米国発のインドアピックルボール施設ブランドPICKLRが、日本初の常設拠点と位置づける「PICKLR TOKYO TOYOSU」の正会員募集を2026年7月23日に開始した。運営は株式会社日本ピックルボールホールディングス。東京都江東区塩浜1-2-2に約560坪、PICKLR & PPA TOUR公式基準のハードコート7面を構え、開業は2026年9月を予定するとしている。料金はPLAYが入会金33,000円・月会費22,000円、UNLIMITEDが55,000円・33,000円、100名限定のPROが330,000円・66,000円。日本のラケットスポーツ施設でこの価格帯の完全会員制が回るのか——その問いが、初めて具体的な数字を伴って市場に置かれた。
正会員募集で開示された三つの価格帯
今回のリリースで新しいのは、9月開業を前に正会員の料金体系が全面的に開示された点にある。PLAYは月会費22,000円でソーシャルプログラムが月4回まで無料、予約料は50%OFF。UNLIMITEDは33,000円で予約料が無料になり、プログラム参加は回数制限なし。今後開業する国内店舗も使える「ALL JAPAN ACCESS」が付く。最上位のPROは月66,000円で100名限定。ブランドが掲げる「No.1」には、世界で展開されているピックルボールクラブブランドとして自社調べ(2026年7月時点)という注記がある。
この募集の前段には、6月18日に始まった第1期ファウンダー会員がある。入会金が通常の50%OFF、月会費が永年10%OFFという条件で、PLAYとUNLIMITEDの2プランが約48時間で完売したと報じられた(会員権が48時間で完売、豊洲Picklrが示した都心の需要)。今回のリリースに割引の記載はなく、表示されているのは通常価格だ。需要のテストとしてはここからが本番になる。
「豊洲」を名乗る塩浜1丁目、560坪に7面という設計
施設名は豊洲だが、住所は江東区塩浜。有楽町線・ゆりかもめ「豊洲」駅とJR京葉線「越中島」駅から徒歩約10分で、建物内に専用駐車場を約30台分置く予定という。営業時間は7:00〜23:00を想定し、プロショップやラウンジ、AIコーチングも設備に並ぶ。用具を持ち歩く競技者には、徒歩10分に加えて車で乗り付けられる点が効く。
面積は米国の標準からするとコンパクトだ。小売不動産の業界団体ICSCの記事では、The Picklrの標準的な拠点は8〜12面・約25,000〜35,000平方フィート(およそ700〜980坪)とされる。豊洲は約560坪で7面。総床面積では本国の標準を下回る一方、1面あたりを単純に割ると約80坪で、米国レンジの内側に収まる。面数を削って1面あたりの余裕を確保した形だ。後述するSansan池袋のように都内の新設コートは時間貸しが主流で、豊洲は入口の設計そのものを会員制に振り切っている。
都内の実勢価格と並べると、どの位置に着地するのか
比較対象をピックルボールの他施設だけに限ると判断を誤る。この価格帯で競合するのは、テニススクールでも公営ジムでもなく、ホテル系の会員制フィットネスクラブだ。
| 施設・サービス | 初期費用 | 月額(または都度料金) |
|---|---|---|
| PICKLR TOKYO TOYOSU/PLAY | 入会金33,000円 | 22,000円(プログラム月4回まで無料) |
| PICKLR TOKYO TOYOSU/UNLIMITED | 入会金55,000円 | 33,000円(回数制限なし) |
| PICKLR TOKYO TOYOSU/PRO(100名限定) | 入会金330,000円 | 66,000円 |
| Sansanピックルボールコート池袋 | なし(都度利用) | インドア5,500〜8,800円/1時間(コート単位) |
| Le CLUB(グランドニッコー東京 台場)/個人会員 | 入会金220,000円 | 22,000円+利用ごとに1,100円 |
| 東京体育館ティップネス/プランA | 公表なし | 9,000円 |
| 都内テニススクール(大人・週1回グループ) | スクールにより異なる | およそ8,000〜15,000円が相場とされる |
