パドルブランドのJOOLAが、アイスキャンディーのトラックで各地を巡る「JOOLA Pops Summer Tour」を5月23日にダラスで始め、7月に総括を公開した。15都市・34カ所で無料アイスを3,147本配り、来場は4,700人超、パドルの試打は400回を超えた。売り込みの主役は用具の反発係数でも重量でもなく、暑い日に手渡す一本のアイスだった。日本でもピックルボールの体験会や普及イベントが各地で増えている今、用具メーカーが「性能」ではなく「夏の記憶」を前に出したこの設計は、国内の作り手と普及団体がそのまま持ち帰れる。
ダラス発の1台のトラックが、15都市で3,147本のアイスを手渡した
ツアーは5月23日のダラス(Pickler Universe)を皮切りに、セントルイス、シカゴ(SPF Chicago)、ニューヨーク(CityPickle)、ボルチモア、ワシントンD.C.周辺、バージニアビーチまで、テキサスから東海岸へと北上した。会場ではアイスキャンディーの無料配布に加え、新作パドルの試打、カーニバル風のゲーム、限定グッズの配布が組み合わされている。JOOLAとPPAツアーの発表による総括では、34アクティベーション・15都市・来場4,700人超・アイス3,147本・試打400回超という数字が並ぶ。ここで注目すべきは、配ったのがパドルそのものではなく「体験」だった点だ。試打は入口にすぎず、持ち帰らせたのは涼しさと祭りの空気だった。
329ドルのRally Rocketを「melty drip」の見た目で出した狙い
ツアーの発売台として、限定コレクション「Rally Rocket」が5月26日にオンラインで投入された。Agassi・Perseus・Scorpeus・Hyperion・KosmosといったPro Vの各モデルを、赤・白・青とアイスの溶けたしずくを思わせるデザインでまとった一群で、価格は329.95ドル(約5万1千円、1ドル155円換算の概算)。ここで前面に出ているのは芯材やスピン性能の数値ではなく、SNSに載せたくなる見た目だ。SNSでは新作を「スナックみたいに見えて、プレーは夢のよう」と評する声が出た。JOOLAは製品そのものでも話題づくりを続けてきたが、Popsは製品の説明をいったん脇に置き、色と体験を先に出した。パドルは、その体験に共感した人が後から選ぶものとして置かれている。
400回の試打が示す、体験を通り道にした普及の設計
体験型の販促がピックルボールと相性がいいのは、この競技が「打ってみないと面白さが伝わらない」種目だからだ。カタログのスペックを読んで始める人はほとんどいない。無料アイスで足を止めさせ、その場で400回超の試打につなげる流れは、購入の手前に「まず握らせる」という一段を挟んでいる。パドルメーカーが用具の外へ出ていく動きは業界全体に広がっており、Six Zeroがアパレル15品目を出した例のように、ブランドを「コートの上のギア」から「日常で着るもの・食べるもの」へ拡張する流れと地続きだ。米メディアはこのツアーを、ピックルボールが用具競争からライフスタイル化へ移る象徴と位置づけている。体験は測りにくいが、SNSの投稿数と会場での接触人数という形で、確かに次の顧客を連れてくる。
裏取りできた数値
| Item | Figure | 出所 |
|---|---|---|
| 巡回都市 | 15都市 | JOOLA/PPA総括 |
| アクティベーション | 34カ所 | JOOLA/PPA総括 |
| 来場者 | 4,700人超 | JOOLA/PPA総括 |
| 配布アイス | 3,147本 | JOOLA/PPA総括 |
| パドル試打 | 400回超 | JOOLA/PPA総括 |
| Rally Rocket 価格 | 329.95ドル | JOOLA公式・The Dink |
| 開始日・起点 | 5月23日・ダラス | JOOLA official |
数字はいずれも主催者側の発表に基づく自己集計で、第三者の独立検証があるものではない。金額換算はあくまで目安として扱ってほしい。
日本のメーカーと普及団体が持ち帰れるもの
国内でも似た芽はすでに出ている。ウイルソンがグランフロント大阪に開いた期間限定店は、用具を並べる小売の場を「触って試す体験の場」に寄せた例だし、八王子の体験フェスは最大24面を使って「まず打たせる」導線を作った。JOOLA Popsとの違いは、無料の一品(アイス)で足を止めさせる仕掛けと、その日のうちにSNSへ流れる見た目を意図して設計している点にある。日本のメーカーが学べるのは、性能訴求と並行して「持ち帰りたくなる体験」を用意することだ。真夏の体育館やコートで、涼を配りながら試打につなげる設計は、国産カーボンや国産施設の話題づくりにも応用がきく。普及団体にとっては、来場者数を「その場で何人に握らせたか」で測り直す発想が、次の一手を具体化する。用具の良し悪しを説く前に、コートへの入口を一つ増やす——その順番を、1台のアイストラックが実演してみせた。
