ピックルボール人気で日本国内のコート不足が課題となる中、米国のプロツアーで採用されているコートサーフェスが国内販売を開始することになった。コーティナジャパン株式会社(東京都新宿区)は2026年9月27日、米AT Sports社のアクリル系サーフェス塗料「Acrytech(アクリテック)」と可搬型の「CushionX(クッションエックス)コートマット」を国内で売り出すと発表した。初回入荷は11月の予定。その翌日の9月28日、朝日新聞は「初心者でもはまる」という切り口で米国発のピックルボールを取り上げ、見出しに「コート不足も人気は沸騰」と置いた。日本のプレーヤーがぶつかっている不足に対して、施設を建てるのではなく床を敷くという答えが、輸入というかたちで先に届いたことになる。

新宿の輸入会社が売り出すのは、塗料とマットと補修材
コーティナジャパンが扱うのは4つの製品群だ。コート用のアクリル系塗料Acrytech、ポータブルサーフェスのCushionXコートマット、クッションシステムのCushionX、そしてひび割れ補修システムのFaultline(フォルトライン)。同社は自社サイトで「AT Sports 日本総代理店」を掲げ、製品供給に加えて施工サポートとアフターサービスを事業内容に挙げている。所在地はJR新宿ミライナタワー18階、代表取締役は伊藤剛氏。リリース本文に設立時期の記載はないが、PR TIMESの企業情報欄では設立を2026年8月としている。総代理店そのものが、この夏にできたばかりということになる。
製造元のAT Sportsは米ジョージア州キャントンに工場を置く。発表では設立1995年、塗料・サーフェス・資材を自社工場で一貫生産しているとされる。ピックルボールとの結びつきは同社サイトにも書かれており、2020年以降、PPA(Professional Pickleball Association)の公式ピックルボールコートサーフェス提供者を務めているという記述がある。今回の発表はこれに加えて、MLP(Major League Pickleball)のオフィシャル・サーフェス・プロバイダーでもあると説明し、CushionXコートマットを「主にMLPの公式戦で使用されているコートマット」と位置づけている。Acrytechについては、ATP男子テニスツアーやプロテニスリーグINTENNSEでの採用も発表に挙がっている。
初回入荷は2026年11月予定で、窓口は同社サイトのCONTACTページとinfo@courtina.jpのみ。今回の発表に価格の記載はなく、ロールの寸法や1本あたりの重量といった搬入に直結する数値も出ていない。買う側が最初に聞くべきはそこになる。
専用コートが足りない東京で、先に届いたのは床だった
朝日新聞の記事が見出しに置いたコート不足は、数字の裏づけがある話だ。同記事は7月に東京都立川市で開かれた世界ツアー大会に750人の選手が集まったと伝えている。この大会は7月1日から4日にアリーナ立川立飛とドーム立川立飛で開かれた「PPA ASIA 500 Sansan TOKYO OPEN 2026 Produced by TBS」とみられる。主催関係のリリースでは出場枠数1000名(予定)と案内されていたので、朝日が伝えた750人は実際に集まった人数ということになる。プロツアーが日本で回り始めた一方で、日常の打つ場所が追いついていない。
@DIMEが9月14日に載せたインタビューでは、ピックルボールワンの調査としてプレーヤーを約33万人と推計し、そのうち1割程度が週1回などの頻度で打っていると説明している。都内の専用コートについては「今だと10か所くらいですね」という発言があり、続けて「専用コートでなければできないわけではありません。体育館でもできます」「プレーできる場所は増えていますが、まだまだ需要のほうが大きい状況だと思います」と語られている。
競技側の設計基準も転用を前提に書かれている。ピックルボール日本連盟が公開しているコート基準は、コートを20フィート×44フィート(約6.1m×13.4m)、ネット高をサイド約91.4cm・中央約86.4cmとし、コートは「新設、または既存のテニスコートやバドミントンコートからの転用」で用意できると明記する。バドミントンのダブルスコートと同じ寸法だから、体育館の床にテープを貼れば形はできてしまう。実際、貸しスペース事業者が自社の空き枠にコートの線を引き始めた動きは、この夏の調査でも表に出ていた。
一方で常設の専用施設は、床から作り込む。豊洲に開業したPICKLRの屋内施設は全天候型ハードコート7面という仕様で、これは下地の上にアクリル系の塗膜を重ねる、今回輸入される塗料と同じ系統の作り方だ。テープを貼るだけの転用と、塗って固める常設のアクリル塗膜。その間にぽっかり空いていたのが、敷いて剥がせる層だった。
