四国・愛媛で24時間スポーツジムを多店舗展開する三福ホールディングスが、松山市の「MEGA P・SPO24 東石井店」にピックルボール専用コートを設け、2026年6月29日(月)から完全予約制で運用を始めた。既存ジムの空きスペースを改装してコート化するという手法で、地方の事業者がピックルボールへ参入した事例として注目できる。首都圏では三井不動産やSansanといった大手の専用施設オープンが相次いでいるが、地場のフィットネス企業が動き始めたことは、競技人口の裾野が地方都市にまで届き始めたことを示している。日本のプレーヤー、とりわけ四国・中国地方で「打てる場所が少ない」と感じてきた層にとって、自宅近くの選択肢が一つ増わる。
松山の24時間ジムが空きスペースをコートに変えた
開設したのは「MEGA P・SPO24 東石井店」(愛媛県松山市東石井2丁目22-30)。三福ホールディングスが運営する24時間・年中無休のスポーツ特化型ジムで、バッティングマシン、ゴルフシミュレーター、オートテニス、卓球台といった競技別のマシンを並べたのが特徴だ。今回はこの店舗の1階フリースペースをリニューアルし、ピックルボールの専用コートとして転用した。利用は完全予約制で、6月29日から運用が始まっている。
面数や利用料金については公式発表で確認できた数字がないため、ここでは触れない。利用を検討する場合は、後述の通り店舗の予約窓口で直接確かめてほしい。
「既存施設の改装」という参入のかたち
この事例で押さえておきたいのは、新たにコート専用の土地や建物を確保したのではなく、すでに稼働しているジムのフロアを組み替えてコート化した点だ。ピックルボールはテニスの約4分の1ほどの広さで1面が成立し、ネットとライン、平らな床があれば運用に入れる。体育館やテニスコートに比べて必要な空間が小さく、屋内のフリースペースとの相性がいい。24時間ジムが持つ「すでにある床」を活用できることが、地方事業者にとって参入のハードルを大きく下げている。
東石井店は駐車場17台を無料で備える郊外型のロードサイド店舗でもある。電車移動が前提になりがちな都心の施設と違い、車で乗りつけて短時間プレーして帰る、という地方都市ならではの使われ方が想定できる。これは首都圏型の専用施設とは異なる需要の取り込み方だ。
都市部の専用施設ラッシュとの対比
2026年に入って、首都圏ではピックルボールの専用施設が立て続けに動いている。参入主体と立地の性格は、地方とは対照的だ。
| 施設・主体 | 立地 | 性格 |
|---|---|---|
| Sansanピックルボールコート池袋 | 東京・池袋 | 大手IT企業による都心の全天候型大型施設 |
| 三井不動産系の取り組み(イベント・施設) | 都市部中心 | 不動産・メディアが連携した競技人口拡大策 |
| MEGA P・SPO24 東石井店 | 愛媛・松山(郊外) | 地場ジムが既存フロアを改装した実用型 |
都市部は「専用に建てる・借りる」大型投資が主流なのに対し、松山の事例は「あるものを使う」発想だ。投資規模も到達する層も異なるため、どちらが優れているという話ではない。むしろ両者がかみ合うことで、競技を体験できる入口が都市と地方の双方に広がっていく構図になっている。
地域でのプレー環境ニーズと今後の展開
四国でプレー環境を探してきた人にとって、決まった場所で打てるようになる意味は大きい。一方で愛好者の間では、専用コートとして長く使えるか、予約が取りやすいかを見極めたいという観点が出やすい。新規施設では運用が落ち着くまで枠の取り合いになりやすいからだ。
業界側の視点では、フィットネス事業者がピックルボールを「集客の新メニュー」として位置づけ始めた点が大きい。ジムにとっては、既存会員の利用頻度を上げる導線にもなり、未経験者を呼び込む話題性にもなる。地方ジムの参入は、用品メーカーやインストラクターにとっても新しい取引・指導の場が地方に生まれることを意味する。
地方普及の現実的なモデル
松山の動きが示すのは、ピックルボールの普及が「専用施設をどれだけ建てるか」だけでなく、「既存の遊休スペースをどれだけコートに転用できるか」で決まっていく可能性だ。地方では新規にコートを建設する体力のある事業者は限られる。だからこそ、24時間ジムの空きフロア、商業施設の遊休区画、屋内駐車場跡といった「すでにある屋内空間」を組み替える発想が、普及の現実解になりやすい。
プレーヤー個人にとっての実利も明確だ。郊外ロードサイドの24時間ジムは、早朝や深夜でも立ち寄りやすい。仕事前後の1時間を使った練習が組みやすく、継続のハードルが下がる。地方で仲間を集めてサークルを立ち上げたい人にとっても、固定で使える屋内コートがあるかどうかは活動の安定に直結する。
四国・中国地方のプレー環境への波及
四国エリアは、これまで専用コートの情報が乏しく、プレーできる場所を探すこと自体が困難だった。松山に固定拠点ができたことは、近県からの遠征や、地域大会・体験会を開く際の受け皿になり得る。地場の多店舗チェーンが手応えを得れば、同じグループの別店舗や、競合する地方ジムが追随する展開も考えられる。一つの拠点が「地域でピックルボールが成立する」ことを実証すれば、後続の参入判断は格段にしやすくなる。四国・中国地方のプレー環境は、この松山の拠点を起点に動き出す可能性がある。
利用前に確かめておきたいこと
東石井店は完全予約制のため、利用にあたっては予約の可否・空き状況を事前に確認することが必須だ。面数や料金、ビジター利用の条件は公式発表で確定した数字を見つけられなかったため、必ず店舗の予約窓口で直接確認してほしい。24時間営業の店舗だが、コートの利用可能時間帯がジムの営業時間と同じとは限らない点も要チェックだ。
他地域の施設の作り方も、自分の街でコートを探す・つくる際の参考になる。屋外マットコートから始めて屋内を増設する半田の事例は愛知・半田に県内初のピックルボール専用アウトコート誕生に、全天候型の屋内3面を都市部に整える設計はクロスミントン世界王者・西村昭彦が本八幡にインドア3面施設にまとめている。コート選びと並行してパドルを見直したい人は、試打して選べる渋谷にパドル300種を試打できる専門店の記事も役立つはずだ。

