台湾が自前のプロ・ピックルボールリーグ「Asia Elite Pickleball League(AEPL/亜洲精英匹克球聯賽)」を立ち上げ、8月29〜30日に台中で初戦を迎える。参加は5チーム、そこから11月まで台湾各地を巡ってシーズンを戦う。プロバスケットボールの桃園レパーズが母体の一角に入り、シーズン賞金は総額100万台湾ドル(約3万1000米ドル、日本円で460万円前後・概算)。
日本のプレーヤーにとっての焦点は、隣の島が「愛好者の草の根」から「チーム興行」へ一段飛ばしで踏み込んだ設計そのものにある。個人戦のトーナメントではなく、チームが所属を背負ってリーグ戦を回す形を、台湾は最初から選んだ。
5チームが11月まで台湾8会場を巡る、桃園レパーズはバスケ組織が母体
初年度に名を連ねるのはGrand Launch Group、桃園レパーズ(Taoyuan Leopards)、Ahhh、Team Lumu、Furete Techの5チーム。AEPL側は台中を拠点とするもう1団体と交渉しており、6チーム目として加わる可能性がある。試合は台中を皮切りに国内8会場を移動し、11月のファイナルまで続く。
座組みで目を引くのが桃園レパーズだ。これは台湾のプロバスケ「桃園台湾ビール・レパーズ」につながる名前で、同バスケ組織のCEOジョニー・チャン氏が関わり、ウィリー・チュン氏がピックルボールチームの主将を務める。リーグ全体の指揮を執るのはAEPLの張智偉(Chang Chih-wei)CEO。最年少選手には15歳の邱子恩(Chiu Tsi-en)が名を連ねる。既存のプロスポーツ組織が、新競技のチームをそのまま抱える構図になっている。
バスケの箱と運営ノウハウを丸ごと流用した立ち上げ方
ゼロから協会を作り、会場を借り、スポンサーを口説き、観客を集める——リーグ興行の面倒な工程を、桃園レパーズは既存のバスケ組織から借りて省いている。集客の導線、チケットや会場運営の段取り、スポンサー営業の窓口は、バスケで一度動いているものを転用できる。だから発表から開幕までの助走が短い。8月17日に開幕日程が伝わり、月内に初戦という速さは、この「間借り」なしには成立しにくい。
初年度の賞金460万円前後という規模は、選手が生活を賭けるにはまだ小さい。それでも興行の器を先に作り、そこへ賞金と選手を後から積み増していく順番は、施設や大会数を先に増やしてから競技を乗せる普及型と対照的だ。台湾はインドが公認連盟IPAのもとで積み上げる普及型の設計とは逆から入り、まず「見せる試合」の箱を用意した。
日本のPXリーグと何が違うのか、企業横並びかスポーツ興行か
チームがリーグ戦を回す形は、日本にも先例がある。SansanのPX LEAGUEは6社がチームを持つ企業対抗として動いてきた。ただし性格は違う。日本のそれは福利厚生や社内活性化の色が濃く、参加主体は事業会社だ。台湾のAEPLは、はじめからプロスポーツ興行の文法で組まれ、母体にプロバスケ組織を据えて観客動員を狙う。
制度面でも差がある。日本は連盟がJSPOの承認という五輪へ向けた一段目を踏んだばかりで、統括と普及の土台を固めている段階にある。台湾は統括の完成を待たず、民間の器で先に興行を回し始めた。どちらが正解というより、普及の順番の違いが表れている。
台中開幕から日本のプレーヤーが読み取れること
AEPLは来季にシンガポール、マレーシア、香港、マカオからのチーム誘致を掲げている。名前に「Asia」を冠する以上、視線は台湾島内にとどまらない。現時点で日本は誘致先に挙がっていないが、隣の市場が「アジアのチーム対抗」を先に立ち上げた事実は、日本のトップ層が近距離で実戦の場を見つけられることを意味する。渡航1本で追える競技リーグが増える。
台湾はもともとシニアの介護予防にピックルボールを国策で使ってきた土壌があり、その裾野の上にプロ興行を乗せた。普及の下地とプロの興行を両輪で走らせる構図は、コート不足に悩む日本の現場が観察する価値がある。日本のプレーヤーがすぐ真似られるのは、既存スポーツの箱を借りて試合の場を作るという発想の部分だ。
AEPLを追うための実用メモ
- 初戦:8月29〜30日、台中の1908台中緑空鉄道廊道(台中駅周辺)のピックルボール施設
- 参加:Grand Launch Group/桃園レパーズ/Ahhh/Team Lumu/Furete Techの5チーム(6チーム目を交渉中)
- 会期:8月末から11月まで、台湾国内8会場を移動しファイナルへ
- 賞金:シーズン総額100万台湾ドル(約460万円・概算)
- 来季:シンガポール・マレーシア・香港・マカオのチーム誘致を計画
賞金でなく「器を借りた立ち上げ」が効いている
台湾のAEPLは、賞金の大きさで勝負する段階にはない。効いているのは、プロバスケの器を借りて開幕までの助走を縮めた立ち上げ方だ。日本のプレーヤーは、まず8月29日の台中初戦と初年度5チームの戦いぶりを追い、来季のアジア拡大がどこまで進むかを見ておくとよい。隣の島がチーム興行を先に回し始めたことは、日本が次に何を借りて場を作るかを考える材料になる。