1面8〜12本のロール、施工できる温度は1.1℃から54.4℃
発表に出ている数値を、実務で意味が変わるところだけ拾う。
| 製品 | 何をするものか | 発表されている数値・仕様 |
|---|---|---|
| CushionXコートマット | 常設施工なしで多目的スペースをコートにする可搬サーフェス | 厚さ4mmの高耐久ゴムマット+強化膜+Acrytech Flexシリーズ塗料の積層構造。1面あたり8〜12本のロール。継ぎ目部分の下地に数か所の両面テープ。屋内外兼用。2色または3色でのカスタム製作 |
| Acrytech | ピックルボール・テニスコート用のアクリル系塗料 | 施工可能温度1.1〜54.4℃。低VOCの水性処方で鉛・アスベスト・PCBを含まない。Flexシリーズは下地の動きに追従 |
| CushionX | クッション性を持たせるサーフェスシステム | 発表では製品名のみ |
| Faultline | 既存コートのひび割れ補修 | 発表では製品名のみ |
Acrytechの施工温度1.1℃と54.4℃は、華氏34度と130度をそのまま換算した値だ。裏を返せば、日本の冬の朝は下限を割る地域が普通にあるということでもある。発表は促進剤を使えば低温時や曇天時にも対応できるとしているが、常設塗装を冬に走らせるなら作業時間帯の管理が前提になる。初回入荷が11月というタイミングは、塗る製品には向かい風で、敷くだけのマットには関係がない。
物量の感覚も押さえておきたい。競技面は約6.1m×13.4mで、面積にすると約82平方メートル。1面あたり8〜12本のロールで構成されるため、1本あたりは約7〜10平方メートルの面積を受け持つ計算になる。ロールの幅と長さ、1本の重量は発表に出ていないので、搬入経路とエレベーター、撤去後の保管場所を詰めるには問い合わせが必要だ。発表は「計算された重量と構造により、恒久的に固定しなくてもマットがしっかり定位置に保たれる」と説明しており、ズレないことと重いことは裏表の関係にある。
国内にも近い発想の製品はすでにある。東栄株式会社が扱う組み立て式の樹脂パネルは、1枚762mm角・厚さ32mm・重量4.63kgで、ホテルのバンケットルームの絨毯の上にも設営できるとされ、耐久年数の目安は約10年。こちらは下地を作るパネル、CushionXは仕上げ面まで持つマットで、役割が違う。どちらを選ぶかは、原状回復の条件と、1回あたり何人で敷くのかで分かれる。
売る側と使う側は、コート不足の何を見ているか
コーティナジャパンの伊藤氏は発表で、日本でピックルボールが広がるなかで世界基準の環境を求める声が強まると見込むとしたうえで、「競技の成熟には、それを支えるインフラの質が欠かせません」と述べている。売り文句としては、パドル選びと同じか、それ以上にコートの質が効くという立て方だ。
AT Sportsのプレジデント、ブラッド・キャロル氏は、コーティナジャパンを新たな販売総代理店として迎えたとコメントし、日本を「大きな可能性を秘めた市場」と表現した。製造側から見れば、米国のプロツアーで積んだ実績を輸出できる相手が増えたという話になる。
現場の見立ては、もう少し乾いている。@DIMEに載ったピックルボールワンの説明は、都内の専用コートを10か所ほどと数えたうえで、体育館でも競技は成立すると繰り返していた。日本連盟の基準も転用を並記している。つまり国内の共通認識は「専用コートを増やす」より先に「既存の床を使う」に寄っている。今回の輸入は、その共通認識に乗る製品と、乗らない製品の両方を一度に持ち込んだことになる。
体育館や空き区画を借りるなら、下地と撤去から詰める

体育館やイベントスペース、駐車場や商業施設の空き区画をコートに変える話を、床の側から具体的に分解しておく。
- 下地が何か。体育館のフローリング、コンクリート、アスファルト、絨毯のどれかで、敷けるものと敷けないものが変わる。可搬マットは原状回復が前提の借り物空間に向き、常設塗装は自前の下地を持つ施設に向く。
- 下地が動くかどうか。アスファルトや古いコンクリートは季節でわずかに動き、塗膜のひび割れにつながる。追従性を持たせたFlexシリーズと、割れてから直すFaultlineが同じラインに並んでいるのは、そこに手当てが必要だという裏づけでもある。
- 施工と撤去の人手。1面8〜12本を運び、並べ、継ぎ目に両面テープを入れる作業を、誰が何人で何分やるのか。イベント利用なら撤去と保管まで含めて見積もる。
- 温度と工期。塗る側を選ぶなら1.1℃の下限が効く。年内に仕上げたいのか、春まで待てるのかで製品の選択そのものが変わる。
