WNBAシアトル・ストームのオーナー、ジニー・ギルダー氏が、シアトル市インターベイに屋内20面のピックルボール施設「Pickle at the Palms」を8月24日に開いた。延床は約54,000平方フィート(約5,000平方メートル)で、市内最大級の屋内コートになる。プロバスケットボール球団を率いる人物が、次の投資先にピックルコートを選んだ——この一手は、コート不足に悩む日本のプレーヤーにとっても示唆が多い。誰が金を出し、どんな座組みで屋内大箱を成立させるのか、という問いに具体的な答えが出たからだ。
ギルダー家3人が54,000平方フィートに20面を敷いた
Pickle at the Palmsは、ギルダー氏が娘のシエラ・キーラー氏、義理の息子カイル・シュレイダー氏と組んで運営する家族経営の施設だ。20面は競技レベルの仕様で、建物を2層に分けて配置した。館内にはイベントや歓談に使うロフト・ラウンジ、プロショップ、そしてコーヒーや食事・酒類まで出す「Mainstay Provisions」というカフェが併設される。営業は朝7時から夜11時まで。単なる打つ場所ではなく、長居して人が集まる場所として設計されている点が特徴だ。
元インテリアの空間を競技施設に転換した造りで、内壁には地元アーティストによる約200フィートの壁画が入る。コートを敷き詰めるだけでなく、施設そのものを「行きたくなる場所」に仕立てる発想が全体に通っている。
球団の練習施設を建てた人物が、その手法をピックルに移した
ギルダー氏はシアトル・ストームの筆頭オーナーで、同球団の専用練習拠点「BECU Storm Center for Basketball Performance」の開発を手掛けた実績を持つ。選手が最高の環境で練習できる箱をゼロから作った経験が、今回のコート20面にそのまま生きている。プロスポーツの興行と施設運営を知る資本が、成長中のピックルボールに横展開した格好だ。
ギルダー氏は開業にあたり、施設の狙いを「人には、互いに集まれる場所が必要だ」という言葉で語っている。勝ち負けの競技性より、屋根の下で人が顔を合わせる社交の場としての価値を前面に置いた。この読み筋は、屋内施設が黒字を出すうえで無視できない。コートの稼働だけでなく、カフェやイベントで滞在時間と客単価を伸ばす設計に直結するからだ。
年会費250ドルと従量課金を併存させた集金の作り
料金は、年会費250ドル(1ドル148円換算で約3万7,000円・概算)のコア会員と、都度払いのpay-as-you-playを並べた二本立てにした。レッスンやリーグ戦も収益源に組み込んでいる。会員で固定収入の土台を作りつつ、非会員のビジターも取りこぼさない設計で、屋内20面という大箱の稼働率を底上げする狙いが読み取れる。
| Item | Details |
|---|---|
| Number of courts | 屋内20面(2層構成) |
| Total floor area | 約54,000平方フィート(約5,000平方メートル) |
| コア年会費 | 250ドル(約3万7,000円)+従量課金の併用 |
| Hours | 7:00〜23:00 |
| Opening | 2026年8月24日 |
ドル円は1ドル148円で概算。米国側の公表値をもとにした換算で、正確な料金は運営の告知を確認のこと。
稲取20面・ルスツと並べると、日本の課題が見えてくる
日本でも屋内・屋外の大型化は進んでいる。東伊豆・稲取ではテニスコートを改修して国内最大20面のピックルコートが生まれ、規模だけならPickle at the Palmsと肩を並べる。加森観光はルスツと伊豆で計28面から44面へ広げる計画を進め、リゾート事業者が本気で面数を積み上げている。
違いは資本の出所と、コートを社交と収益に変える設計思想にある。シアトルの事例は球団オーナーという興行のプロが、カフェ・ラウンジ・会員制を最初から一体で組んだ。日本の大型施設の多くはリゾートや観光の付帯設備として立ち上がり、通年の会員基盤づくりはこれからの段階にある。モール併設で開業初日に集客を仕掛けた北米The Nestの集客設計と重ねると、屋内大箱を回す鍵が「面数」ではなく「滞在時間の作り込み」にあることがはっきりする。
日本のプレーヤーが参考にできるのは、こうした施設の料金体系と併設サービスだ。年会費で通う場所を確保するのか、都度払いで自由度を取るのか。カフェやラウンジがある施設なら、練習後に仲間と残って交流できる。屋内コートを選ぶとき、面数や床材だけでなく、どんな集金設計と居場所が用意されているかを見る目が、これから効いてくる。
次に日本で起きること
Pickle at the Palmsが示したのは、プロスポーツの資本と運営ノウハウがピックルボール施設に流れ込む流れだ。日本でも球団や興行を持つ企業がコート事業に乗り出せば、稲取やルスツの規模に、社交と会員制の設計思想が加わる可能性がある。次に屋内施設を予約するなら、年会費と従量課金のどちらが自分の頻度に合うかを一度計算しておくと、通う場所選びで損をしない。
