パドルブランドのJOOLAが、契約するジュニアと新進プロ20人を対象にメンター制度『JOOLA Forward』を立ち上げた。The Kitchenが2026年9月23日に報じた。選手1人につき、ツアープロが競技の技術と心理をサポートし、会社の社員が進路やリーダーシップを見守る二層構造だ。女子選手向けには、リーダーシップ育成を専門とする外部団体『Inspire Through Sport』と組んだ別トラックも設けた。日本国内でも、10代選手が親とコーチだけでなく、ブランドや地域クラブから継続的に支援される環境をつくることは、競技の定着と深化に関わる課題だ。
20人の若手に大人が2人ずつ、JOOLA Forwardは何をするのか
発表によれば、この制度はジュニア選手に継続的な支えと人間関係が足りていないという問題意識から設計された。競技力の向上と人としての成長を同時に扱い、試合以外の場に選手を触れさせて、ブランドとの長い関係をつくることを狙う。
ツアープロと社員が1人ずつ担当する
初回の参加者は、JOOLAと契約するジュニア・新進プロ20人。1人につき、契約ツアープロと社員の2人がメンターとして付く。ツアープロ側はプレッシャーの扱い方や試合での習慣といった競技の中身を担い、社員側はビジネスやリーダーシップ、競技以外の関心事への接点を受け持つ。役割を明確に分けた二層構造is how it works.
メンター側に名前が出た選手とコーチ
現時点のメンターとして記事に挙がったのは、プロ選手のKate Fahey、Brooke Buckner、Donald Youngら。加えてJOOLAのコーチであるJohnnyとRegina Goldberg、Eric White、Scott Crandallの名前が並ぶ。同社のCraig Chester(Director of Partnerships)は「JOOLA Forwardは、選手を育てることは人を育てることだという私たちの信念を映したもの」と述べ、才能は道のりの一部にすぎず、自信と人格、導きが同じだけ重要だと説明している。
| Item | Details |
|---|---|
| Name | JOOLA Forward |
| Scope | JOOLA契約のジュニア・新進プロ20人(初回) |
| メンター | 1人につき2人(契約ツアープロ+JOOLA社員) |
| 女子向け | Inspire Through Sportと組んだ専用トラック |
| 運営基盤 | 16拠点・従業員400人超(同社発表としてThe Kitchenが伝えた数字) |
| 応募方法・期間 | 今回の発表記事では触れられていない |
女子選手の別トラックはInspire Through Sportと組んだ
もう一つの柱が、女子選手向けに別立てで用意されたトラックだ。JOOLAは女性が主導するリーダーシップ育成団体Inspire Through Sportと提携した。同団体はメンタリング、自信の育成、コミュニケーション、キャリアの道筋を専門とし、競技の外まで届く体系立てたカリキュラムを持つ。JOOLAはその枠組みを女子選手向けの枠に据えた。
自己主張と自信を扱うセッションを足す
そのうえで女子選手のトラックには、セッションが追加される。テーマは自己主張、持続的なパフォーマンス、自信の育成、リーダーシップの4つで、技術練習ではなく意思表示や自分を守る力に時間を割く設計だ。同社はこのトラックの狙いとして、同世代で支え合う輪を広げ、競技のなかでの発言力と存在感を強めることを挙げている。女子選手が競技環境で直面しやすい課題を、別枠で扱うと決めた点に踏み込みがある。
クラブや団体が導入する形のプログラム
Inspire Through Sportの公式サイトを見ると、同団体はコーチ・クラブ・組織と協働し、すぐ実施できるプログラムを提供する立場を取る。Engagement、Mentorship、Navigator、Leadershipという段階別のプログラムに加え、カリキュラムの個別設計やコンサルティングも並び、料金は問い合わせ制だ。JOOLAは育成カリキュラムを自前で開発せず、すでにある枠組みを自社の選手網に載せた。ゼロから組むより早く、専門性も借りられる。
用具を配るだけでは若手は競技に残らない
