ピックルボール業界の統括組織UPA(United Pickleball Association)が、1億5,000万〜2億ドル(約225〜300億円)規模の資金調達を計画していることが明らかになった。プロツアー、EC、コート建設、施設フランチャイズ、レーティングシステムを一つの傘の下に収める「垂直統合プラットフォーム」の実現に向けた動きであり、ピックルボールの商業化における最大級の賭けとなる。
調達計画の全容——企業価値8億ドル超、統合後売上1.4億ドルへ
米メディアThe Dinkが2026年2月13日に報じたところによると、UPAの現在の企業価値は5.7億〜6.5億ドル(売上の7〜8倍)。今回の資金調達で合算企業価値は8億ドルを超える見通しだ。
売上推移を見ると、2024年の4,700万ドルから2025年は6,400万ドル(前年比+36%)、2026年は8,100万ドルへの成長が見込まれている。統合後は年間売上1億4,000万ドル規模に達する計算だ。
| 指標 | 数値 |
|---|---|
| 調達目標額 | 1億5,000万〜2億ドル(約225〜300億円) |
| 現在の企業価値 | 5.7億〜6.5億ドル |
| 統合後企業価値 | 8億ドル超 |
| 2024年売上 | 4,700万ドル |
| 2025年売上 | 6,400万ドル(+36%) |
| 2026年売上見込み | 8,100万ドル |
| 統合後年間売上予測 | 約1億4,000万ドル |
| 黒字化目標 | 2027年 |
| EBITDA目標 | 2030年に1億ドル |
統合対象は7つの事業——ツアー・EC・施設・データを網羅
UPAが統合を進める事業体は以下のとおり。単なる持株会社ではなく、プレーヤーが「道具を買い、大会に登録し、コートを予約し、レーティングを確認する」までの一連の体験を一社で完結させる構想だ。
| 事業体 | 領域 | 概要 |
|---|---|---|
| PPA Tour | プロツアー | 北米最大のプロピックルボールツアー。CBS放映で79万人視聴を記録 |
| Major League Pickleball(MLP) | チームリーグ | 2024年にPPAと7,500万ドルで統合済み。チーム対抗戦形式 |
| Pickleball Central | EC | 北米最大級のピックルボール用品オンラインストア |
| Pickleball Play Solutions | ソフトウェア | 大会登録・施設管理プラットフォーム(旧PickleballTournaments.com) |
| Just Courts Construction | コート建設 | 専用コートの設計・施工を手がける建設事業 |
| Picklr | 施設FC(少数株主) | 全米最大のピックルボール施設フランチャイズ。日本進出も決定 |
| DUPR | レーティング(少数株主) | 世界標準のプレーヤーレーティングシステム |
Tom Dundon——NHLとNBAのオーナーが描く青写真
この構想の中心にいるのが、UPA最大株主のTom Dundon氏だ。NHLカロライナ・ハリケーンズとNBAポートランド・トレイルブレイザーズのオーナーであるDundon氏は、2021年にPickleball CentralとPickleballTournaments.comを買収したのを皮切りに、2022年にPPA Tour、2024年にMLPを統合し、ピックルボール帝国を築いてきた。
プロスポーツの経営ノウハウを持つ人物が、年間30万人以上が観戦するツアーと2万7,000人以上が参加するアマチュア大会の基盤をテコに、スポンサーシップ(約3,000万ドル)とチケット収入(1,000万ドル超)を拡大する算段だ。DoorDashとの複数年スポンサー契約はその象徴といえる。
業界関係者の反応——期待と懐疑が交錯
今回の報道に対し、業界内外から複数の声が上がっている。
PPA Tour創設者兼CEOのConnor Pardo氏は「将来は極めて明るく、このモメンタムはまだ始まりに過ぎない」とコメント。一方、スポーツコメンテーターのBill Simmons氏はピックルボールの成長持続性に懐疑的な見方を示した。SNS上ではPicklePod共同ホストのNico the Lefty氏がSimmons氏の発言を取り上げ、反論する場面も見られた。
あるツアー関係者は「統合で選手の待遇が改善される一方、独占構造への懸念もある。競争原理が働かなくなれば、結局プレーヤーが不利益を被る」と語った。
日本のプレーヤーへの影響——Picklrの日本上陸と連動
日本のプレーヤーにとって最も直接的な影響は、UPA傘下のPicklrが2026年4月に日本初上陸する点だ。イオンモール幕張新都心で4月25日にオープンし、秋には豊洲にフラッグシップ施設も計画されている。
垂直統合が進めば、Picklrの施設でDUPRレーティングに基づくマッチメイキングが行われ、Pickleball Play Solutionsで大会に登録し、Pickleball Centralで用品を購入するというシームレスな体験が実現する可能性がある。日本のピックルボール環境も、UPAエコシステムの一部に組み込まれていくことになる。
業界への波及——「第2のテニス産業」への分岐点
米国のピックルボール競技人口は約1,980万人に達し、年内に全米で4番目に人気のあるスポーツになる見通しだ。UPAの垂直統合構想は、ピックルボールを「草の根スポーツ」から「投資対象としてのスポーツビジネス」へと転換させる分岐点となる。
統合モデルが成功すれば、他の新興スポーツ(パデル、パデルとの施設共存も進んでいる)にも波及する。一方、独占への規制リスクや、選手会との交渉、放映権の再編といった課題も山積している。
実用情報
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| 情報ソース | The Dink Pickleball(2026年2月13日) |
| UPA公式 | 非公開企業のため公式サイトでの発表なし |
| PPA Tour公式 | ppatour.com |
| DUPR | dupr.com |
| Pickleball Central | pickleballcentral.com |
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まとめ——注視すべきは2027年の黒字化ライン
UPAの1.5〜2億ドルの資金調達計画は、ピックルボールを「バラバラなビジネスの寄せ集め」から「統合されたスポーツプラットフォーム」へと進化させる野心的な構想だ。2027年の黒字化、2030年のEBITDA1億ドルという目標が達成されるかどうかが、この賭けの成否を分ける。
日本のプレーヤーは、Picklrの国内展開を通じてこのエコシステムの恩恵を受ける最初の世代になる。DUPRレーティングの普及やPPA Tourのアジア展開と合わせて、今後の動向を注視したい。
- Q. UPAとは何の略ですか?
- United Pickleball Associationの略で、PPA TourやMLPなどを傘下に持つピックルボールの統括組織です。Tom Dundon氏のDundon Capital Partnersが最大株主です。
- Q. 日本のプレーヤーに直接関係はありますか?
- UPA傘下のPicklrが2026年4月に日本初上陸します。DUPRレーティングの導入やPickleball Play Solutionsによる大会登録など、日本のプレー環境にも影響が出る可能性があります。
- Q. 垂直統合のリスクは?
- 独占構造による価格支配力の集中、選手の交渉力低下、競合ブランドの排除といったリスクが指摘されています。一方で、統合によるプレーヤー体験の向上やスポンサー価値の増大というメリットもあります。