日本のサポーター&ケアブランド「ザムスト(ZAMST)」が、北米で開催されるプロツアーの会場に製品を並べる。運営する日本シグマックス株式会社は2026年9月2日、世界最大級のプロツアー「PPA Tour 2026-2027」への年間協賛を発表した。パドルでもシューズでもウェアでもなく、足首やヒザを守るサポーターのメーカーが、プロの興行に自社の名前を出す。
アメリカのプロ選手が集う舞台に、日本の医療系メーカーが賭ける。ブランド単体の海外挑戦として、この一手には読み解く価値がある。
日本シグマックスがPPAツアーに年間協賛、会場で4製品を展示販売
発表によれば、協賛の対象はアメリカで行われるPPA Tourの大会で、契約は2026-2027シーズンを通した年間協賛にあたる。会場では大会運営に関わる小売事業者Pickleball Central(PBC)の販売エリアに製品を並べ、来場者が実際に手に取れる形で展示・販売を行う。
並ぶのは4製品。足首用の「ザムスト A1」、ヒザ用の「ZK-PROTECT」と「ZK-MOTION」、そして肘用の「エルボーバンド」だ。いずれも部位を絞った関節サポート製品で、パドルやボールのような競技用具ではなく、プレー中の体を支える側の道具にあたる。
協賛先はアメリカ開催の大会、シーズンは8月31日に開幕
PPA Tourは全米各地を巡回するプロのシリーズ戦で、2026-2027シーズンは8月31日に開幕した。今季はシカゴやラスベガス、ダラスといった主要都市を含む数十大会が組まれ、カナダやイタリアでの新規開催も加わる。日本でも立川で東京オープンが開かれ、世界最高峰ツアーが日本に上陸したことは記憶に新しい。
ザムストが名前を出すのは、この巡回戦のうちアメリカ開催分だ。プロの試合そのものへの露出ではなく、来場した愛好者が用品を買う場所に自社製品を置く。観客席ではなく物販の棚を選んだ点に、このブランドの狙いがにじむ。
出す製品は足首・ヒザ・肘、ピックルの負傷部位と重なる
4製品が守るのは足首、ヒザ、肘。この3か所は、ピックルボールで痛めやすい場所とそのまま重なる。狭いコートでの急な切り返しや左右への動き出しが足首とヒザに負担をかけ、繰り返し打つ動作が肘に効いてくる。
製品ラインと競技のリスクが噛み合っているからこそ、パドルメーカーが並ぶ棚の隣に、サポーターだけを持ち込む意味が生まれる。パドルを選び終えた来場者が、次にケア用品へ目を向ける導線がそこにある。
ピックルボールの怪我は中高年に集中、捻挫と骨折が目立つ
ピックルボールは体への負担が軽い競技として広まったが、怪我と無縁ではない。米国の救急外来を対象にした調査では、この競技による負傷者のおよそ9割が50歳以上で占められ、捻挫と骨折が上位を分け合っている。最も多い負傷のひとつが、横方向の動きで起きる足首の捻挫だ。
肘の痛み、いわゆるテニス肘も繰り返しの打球で出やすく、転倒による手首や足の骨折も中高年で一定数報告されている。予防としてのサポーター着用は、こうした部位への負担を和らげる手立てのひとつに位置づけられる。ザムストが持ち込む4製品は、この負傷傾向をほぼ写し取った構成になっている。
ザムストは医療用サポーターから生まれ、2011年に北米へ
ザムストの出発点は医療の現場にある。1991年、日本シグマックス製の医療用足首サポーターを、全日本バレーボールのチームドクターが選手の怪我予防に使い始めた。この経験をもとにスポーツ用の開発が進み、1993年にザムストのブランド名が立ち上がった。医療で培った関節保護の技術を、競技の現場に持ち込んだ流れだ。
国内でスポーツサポーターとして広く使われ、足首用から始まった製品はインソールやコンプレッションウェアへ広がった。海外へは2011年に北米市場へ進出しており、今回の協賛はその延長線上に置かれる。親会社の日本シグマックスは2026年3月期で売上高162.2億円、社員数238名の規模を持つ。
販売エリアでの展示という選び方、体験が購買につながる
今回の出展は、看板広告やユニフォームへのロゴ掲出とは性格が異なる。会場の物販エリアに製品を置き、来場者が手に取って質感や装着感を確かめられる場を作る。サポーターは着けてみて初めて良し悪しが分かる道具で、写真や説明文だけでは伝わりにくい。
プレーの前後にケア用品を探す来場者は、購入の意欲を持って棚の前に立つ。そこに実物を並べれば、試して納得したうえで買う流れが生まれる。展示販売という形は、この競技の顧客との距離を縮める手段として理にかなっている。
金額は非開示、それでも読み取れるブランドの狙い
協賛金額は公表されていない。年間協賛の規模がどの程度かは外からは分からず、ここを推し量る材料も表には出ていない。ただ、金額が伏せられていても、どこに賭けたかは製品の並べ方から読める。
ザムストが選んだのは、プロの華やかな試合そのものではなく、愛好者が用品を買う棚だった。世界最大級のツアーに集まる層へ、怪我予防という自社の核を直接届ける。競技の伸びが続くほど、コンディショニングを気にかける愛好者も増える。その入口に立つ判断が、この協賛の中身にあたる。
日本のケアブランドが海外プロツアーへ向かう流れ
日本の用品メーカーがピックルボールへ動く例は増えている。国内では、ゴルフで培った技術を持ち込んでミズノがパドル市場に参入したように、大手が競技用具で存在感を出そうとしている。一方でザムストは国内ではなく北米のプロツアーを選び、用具ではなくケアという別の切り口で海外へ出た。
アジア発のメーカーが欧米ブランドの牙城に挑む動きも進み、米国の認定を取ったパドルが海外市場に食い込む例も出てきた。パドルで正面から競う道と、サポーターのように隣接する分野で足場を作る道。ザムストの一手は後者の型を示している。
施設事業者と愛好者にとっての意味
この協賛は海の向こうの話に見えて、日本のコートにも示唆を残す。ピックルボールが中高年に広がるほど、怪我予防やケア用品への関心は国内でも高まっていく。施設を運営する側にとって、サポーターやケア製品をどう扱うかは、利用者を長く引き止める要素になり得る。
プレーを続けるための道具に目を向ける愛好者は、これから確実に増える。日本発のケアブランドが世界最大級の舞台で愛好者と向き合う姿は、国内の現場が用品とどう付き合うかを考える手がかりになる。医療から生まれた技術が、コートの縁でどこまで受け入れられるか。答えは北米の販売エリアから返ってくる。
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