並べて見えるのは、PICKLRの月会費がホテル系フィットネスクラブと同じ帯に乗っていることだ。グランドニッコー東京 台場のLe CLUB個人会員は月会費22,000円で、利用のたびに1,100円が別途かかる。PLAYの22,000円はこれと並び、UNLIMITEDの33,000円は1.5倍にあたる。違いが出るのは初期費用だ。Le CLUBは入会金220,000円が要るのに対し、UNLIMITEDは55,000円、PLAYは33,000円。四分の一以下で入口をくぐれる。初期の敷居を下げ、月次で回収する設計になっている。
月に何時間打てば、都度払いを下回るのか
愛好者の判断材料は単純だ。7月10日に開業したSansanピックルボールコート池袋のインドアコートは1時間5,500〜8,800円。ダブルスで4人が均等に割れば1人あたり1,375〜2,200円になる。UNLIMITEDの月会費33,000円をこの単価で割ると月15〜24時間。1回1時間半で数えれば月10〜16回、週2.5〜4回のペースで打つ人なら会員制のほうが安い。週1回の人には割高だ。営業時間を7:00〜23:00に置いたのは、朝と夜に通える都心の就業層をこの頻度まで引き上げる狙いだろう。
PLAYは構造が違う。月会費22,000円で参加費0円になるのは月4回まで。4回使い切って1回あたり5,500円の計算になる。ここは母数をそろえて比べたい。Sansan池袋のインドアコートを4人で割った1回1,375〜2,200円と並べると、その2.5〜4倍にあたる。運営側が組み合わせと進行を用意する点で単なるコート貸しとは違うが、予約料50%OFFを併用して初めて釣り合う設計だ。会員制の本体はUNLIMITEDにある。
PROの100名という枠も、逆算すると性格が見えてくる。開示された金額で単純計算すると、満席時の入会金は一括で3,300万円、月会費は年7,920万円。ただしこれは売上であって、内装や設備にいくら投じたかは公表されていない。採算の判定はできない。100名という上限と、AI・ボールマシン利用やパドルフィッティングといった特典の中身から読むなら、収益の柱というより、開業初期にコミュニティの核となる濃い層を100人押さえるための枠と見るほうが整合する。
市場が出しているシグナルを三つ拾う
まず需要の総量。株式会社ピックルボールワンが一般消費者3万人を対象に2026年3月に実施し、同年4月に公表した調査では、国内の競技人口は約33万人、興味を持つ潜在層は約1,189万人と推計された。前年の約4.5万人から7倍規模の伸びとされる(テニス経験者の72.5%が関心、33万人市場が持つ36倍の余白)。母数はまだ小さいが傾きは急だ。都心の稼働も出ている。Sansan池袋は6月10日の予約開始から1カ月で1,800件超の予約が入ったとImpress Watchが伝えており、屋内コートは開業前から埋まる(開業初日に増設決定、Sansan池袋が映す都心コートの過熱)。稼働率の不安より供給不足が先に来ている。
本国側の型も分かっている。ICSCが500拠点構想を伝えた取材で、The Picklr共同創業者のAustin Wood氏は、モデルを検証できる状態にするために直営7店舗を構えたと説明し、同じく共同創業者のJorge Barragan氏はフランチャイズの急成長を「一流のピックルボール体験に対する信じられないほどの需要」の表れだと語っている。米国のフランチャイズは会員制を前提に組まれており、豊洲はその型を持ち込んだ。ただし賃料も可処分所得も通勤動線も異なる日本で、同じ型が機能する保証はない。
施設運営者と愛好者、それぞれにとっての読み方
施設側から見た会員制の本質は、価格ではなくキャッシュフローの形にある。時間貸しは売上が平日夜と土日に集中し、平日昼が丸ごと空く。会員制は月次で定額が入るぶん、需要の谷を料金設計から切り離せる。裏返せば、生死は継続率が握る。使わない月が出た時点で22,000円も33,000円も割高に感じられる。ゴルフ会員権では2026年に年会費を引き上げるコースが過去最多となり相場に下落圧力がかかっていると日本経済新聞が報じている。試されるのは開業日ではなく、開業から6カ月後の更新月だ。
