東京都小平市が9月12日、小平第六小学校の体育館で市民向けのピックルボール体験会を開く。共催は不動産デベロッパー系のフージャースウェルネス&スポーツ。単発のイベント告知に見えて、その裏には市の公園のプール跡地をコートに変え、その整備と運営まで一社が引き受ける座組みがある。行政が予算を握って建てる公共コートとは別の道筋で、日本のプレーヤーが自分の街を読むうえでの材料になる。
9月12日は初心者と経験者を時間で分け、参加費は取らない
会場は小平第六小学校の体育館(小平市小川東町3-1-2)。当日は二部制で、午前10時から正午までの第1部が初心者限定・小学生以上、午後1時から4時までの第2部が経験者向けの交流大会という組み立てになる。参加費はどちらも無料。初めてパドルを握る親子と、すでに打てる人が同じ日に別枠で集まる形だ。
この「初心者は午前・経験者は午後」の切り分けは、地域の体験会でよく効く。初めての人ばかりの場に経験者が混じると、初心者はボールに触れる回数が減って引いてしまう。逆に経験者だけを集めても裾野は広がらない。小平市の建て付けは、同じ体育館を半日ずつ使い分けて両方を取りにいく。埼玉県の三郷市が体育館で入門講座を全4回の連続ものにしたのと比べると、小平は1日で入口と受け皿を同時に見せる速さを選んでいる。
プール跡地の再整備にコートを差し込む、税金で建てない公共コート
この体験会は思いつきの単発ではない。小平市は「東部公園のプール再整備・萩山公園のプール跡地活用に関する公民連携事業」を進めており、その優先交渉権者にフージャースウェルネス&スポーツを代表とする陣営が選ばれている。老朽化した屋外プールをたたんだ後の土地に、屋内プールやスポーツ施設を民間が整備・運営する枠組みで、東部公園側が約9,960平方メートル、萩山公園側が約3,586平方メートル。この両公園にピックルボールのコートを組み込む計画だ。
運営はフージャースウェルネス&スポーツと明日葉、維持管理はフージャースリビングサービスとイオンディライトが分担する。市が土地と枠組みを出し、建設・集客・日々の運営は民間が回す。市の一般会計から建設費をまるごと出すのではなく、民間の投資と運営ノウハウで施設を成り立たせる設計になっている。9月の体験会は、その施設が実際に建つ前に地域の需要を可視化し、市民との接点を先に作る役割を負っている。
茅ヶ崎やトロントの「行政が建てて無料開放」とは資金の出どころが違う
自治体がコートを用意するやり方は一つではない。神奈川県の茅ヶ崎市は予約不要で使える無料コートを市の判断で置いた。カナダのトロントは公費約1.2億円で11面を整備し、無料の公共コートを増やしている。どちらも原資は税金で、行政が建てて開放する形だ。
小平市の場合は、跡地の活用と施設運営を民間に委ね、事業者が投資を回収しながら運営する。プレーヤーから見ると、この違いは使い勝手に直結する。行政直営の無料コートは費用ゼロで開放的だが、予約や管理は手薄になりやすい。民間運営はコート予約やスクール、用具レンタルまで整いやすい一方、無料開放とは限らず利用料や会員制が入り込む余地がある。小平の2公園が最終的にどちらの色を強く出すかは、料金体系と予約の仕組みが公表される段階で見えてくる。
運営権を握る事業者が体験会から入る狙い
フージャースは分譲マンションや街づくりを本業とするデベロッパーだ。そこがスポーツ運営の会社を立て、公園の再整備という長期の公民連携でコートまで持つ。マンションを売って終わりではなく、住む人が使う施設を自分たちで運営し続ける方向に事業を伸ばしている。ピックルボールは、テニスより狭い面積で、子どもから高齢者まで同じコートに立てる。公園という限られた土地で幅広い世代を呼べる競技として、街づくり側の狙いと相性がいい。
体験会を施設完成の前に打つのも計算のうちだ。まだ建っていない段階で市民に一度打たせておけば、開業時に「知っている場所」として戻ってきてもらえる。無料で門戸を開き、初心者の入口と経験者の交流を同じ日に見せることで、地域にどれだけ需要があるかを運営側が自分の目で測れる。企業がコートを持つ流れは、BPO大手が施設のオーナーになる例のように広がっており、小平の一件はデベロッパーが公園の再整備を足場にその位置を取りにいく形だ。
日本のプレーヤーが自分の街で確かめられること
小平の事例が示すのは、これから増えるコートが「誰の金で建ち、誰が運営するか」で性格が変わるという点だ。近くに新しいコートができると聞いたとき、確かめる順番はほぼ決まっている。
- 整備の主体が行政か、民間デベロッパーか。無料開放か、利用料や会員制が入るか。
- 公園やプール跡地など、既存施設の再整備に紐づくコートか。継続運営の担い手がいるか。
- 完成前の体験会やモニター募集があるか。あれば開業前に一度打っておくと予約や設備の実態を早く掴める。
小平市の9月12日は無料で誰でも入りやすい。近隣に住むなら、初心者枠でパドルの感触を確かめるだけでも、この先の2公園がどんなコートになるかを占う下見になる。行政の公共コートと民間運営のコートは、料金も予約も混雑の質も違う。自分が普段使うのはどちらのタイプか——その視点で街のニュースを読むと、次にどこで打つかの判断が早くなる。
