ファッション誌『FUDGE』が主催する買い物イベント「FUDGE Marché TOKYO」が、2026年8月22日と23日、東京・北青山のワールド北青山ビルで開かれる。発行元の三栄が7月22日に公開したリリースによれば、古着やハンドメイド作家の作品など50ブランド以上が並ぶ会場に、正規より小さいピックルボールのコートが出現する。大会でもスポーツ施設でもなく、服や器を買いに来た人の動線の上にネットが張られる形だ。日本のピックルボールがどこまで競技の外側へ出たのかを測るうえで、このコートは無視できない。
買い物の合間に打つ、正規より小さいコート
リリースの中身は、大半が買い物イベントとしての案内で占められている。開催は8月22日(土)と23日(日)の2日間、時間は11時から18時まで(23日は17時まで)。入場料は1,500円で当日券のみ、支払いは現金のみとされる。中学生以下は無料で、入場者には大きめのトートバッグが付く。会場のワールド北青山ビルは東京メトロ表参道駅A3出口から徒歩2分、住所は東京都港区北青山3-5-10。古着ショップが集まる「VINTAGE Marché」に加え、読者コミュニティのFUDGE FRIENDや編集スタッフによるフリーマーケットも組まれている。
その並びの中に、ピックルボールの体験ブースが差し込まれた。三栄はFUDGE FRIENDも体験した競技として紹介し、コートは正規のコートサイズより小さめだと断ったうえで、買い物の合間に試してみては、と読者に呼びかけている。競技経験を前提にした文言はどこにもない。ラケットスポーツの告知というより、会場を面白くするコンテンツの一つとして置かれている。
誌面の特集から、売り場の一角へ
ピックルボールを商業空間の広場へ持ち込む動きは、2026年に入って続いていた。TBSと三井不動産が2024年4月に始めた共同プロジェクトは、2026年に入ってからも5月20日から24日に福徳の森、5月27日から31日にCOREDO室町テラスの大屋根広場、6月18日から21日に赤坂Sacas広場と、都心の広場を移動しながらコートを設けている。赤坂では本格的なコート2面に加え、キッズ向けの体験スペースとディンク専用のミニコートを分けて置いたと三井不動産は説明している。
ただし、これらは競技の普及そのものを掲げた催しで、来場者はピックルボールを目当てに足を運ぶ。FUDGEのマルシェは前提が逆になっている。来場動機は古着と器とアクセサリーであって、コートはその滞在時間に乗る側だ。ワールド北青山ビルはDESIGNART TOKYOのオフィシャル会場や街のマーケット企画の舞台として使われてきた建物で、FUDGE自身も過去に同じビルでクリスマスマーケットを開いている。会場の性格を踏まえると、このコートは競技設備というより、来場者の写真に写り込む景色に近い位置づけになる。
33万人の裏側にある、認知率13.1%
ピックルボールワンが約3万人を対象に実施し2026年4月に公表した調査では、国内の推計競技人口は約33万人。同社の推計では2025年3月時点で約4.5万人だったため、1年でおよそ7倍に膨らんだ計算になる。ただし、同じ調査で認知率は13.1%にとどまる。
| 項目 | 数値 | 時点・出典 |
|---|---|---|
| 推計競技人口 | 約4.5万人 | 2025年3月時点/ピックルボールワン推計 |
| 推計競技人口 | 約33万人 | 2026年3月調査/ピックルボールワン |
| 認知率 | 13.1% | 同調査(約3万人へのインターネット調査) |
| 興味・関心を持つ層 | 約1,189万人 | 同調査 |
| テニスプレイヤーの関心率 | 72.5% | 同調査 |
| 正規コートの寸法 | 13.4m×6.1m | ピックルボール日本連盟 公式ルール |
並べてみると、伸び率よりも認知率のほうが目を引く。10人のうち8人以上は、競技名を知らないまま会場へ入ってくる。三栄が正規サイズを削ったコートで足りると判断したのは、来場者の大半がルールを知らない前提に立ったからだと読める。テニス経験者の関心が72.5%に達する一方で、母集団としての認知はまだ薄い(テニス経験者の72.5%が関心、33万人市場が持つ36倍の余白)。認知の薄さは、縮小コートで十分だという設計判断の根拠にもなる。
用具メーカー、編集者、デベロッパーで異なる温度
クリエイティブディレクターの砂押貴久氏(STEKKEY代表)は2026年7月15日のYahoo!ニュース エキスパートへの寄稿で、『SPUR』『Oggi』『WWD JAPAN』『Smart』『FORZA STYLE』といった媒体が相次いで特集を組んでいると挙げている。理由として、テニスより運動強度が穏やかで幅広い世代が始めやすい点、そしてライフスタイルウェアやアスレジャー市場との相性を指摘した。
用具側の動きも重なる。ミズノは2025年10月に日本ピックルボール協会と普及パートナー契約を結び、2026年8月からパドル・シューズ・バッグを国内で売り出す。Fashionsnapの報道では販売目標は発売から1年間で1億円、パドルは「ACROSTRIKE LX」が3万9600円、「CALIBER」が1万6500円と価格帯に幅を持たせている(ゴルフの技術がパドルに、ミズノが8月ピックルボール国内参入)。8月の発売と8月のマルシェが重なるのは、用具メーカーから見れば都合が良い。