愛好者側は感覚ではなく記録で決めたい。いま月に何時間打っているかを2カ月ぶん数える。月15時間に届かないならUNLIMITEDは割に合わず、月24時間を超えているなら都度払いのほうが損になる。ゲストパスも効く。UNLIMITEDの月4回・PROの月8回は、仲間を連れて行く人への実質的な値引きになる。ただし公式サイトには同一ゲストの利用は3カ月に1回までという注記があり、同じ相手を毎週連れて行く使い方はできない。連れて行く顔ぶれの数がそのまま価値になり、一人で打つ人には乗らない。
会員制が根づくと、都内のコート供給はどう分岐するか
都内のピックルボール施設は二つの型に分かれ始めている。時間貸しで間口を広げる型には、Sansan池袋や、ゴルフ練習場の隣に1面を置いた南青山のPickle9が入る(南青山でゴルフの隣にコート、Pickle9が示す都心の勝ち筋)。もう一方が豊洲の完全会員制で、前者は初回接触を稼ぎ、後者は定着層を囲い込む。競合ではなく、同じ市場の別レイヤーだ。豊洲の正会員が定価で埋まれば、影響は競技の外にも及ぶ。倉庫や商業施設の空き区画を持つ不動産側にとって、時間貸しの収益は季節と天候に揺れるが、会員制の月会費は与信の材料になりうるからだ。埋まらなければ、日本市場では時間貸しが正解という結論が早々に固まる。
入会を検討する前に確認しておきたい情報
| 施設名 | PICKLR TOKYO TOYOSU |
| 所在地 | 〒135-0043 東京都江東区塩浜1-2-2 |
| アクセス | 東京メトロ有楽町線・ゆりかもめ「豊洲」駅/JR京葉線「越中島」駅から徒歩約10分 |
| 規模 | 約560坪/PICKLR & PPA TOUR公式ハードコート7面(屋内) |
| 設備 | ロッカールーム、プロショップ、ラウンジ、イベントスペース、AIコーチング |
| 駐車場 | 施設建物内の専用駐車場 約30台(予定) |
| 営業時間 | 7:00〜23:00(予定) |
| オープン予定 | 2026年9月(2026年7月時点の予定) |
| 正会員募集開始 | 2026年7月23日(木)/人数限定 |
| PLAY | 入会金33,000円・月会費22,000円/予約料50%OFF、プログラム月4回無料、レッスンパス月1回 |
| UNLIMITED | 入会金55,000円・月会費33,000円/予約料無料、プログラム無制限、レッスンパス月4回、ゲストパス月4回、国内全店舗アクセス |
| PRO | 入会金330,000円・月会費66,000円/100名限定、14日前予約、レッスンパス月4回、ゲストパス月8回、パドルフィッティング年1回 |
| 申込方法 | 公式サイト(picklr.jp)および公式LINE |
| 運営会社 | 株式会社日本ピックルボールホールディングス(東京都渋谷区広尾5-4-16 EAT PLAY WORKS 3F/代表取締役 ステァ賢和チャールズ) |
金額はいずれも税込表示。オープン時期・設備・駐車場台数は2026年7月時点の予定で、開業までに変更される可能性がある。
まとめ:判断は「月15時間」を境に分かれる
豊洲PICKLRの料金は、ホテル系会員制クラブの月額帯に桁違いに低い初期費用で乗り込んだ設計だと整理できる。分岐点は月15〜24時間の帯にある。検討中の人が取れる行動は三つ。9月の開業までに自分の月間プレー時間を実測する。ゲストパスを使う相手の人数を数え、その価値を月会費から差し引く。そして定員が埋まる速度を見る——第1期のPLAYとUNLIMITEDが約48時間で完売した以上、迷える時間は長くない。運営側であれば、注視すべきは初月の入会者数ではなく開業半年後の更新率だ。豊洲が出す数字は、この先に続く国内拠点すべての価格設計を左右する。
参照元:PR TIMES(株式会社日本ピックルボールホールディングス・2026年7月23日)/PR TIMES(同社・ファウンダー会員募集)/PICKLR Japan 公式サイト/スポーツマニア/Impress Watch/PR TIMES(株式会社ピックルボールワン)/ICSC/グランドニッコー東京 台場 Le CLUB/東京体育館ティップネス/グッドスクールマガジン/日本経済新聞