ここからが日本の読者に効く部分だ。スポンサー契約は、パドルとウェアを渡して大会成績を追う形が軸になりやすい。JOOLA Forwardは、その関係に人を割り当てる方向へ動いている。
契約が切れると関係まで切れてしまう
用具提供だけの関係は、成績が落ちて契約が終われば同時に消える。10代で結果が出なかった選手はブランドとも競技とも縁が切れ、そこで投資は回収されないまま終わる。メンターという人を挟むと、契約書より切れにくい線が残る。同社が「継続性と意味のある関係」を目的に挙げているのは、離脱の防止を織り込んだ話として読める。
社員メンターが渡すのは競技の外の選択肢
社員がメンターに入る設計は、選手の進路を競技の中だけに閉じ込めない。選手として上に行けなかった場合でも、ブランドの中で商品開発やマーケティング、コーチングに進む道が見える。JOOLAは1952年にドイツで創業した卓球用具メーカーで、アトランタからアテネまでの五輪に公式卓球台を供給し、2012年から2019年まで全米卓球協会の主要大会の公式テーブルスポンサーを務めた。2019年には米メリーランド州ロックビルのSport Squadが独JOOLA Tischtennis GmbHを買収し、2022年にピックルボール部門を立ち上げている。卓球で70年分積んだ商流と大会との関係をそのまま持ち込んだ会社で、16拠点・400人超という規模と合わせて、社内に用意できる出口の幅が広い。用具メーカーにとっては、将来の社員と伝道者を同時に育てる投資にもなる。
日本の10代に同じ仕組みを回せるか
日本の環境に置き換えると、競技の器は先に整いつつある。足りていないのは、選手1人を継続して見る人の配置のほうだ。
18Uの舞台は国内に増えてきた
12月には有明テニスの森公園で、全60面を使う国内最大級の大会が開かれ、プロカテゴリーのPPA Asia 125が日本に初上陸する。年齢カテゴリーには18Uが置かれ、10代は世界ランキングを争うプロの試合と同じ会場で自分の試合をこなせる。競技人口の伸びも、DUPRの新規登録者で日本は直近12か月170%増の世界5位という位置にある。入口と舞台は増えた。
15歳に値段がつく市場が動き出した
若手の市場価値もはっきりし始めた。MLPアジアの初ドラフトでは15歳のタマ・シマブクロが全体1位で指名された。各ラウンドの前にチームが金額を入札する方式で、この1位指名を取ったのはベトナムのViet Panthersだ。10代に金額が付き、しかもその金額を出すのが本人にゆかりのある国のチームとは限らない段階に入っている。ここで抜けているのが、値段が付く前の数年をどう支えるかだ。親とコーチだけで抱える現状に、ブランドや地域クラブが2人目、3人目の大人として入る余地がある。
国内のクラブやブランドが明日から試せること
JOOLAの規模をそのまま真似する必要はない。制度を要素に分ければ、10人規模のサークルでも扱える形になる。
3つの要素に分ければ規模は小さくてよい
| Element | JOOLAでの形 | 国内で小さく始める形 |
|---|---|---|
| 競技面の担当 | 契約ツアープロが指導 | 地域の上級者が月1回、特定の1人を見る |
| 競技外の担当 | 社員がビジネス面を担当 | 保護者以外の社会人が進路や両立の相談に乗る |
| 女子向けの別枠 | 外部団体のカリキュラム | 女性プレーヤーだけの練習日と相談の時間を作る |
費用の大半は人の時間で、道具や会場の追加はほぼ要らない。学校の部活動でも社会人クラブでも、担当を決めて名前を書き出すところから始められる。
分かっていない点と、秋のうちに決めておきたいこと
今回の発表では、応募の方法やプログラムの期間、20人の選出基準は明らかにされていない。JOOLA契約選手が対象と書かれている以上、公募型ではない可能性が高いが、断定できる材料はない。日本の愛好者が今できるのは、制度の追跡よりも自分の周りでの実装だ。クラブに10代がいるなら、秋の体験会や練習会の場で「技術を見る人」と「競技の外を見る人」を1人ずつ決め、月1回でいいので継続して声をかける担当を割り振っておきたい。20人分の制度より、1人分の継続のほうが先に効く。
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