マレーシアの日本語情報サイト「週刊Mtown」が9月24日、ピックルボールの対談記事を公開した。話し手は、UPA Asiaと1年のプロ契約を結びアジアを転戦する嶋晴菜さんと、クアラルンプールのモンキアラでフィットネススタジオFITOKIOを営む吉村大作さん。9月3日に吉村さんが嶋さんを拠点へ招いて実現した顔合わせだ。日本でパドルを握る人には、海外のコートが選択肢に入るかを測る材料になる。
クアラルンプールのジムが9月3日に日本のプロ選手を招いた
対談の場はモンキアラのFITOKIO
FITOKIOはクアラルンプールのモンキアラ、Menara 1 Mont Kiaraのオフィススイートにある。公式サイトはパーソナルトレーニングとプレミアム3Dマッサージを二本柱に掲げ、Mtownの記事ではこれにピックルボールのイベントとレッスン、健康経営セミナーが加わる。健康・フィットネスの事業者がピックルボールを扱っている形で、対談も勝ち負けより続け方に重心がある。
代表の吉村さんはサッカーとテニスの経験があり、最初からある程度ボールは打てた。それでもディンクやドロップを学ぶうちに、テニスとはまったく異なる奥深さを感じるようになったという。肩書きはAPBA協会認定ピックルボールコーチだ。
嶋晴菜さんはUPA Asiaと1年のプロ契約を結んでいる
嶋さんは京都市出身の30歳。学生時代に硬式テニスを経験し、勤め先のフィットネス関連企業がピックルボールの新規事業を検討し始めたのをきっかけに競技に触れた。2026年はUPA Asiaの「Rising Star」に選ばれ、1年間のUPA Asia Pro Contractを締結。PPA Tour Asiaなどアジアを中心に国内外の大会へ参戦する。
肩書きの並びは遠い世界の話に見えるが、入口は社会人の趣味と変わらない。
嶋晴菜さんが面白さで真っ先に挙げたのは駆け引きだった
ネット際のディンクで読み合い、隙が出たら速い球を入れる
記事で嶋さんは、この競技で大切なのは駆け引きだと切り出す。ネット際では「ディンク」と呼ぶ緩やかなショットで相手の動きを読み、チャンスが来たら速い球を打ったり相手を動かしたりする。本人の言葉は「体力や体格、パワーだけが、そのまま結果に直結する競技ではありません」(週刊Mtown)。
手先の器用さや繊細なパドル操作が効くため、女性や子ども、年齢を重ねた人でも強みを生かしやすい。嶋さん自身の武器も、安定したディンクと身体的な強みを生かした攻撃力の二本立てだという。
コートが小さいぶん初心者でもラリーが続きやすい
コートはテニスより小さく、初心者でも比較的ラリーを続けやすい。一方でレベルが上がると、ショットの選択、ポジショニング、読み合いまで要求が一気に深くなる。この「入口の低さ」と「天井の高さ」の同居は、普及の場をつくる側に都合がいい。ラリーが続けば体験会は形になり、続けた人には次の課題が現れる。吉村さんは対談で、ダイエットや運動をしなさいと言われても続かないとしたうえで、ピックルボールは楽しみながら健康になるためのツールだと話している。
硬式テニス経験者が台湾の大会でベスト8に入るまで
欠場者の代わりに回ってきた初めての海外大会
サークルで週1〜2回プレーするうちに、もっと上手になれるという思いが強くなった。転機は台湾で開かれたアジアの大会だ。日本から選ばれていた選手の1人が欠場し、出場機会が回ってきた。始めて間もない時期の初の海外大会で、結果はベスト8。悔しさと手応えが同時に残り、趣味から競技への切り替わりが起きたと記事は書く。
47都道府県のサークル巡りは約20都道府県まで進んだ
嶋さんは競技活動と並行して全国47都道府県のピックルボールサークルを訪ね、これまでに約20都道府県を回った。各地で打つ人に会うと、競技が運動というより生活のリズムや人との交流、生きがいの一つになっている姿が見えるという。
日本とマレーシアで競技環境はどこが違うのか
日本はサークルが増えた一方でコートの数と料金が課題
日本でもこの1年ほどでサークルが急速に増え、学校や公共体育館で楽しめる環境が広がった。ただし世界の大会で一般的なハードコートとは球の跳ね方が異なり、専用コートの数や料金、アクセスには課題が残ると記事は整理する。
マレーシアとベトナムはレベル別・年齢別の大会が頻繁にある
マレーシアでは数年前から専用コートが増え、ローカルの間で急速に普及した。一方で在住日本人に情報が届くまでには時間差があり、そこを埋めるため吉村さんはコーチ資格を取り、英語のレッスンに不安のある日本人向けの指導を始めた。現地の普及が先、日本人コミュニティへの浸透が後という順番だ。
マレーシアとベトナムではレベル別や年齢別のカテゴリーで大会が頻繁に開かれ、始めたばかりでも大会に出る目標を持ちやすい。FITOKIOで教わる人には運動経験がほとんどなかった主婦もいて、打てるようになると次は大会という目標が現れると記事は書く。
| Item | Japan | マレーシア・ベトナム |
|---|---|---|
| 打つ場所 | この1年ほどでサークルが急増。学校や公共体育館が中心 | マレーシアは数年前から専用コートが増加 |
