して、コア方式とフェース素材、そして手持ちの大会が求める認証区分から逆算して選ぶのが早い。車の外装色に惹かれたなら、その気持ちはそのままに、実際に握るパドルは自分の打ち方に合うコアで選び直せばいい。