- ラインの作り方。体育館の借用枠なら剥がしやすいフロアテープ、マットなら2色・3色のカスタムで線を印刷できる。恒久的な線を引けない場所ほど、後者の価値が出る。
- コート外の余裕。連盟の基準が示すのは競技面の寸法で、後ろに何メートル取れるかは借りる空間側の問題だ。面数を詰めるほど、ここが遊びの質を決める。
- 打球音と近隣。床材の話とは別に、屋内で硬い樹脂球を打つ音をどう扱うかは、貸主との交渉項目として先に出しておくほうが早い。
プレーヤー側にも見どころがある。いま通っている場所の足元が、体育館の床にテープか、常設のアクリル塗膜か、敷いたマットかで、バウンドと踏み込みの感触は変わる。合わないと感じたら、パドルより先に床を疑ってよい。
米国では施設が売りに出ている、日本の供給側はどこに立つか
供給の話は、日米で向きが逆になっている。米国ではピックルボール施設が次々と売りに出され、値下げ幅が平均39%に達する調整局面に入った。建ててから埋めるモデルの限界が先に見えた市場だ。日本はまだ足りない側にいるが、だからといって同じ順番で建て込む必要はない。
これまで国内から出てくるニュースは「どこに何面がオープンした」という報せが中心だった。今回は素材と施工という一段下のレイヤーが立ち上がった話で、意味が違う。床を仕入れられるようになると、コートは施設投資ではなく空間の運用に近づく。空き枠のある体育館、稼働率の低い多目的ホール、テナントの入れ替わりで空いた区画。そこに敷いて、外せる。建てないという選択肢は、失敗の単価を下げる。
逆に、輸入代理店側の弱点も同じところにある。総代理店1社で塗料と可搬マットの両方を売るなら、施工体制をどこまで自前で持つのか、既存のコート施工会社と組むのかで、広がり方が変わる。初回入荷は11月の1回だけが告知されており、そこから先の供給の刻みは出ていない。1面分をそろえるのに何本が確保できるかは、11月以降の実績で見るしかない。
問い合わせ先と、いま国内で打つ場所を探す手順
製品の相談はコーティナジャパンのサイトのCONTACTページ、またはinfo@courtina.jpから。製造元の製品ラインはAT Sportsの公式サイトで確認でき、Acrytech、CushionX、Faultlineのほか、可搬サーフェスのRollXやパデルコート、トラックシステムも並んでいる。日本で先に入ってくるのが4製品群に絞られている点は押さえておきたい。
コートの寸法やネット高を自分で確かめたいときは、ピックルボール日本連盟が公開しているコート基準のページが早い。体育館を借りて自前で線を引くなら、この数値とフロアテープだけで形は整う。組み立て式のパネルを検討する場合は、東栄が扱うウルトラベースコートパネルのように国内で入手できる選択肢もある。
次に動くなら、11月までに聞いておくこと
施設や事業者として検討するなら、初回入荷の11月に間に合わせる前提で、ロール1本の幅・長さ・重量、1面分の総重量、搬入経路の条件、撤去後の保管に必要な容積、そして塗る製品を選ぶ場合の施工可能な時期を、問い合わせの1通目にまとめて書いてしまうのが早い。価格は発表に出ていないので、面数と敷設頻度を添えて聞く。
大会やイベントを開く側なら、借りる空間の下地と原状回復の条件を、会場を押さえる前に確認しておく。敷けるかどうかで会場候補の幅がまるごと変わる。プレーヤーとして関われることも一つある。通っている施設の床が何か、打ちにくいと感じる原因が足元にあるのかを、運営に言葉で伝えることだ。米国のプロツアーで使われている床が買えるようになった以上、何を敷くかは選べる話になった。
参照元
- PR TIMES・日本初上陸!米国PPA・MLP公式戦で使用されるプロ仕様のピックルボールコートサーフェスを、コーティナジャパンが国内販売開始
- スポーツマニア・コーティナジャパンがAT Sports製コートサーフェスの国内販売を開始
- コーティナジャパン株式会社 公式サイト
- AT Sports 公式サイト
- 朝日新聞(Yahoo!ニュース配信)・「初心者でもはまる」米国発ピックルボール コート不足も人気は沸騰
- @DIME・ピックルボール人気が日本でも急拡大!プレー人口は33万人、都内ではコート不足の状態に
- ピックルボール日本連盟・Design Standards and Specifications
- PR TIMES・世界最大級のピックルボールツアーが東京初上陸(PPA ASIA 500 Sansan TOKYO OPEN 2026)
- ウルトラベースシステムズ(東栄株式会社)・ピックルボール用コートにご利用ください