| 残る課題 | 専用コートの数・料金・アクセス。球の跳ね方もハードコートと異なる | 在住日本人に情報が届くまでの時間差 |
| 大会と選手層 | 対談では触れていない | レベル別・年齢別で頻繁に開催。ベトナムは競技人口と選手層が厚い |
表は週刊Mtownの記事の記述に基づく。
ベトナムが遠征拠点の一つになる背景は登録データにも出ている
DUPRの伸び率では日本5位、マレーシア9位、ベトナム10位
Mtownは、ベトナムは競技人口と選手層がともに厚く練習環境も充実しているため、嶋さん自身が海外遠征時の拠点の一つにしていると書く。この記述は登録データと重なる。評価システムDUPRの新規ユーザー数をもとにした直近12か月の伸び率ランキングは上位10か国がすべてアジアで、日本は5位の170%、マレーシアは9位の120%、ベトナムは10位の110%だった(The 10 fastest-growing countries are all in Asia, Japan 5th with 170% growth)。
| Standing | Country | 12-month growth rate |
|---|---|---|
| 1 | Philippines | 1213% |
| 5 | Japan | 170% |
| 9 | Malaysia | 120% |
| 10 | Vietnam | 110% |
出典はDUPRの新規ユーザー12か月データ(The Kitchen報)。総数ではなく増加率の順位。
この並びが増加率である点には注意がいる。母数の小さい市場ほど高い数字が出るため、伸び率の順位だけでは各国の選手層の厚さまでは測れない。Mtownが拠点の理由に挙げるのも、伸び率ではなく選手層の厚さと練習環境だ。
ダナンのW杯で開催国ベトナムが金106個を積んだ
層の厚さを別角度から示したのが、8月30日から9月6日にベトナム中部ダナンで開かれたHeineken Pickleball World Cup 2026だ。開催5日目までの集計で地元ベトナムが金106個・総メダル244個を積み、金メダル数で2位の韓国(10個)を10倍以上引き離した(Host Vietnam takes 106 golds, ten times runner-up Korea, to sweep the Da Nang World Cup)。開催国枠の多さと細かく刻んだ年齢・レベル別区分がこの数字を生んでおり、競技力で世界一という話ではない。
裏を返せば、枠を用意すれば埋められる登録プレーヤーが国内にいる。時差も渡航費も小さい国で同じレベルの相手を見つけやすいことは、賞金より先に効く。
マレーシアのコートに立ちたい日本人が次に押さえること
FITOKIOの交流会は毎週月曜の午前11時から
FITOKIOは初心者向けレッスンのほか、初心者から経験者まで参加できる交流会「ピックルボールの会」を毎週月曜に開いている。平日の昼という枠は、駐在に同行する家族や在宅勤務の人が組み込みやすい。
| Item | Details |
|---|---|
| FITOKIO所在地 | No. 10-08, Menara 1 Mont Kiara, Office Suites, 1, Jalan Kiara, Mont Kiara, 50480 Kuala Lumpur |
| Meetup | 「ピックルボールの会」毎週月曜 午前11時〜午後1時/初心者から経験者まで |
| Lesson | 初心者向け。指導はAPBA協会認定コーチの吉村大作さん |
| Contact | 公式サイト https://www.fitokio.com.my / WhatsApp +60 18-288-0238 |
住所と連絡先はFITOKIO公式サイトと照合した。交流会の日時は週刊Mtownによるもので、会場は記事に書かれていないため申し込み時に確認したい。
12月の有明ではPPA Asia 125が日本で開かれる
嶋さんが参戦するPPA Tour Asiaは日本の愛好者には遠い話に見えるが、アジアのプロ枠を国内で見られる機会はこの冬にある。一般財団法人ピックルボール日本連盟は2026年12月7日から11日まで、東京・有明テニスの森公園で第3回PJピックルボールチャンピオンシップスを開き、その中でアジアのトップ選手が世界ランキングポイントを争う「PPA Asia 125」を日本で初めて実施する。全60面・参加予定約2000人、賞金賞品は総額1500万円以上で観戦は無料だ(Over 15 million yen in prizes: PPA Asia, the pro proving ground, lands in Japan on 60 courts at Ariake)。
英語が不得手なままでも遠征は始められる
対談で最も実務的なのは、嶋さんが英語の不得手を抱えたまま遠征を始め、続けるうちに現地で支える人が増えた点だ。語学力が整うまで待つ必要はないが、頼れる日本語の窓口があるかで初動は変わる。クアラルンプールに行く予定があるなら、滞在日程を月曜にかけてコートに1回立つところから決めたい。
