レンタルスペース予約サイト「インスタベース」を運営する株式会社Rebaseが2026年9月24日、利用者231名に聞いた運動・スポーツの調査結果を公表した。ピラティス、ピックルボール、HYROXといった新しい競技への関心は全体で46%。一方で、運動に踏み出せない理由に「近くに適した場所がない」を挙げた人が16%いた。発表のなかでRebaseは、掲載情報に「ピックルボール対応」と明記する掲載者が増えていると書いている。コートを探す側から読むと、体育館の予約と会員制の専用施設の間に、時間貸しの部屋という三つ目の入口が現れつつある話になる。
貸しスペースが「ピックルボール対応」と書き始めた
調査そのものは運動全般、ピックルボールの関心は6%
この調査はピックルボール専門の調査ではない。Rebaseが「ここ数年で名前を見かけるようになった」と判断した競技を自社で選び、関心の有無を聞いたものだ。結果はピラティスが28%で頭ひとつ抜け、トレイルランニング、ピックルボール、HYROXが6%で並んだ。
有効回答は231名なので、6%は14人前後にあたる。ここを押さえずに「調査でピックルボールの人気が裏づけられた」と読むと、実態より話が膨らむ。この調査が示しているのは競技の人気度ではなく、レンタルスペースの利用者という母集団に新しい競技を試したい層が一定数いるという事実のほうだ。
ライン引きまで踏み込む掲載者がいる
読みどころは供給側の記述にある。Rebaseは、流行や利用ニーズを早くつかんだ掲載者が「ピックルボール対応」「HYROX可」と掲載情報に明記し、必要なライン引きや設備を整えてスペースを提供する例が増えていると説明している。リリース冒頭では、貸しスタジオやレンタルジムなどを運営する事業者や個人が、専用のコートを設えたり器具を整えたりする動きにも触れている。ただし該当件数は公表されていない。
インスタベースの掲載数は全国5万件以上。その運営会社が競技名を掲載情報の要素として扱い始めた点は、供給の裾野が動く兆しになる。
関心46%の中身を開くと、ピラティスの一人勝ちだった
種目ごとの関心にはっきり差がある
| Item | Figure | Details |
|---|---|---|
| 話題の競技への関心(全体) | 46% | 提示した種目のいずれかに関心あり |
| ピラティス | 28% | 単独で最多 |
| トレイルランニング | 6% | ピックルボール・HYROXと同率 |
| Pickleball | 6% | 231名換算で14人前後 |
| HYROX | 6% | Same as above |
| ピラティス以外の6種目のいずれか | 18% | ピラティスを除く6種目のいずれかに関心 |
出典はインスタベース調べ(2026年8月19日〜25日、インターネット調査、有効回答231名)。調査名は公表資料の中で表記が揃っていないため、引用するなら期間と回答数で特定したほうが安全だ。
始めた運動の1位はランニング、関心と行動がずれている
直近2年以内に新しく始めた、または再開した運動の1位はランニングだった。以下、ゴルフ、ジム通い、ストレッチ、卓球、バドミントンと続く。Rebase自身が「大掛かりな準備がいらず、思い立ってすぐ始められる」という共通点を指摘している。
関心の順位と行動の順位のずれは、ピックルボール側に効く。パドルとボールと相手と場所が同時にそろわないと1球目が打てない競技は、ランニングのように思いつきで始められない。競技人口を支えるのは広告よりも、その4つを一度にそろえてしまう場所の数になる。
「近くに場所がない」16%は、競技人口33万人とどう噛み合うか
33万人の出どころを元の調査でたどった
Rebaseのリリースは、ピックルボールの競技人口が前年の約4.5万人から推計33万人へ伸びたと書き、出典に株式会社ピックルボールワンの「日本のピックルボール市場調査2026」を挙げている。元の発表(2026年4月21日)まで戻ると、調査対象は約3万人、実施は2026年3月のインターネット調査だった。
| Metric | Figure | 出典(調査対象) |
|---|---|---|
| 国内競技人口(推計) | about 330,000 | ピックルボールワン 2026年4月発表(対象約3万人) |
| Potential players | about 11.89 million | Same as above |
| Awareness of the sport | 13.1% | Same as above |
| テニス層で関心を示した割合 | 72.5% | Same as above |
| 「近くに適した場所がない」 | 16% | インスタベース調べ 2026年9月発表(有効回答231名) |
上の4行と最下行は別々の調査で、母集団も設問も違う。同じ表に置いたのは出どころを見比べるためで、縦に足したり引いたりはできない。潜在1,189万人を競技人口33万人で割ると約36倍。ピックルボールワンはこれを成長余地と位置づけている。割り算は正しいが、潜在層の定義は「興味・関心を持つ人」であって、パドルを握った人数ではない。