三栄の書きぶりそのものも、態度の表明として読める。ルール解説も競技用語も置かず、体験の入口だけを差し出している。デベロッパー側のTBS・三井不動産が広場をコート化して普及を掲げるのとは、狙いの置き場所がまるで違う。同じ競技に、伝える側の三つの温度が同時に存在している。
縮小コートを採算に乗せる設計
正規コートは13.4m×6.1mで、面積にすると約82平方メートル。物販イベントでこれだけの床を売り場から外すのは、主催者にとって軽い判断ではない。ブース単価を考えれば、数ブース分の売上機会を手放すことになる。三栄が正規より小さいコートを選んだ背景には、この面積コストの計算があるはずだ。
縮小には運営上の利点もある。コートが狭いほどラリーは短く終わり、体験の回転が上がる。物販イベントで最も避けたいのは、通路を塞ぐ待機列だ。加えて、買い物客の足元はスニーカーとは限らない。移動距離が短いミニコートなら、サンダルでも数球なら成立する。参加のハードルを下げる方向に、寸法の削減がそのまま効く。
体験ブースが入場料に含まれるのか別料金なのかは、リリースに書かれていない。読者に向けた案内は「買い物の合間にちょっと体験してみるのもいいかも」という一文だけで、競技イベントとしての体裁は取っていない。この置き方なら、コート単体で採算を合わせる必要がなくなる。体験ブースを売上ではなく滞在時間の投資として扱う設計で、施設やイベントを運営する側が真似しやすいのはこの形だ。導入を検討するなら、測る指標は体験人数より「立ち止まった人数」と滞在の伸びに置いたほうがいい。屋内で試すなら、床の保護と球の飛び出し対策として簡易フェンスかネットを高めに用意しておくと運営が楽になる。
パドルが売れる場所が、スポーツ売り場の外へ広がる
競技普及とは別の経路で、パドルとボールの意匠が生活雑貨の棚に載り始めている。秒針をボールに見立てた腕時計が出るところまで来た事例もあり(秒針がボールになった腕時計、ピックルボールが雑貨になった日)、モチーフの流通が競技人口の伸びを先回りしている構図になっている。今回のマルシェは、その流れに「体験」を足した格好だ。
地理も示唆的で、青山界隈にはゴルフ練習施設の隣にコートを構える常設拠点がすでにある(南青山でゴルフの隣にコート、Pickle9が示す都心の勝ち筋)。常設が受け皿として存在する街で、2日間だけのポップアップが初回接触を作る。この二層構造が回れば、体験した人がそのまま近隣の常設へ流れる導線が成り立つ。逆に受け皿がない地域で同じことをやっても、体験は一度きりで終わりやすい。
ファッション媒体での露出面積は、競技団体の広報予算では買いにくい。ただし借り物の注目である以上、体験の質が悪ければ次回の企画に呼ばれない。パドルの本数、球の管理、待ち時間の設計といった地味な運営が、そのまま次の出展機会を左右する。
FUDGE Marché TOKYO 開催概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 名称 | FUDGE Marché TOKYO |
| 会期 | 2026年8月22日(土)・23日(日) |
| 時間 | 11:00〜18:00(23日は17:00まで) |
| 会場 | ワールド北青山ビル(東京都港区北青山3-5-10) |
| アクセス | 東京メトロ銀座線・千代田線・半蔵門線 表参道駅A3出口より徒歩2分 |
| 入場料 | 1,500円(当日券のみ・現金のみ/中学生以下無料) |
| 入場特典 | 大きめのトートバッグ |
| 出展規模 | 50ブランド以上 |
| ピックルボール | 会場内に体験ブース。正規サイズより小さめのコート |
| 主催 | 雑誌『FUDGE』(発行元:株式会社三栄) |
| 情報発信 | Instagram @fudge_event |
コートの運営時間、パドルの貸出条件、体験の予約要否はリリースに記載がない。参加を前提に予定を組むなら、公式Instagramの直前告知を確認しておきたい。
まとめ
この一角が示すのは、ピックルボールが「やる人のもの」から「置くと場が持つもの」へ移りつつある局面だ。認知率13.1%という数字は裏を返せば、初めて見る人に出会わせる場所がまだ足りていないことを意味する。ファッション誌の買い物イベントは、その出会いを作る場としてスポーツ施設より射程が広い。
施設やスクールを運営しているなら、8月22日と23日に北青山へ足を運び、縮小コートの回転と行列の出方を自分の目で測ってみてほしい。自館で再現するときの寸法と人員が具体的に見える。パドルや周辺グッズを扱う事業者であれば、スポーツイベントだけでなく物販イベントの主催者を提案先リストに加える時期に来ている。すでにプレーしている人にとっては、ルールを知らない友人を連れ出す口実として、この2日間は使い勝手がいい。
参照元:PR TIMES(株式会社三栄)/FUDGE.jp/PR TIMES(ピックルボールワン)/PR TIMES(三井不動産)/Fashionsnap/Yahoo!ニュース エキスパート/ピックルボール日本連盟

