米司法当局は2026年2月、アリゾナ州メサの大型スポーツ施設「ベル・バンク・パーク」を巡る約2億8,400万ドル(約450億円、1ドル159円換算)の地方債詐欺事件で、首謀者に総額2億2,826万ドルの賠償命令を下した。複数のプロツアーを誘致したピックルボール拠点が、虚偽の契約書で投資家を欺いた詐欺の舞台だったことが確定した。
父子経営者に実刑、賠償命令は2億2,826万ドル
米連邦地裁は2025年9月9日、施設を運営したランディ・ミラー氏に禁錮6年、息子のチャド・ミラー氏に禁錮5年の実刑を言い渡した。罪状は証券詐欺と加重身元盗用。両名には没収も命じられた。
2026年2月2日には、共犯者を含めた連帯責任として2億2,826万0,356ドルの賠償が確定。ジェフリー・プズーロ氏は同年1月28日に「拘留期間相当+監督付き釈放1年」の判決を受けた。
地方債2.84億ドルを集めた施設の実態
施設は2020年8月と2021年6月に発行した地方債で約2億8,400万ドルを調達し、2022年1月に開業した。初年度1億ドルの収益を見込んでいたが、開業から9カ月後の2022年10月に債券がデフォルト。2023年5月には運営会社が破産を申請した。建設費は約3億ドルに達したが、後の売却額は2,600万ドルを下回った。
虚偽の契約書で投資家を欺く
米証券取引委員会(SEC)によれば、ミラー父子は競技団体からの仮契約書(LOI)を偽造し、投資家向け資料に実績を記載していた。中には団体側が無断で名前を使われていたケースや、署名そのものを偽造したケースもあったとされる。
被害額・回収額の全容
| 項目 | 金額(米ドル) | 円換算(159円) |
|---|---|---|
| 地方債調達総額 | 約2億8,400万 | 約451億円 |
| 建設費 | 約3億 | 約477億円 |
| 施設売却額 | 2,600万未満 | 約41億円未満 |
| 投資家回収額 | 250万未満 | 約4億円未満 |
| 確定賠償命令 | 2億2,826万 | 約363億円 |
賠償命令が確定しても、投資家が実際に回収する見込みは極めて低い。被害者が受け取れた額は拠出額の1%にも届いていない。
競技と詐欺は別——ただしハコモノ投資に警告
施設はAPPメサオープン、MLPの団体戦、PPAカーバナ・メサ・アリゾナカップなど主要大会を実際に開催しており、専門メディアは競技そのものの信頼性とは切り離す論調が目立つ。一方で、急成長スポーツの「箱物投資」に潜むリスクを警告する声も上がった。
米国市場では、アポロとダンドンが2.25億ドルを投じるなど資本流入が続く一方、コート過剰や採算割れへの警戒も強まっている。カリフォルニア州マルティネスでは築1年でコートが全面閉鎖された例も出ており、ハコモノの持続性が問われ始めた。
日本での施設投資——資金調達の透明性確認が課題
日本でもピックルボール専用施設の新設が相次いでいる。大阪・堺のホテル屋上に西日本最多6面が誕生するなど、宿泊・商業施設が競技拠点化を進める動きが活発だ。本事件は、競技人気そのものは本物でも、それを担保にした資金調達の中身を冷静に見極める必要があることを示している。
施設の再出発と業界の分岐点
ベル・バンク・パークは2023年12月にバーク・オペレーティング・パートナーズが取得し、「アリゾナ・アスレチック・グラウンズ」として稼働を続けている。施設自体は競技開催を通じて一定の役割を果たしている一方で、かつての投資家には回収の見込みがほぼ立たない状態が続いている。
事件の時系列
| 時期 | 出来事 |
|---|---|
| 2020年8月・2021年6月 | 地方債を発行 |
| 2022年1月 | 施設が開業 |
| 2022年10月 | 債券がデフォルト |
| 2023年5月 | 運営会社が破産申請 |
| 2023年12月 | 新オーナーが取得・再ブランド化 |
| 2025年9月 | 父子に実刑判決 |
| 2026年2月 | 賠償命令確定 |
何が問われているのか
ベル・バンク・パークは、ピックルボールの成長期に生まれた象徴的な施設だった。その内実が巨額詐欺だったという結末は、急拡大する競技を取り巻く資金の流れに冷静な目を向けるきっかけになる。施設自体は新オーナーの下で稼働を続けており、競技の価値が損なわれたわけではない。問われているのは、競技人気を掲げて集めた資金の透明性と、出資者による事前確認の重要性である。