認知13.1%と関心6%は別々の母集団の数字
認知率13.1%と今回の関心6%を並べて「関心が下がった」と読むのは誤りになる。前者は約3万人を対象にピックルボールだけを聞いた調査、後者はレンタルスペース利用者231名に複数の競技を並べて聞いた調査で、母集団も設問の立て方も違う。足し引きも時系列の比較もできない数字だと、先に決めておきたい。
「近くに適した場所がない」16%も同じ扱いになる。これはインスタベース利用者が運動全般について答えた割合で、ピックルボールの場所が足りないと答えた人の割合ではない。ここから読めるのは、場所を理由に運動をあきらめる人が一定数いるところまでだ。コート不足の受け皿がどこへ動くかは、231名の調査からは出てこない。
バドミントン1面ぶんの寸法なら、時間貸しの部屋にも収まる
20フィート×44フィート、ネットは中央86cm
レンタルスペースがコートに変わりうる理由は寸法にある。USA Pickleballの説明では、コートはシングルス・ダブルスとも幅20フィート×長さ44フィート。メートルに直すと約6.1m×約13.4mで、同団体はこれを「バドミントンと同サイズのコート」と表現している。ネット高はサイドラインで36インチ(約91cm)、中央で34インチ(約86cm)。ネット前には片側7フィート(約2.1m)のノンボレーゾーンが置かれる。
テニスのような専用地面を確保しなくても、体育館の1区画やイベントホールの床がそのまま使える。Rebaseが言う「ジム以上、体育館未満」の需要は、この寸法とほぼ重なる。
線を引く前に、天井と床と音を確かめる
ただし床の線だけで成立する競技ではない。ロブやハイボレーが上に抜けるため、天井の低い部屋では試合の形が変わる。床材が滑る部屋では横方向の踏み込みが危ない。穴あきのプラスチック球とパドルが当たる音は乾いて響くので、住宅が近い区画では稼働時間帯の調整が現実問題になる。
不動産・用品・リゾートが同じ向きに動き出している
空間を持つ側が競技に寄ってきた
不動産アセットマネジメント大手のケネディクスはピックルボール日本連盟のタイトルスポンサーに就き、競技を「不動産や地域を活用しながら多世代の交流やコミュニティ形成を促進できるスポーツ」と位置づけている。空いた床に人を集め続ける手段として競技を見ている点は、ケネディクスの冠スポンサー就任の経緯で詳しく触れた。
リゾートも同じ発想だ。軽井沢プリンスホテルスキー場は雪のない期間に屋内のアクティビティホールをコートとして開き、1面1時間5,000円で貸し出している(2026年8月1日から11月23日までの予定)。スキー場が緑の季節に屋内コートを開いた事例も、遊休期間を競技で埋める発想だ。
用品メーカーは「手ぶら」を入口にしている
場所が増えても、用具を持たない人は入ってこない。アシックスは東京・日本橋の広場「福徳の森」に1面を設け、9月18日から27日までの10日間、パドルとシューズを無料で貸し出している。用具側から壁を外す試みだ。予約なしで立ち寄れる設計は日本橋の無料開放コートの運営内容にまとめている。ピックルボールワンの熊倉周作代表も自社の調査発表で「まだ小さい市場ではなく、これから拡大する条件が既に揃っている市場」と述べており、場所・用具・入口の3方向から同時に手が入っている。
今週できるのは、手元の空間を1面ぶん測ってみること
スペースを持つ側の確認項目
手持ちの空間で確かめる点を並べる。
| Item to check | 目安・考え方 |
|---|---|
| 床面の寸法 | コートは約6.1m×約13.4m。周囲に動く余白を別に取る |
| 天井の高さ | ロブが上に抜ける。低ければ用途を体験向けと明記する |
| 床材 | 横方向の踏み込みに耐えるか。滑る床は貸出条件を分ける |
| 打球音 | 穴あきプラスチック球の乾いた音。時間帯を近隣と擦り合わせる |
| Line | 常設が難しければ貼って剥がせるテープで可変運用にする |
| 掲載文 | 面数・天井高・用具の有無まで書く |
プレーする側が予約前に聞く3点
借りる側にも勘所がある。1つ目は用具の有無で、持ち込み前提かどうかで荷物が変わる。2つ目はネットが常設か可動式か。設営を自分でやるなら現地の所要時間が延びる。3つ目は同時に入れる人数で、1面で回せるのは4人、交代待ちが入れば快適な上限は下がる。
231名の6%も、運動全般で場所を挙げた16%も、そこから市場全体の傾向を語れる大きさではない。確かなのは、掲載情報に「ピックルボール対応」と書いて線を引いた事業者が現に出てきたという一点だ。関心の高まりを待つより、空いている部屋の寸法を測るほうが早い。まずは生活圏のレンタルスペースを「ピックルボール」で検索し、1面ぶんの床がいくらで借りられるのかを確かめたい。
参照した資料
