
お隣の韓国で、ピックルボールが一気に存在感を増しています。
テニスブームに沸くソウルや釜山では、芸能人の発信や公共コートの整備をきっかけに愛好者が急増し、2026年にはソウルの漢江沿いに大型の専用コートまで誕生しました。日本との交流も進み、アジア全体でピックルボール文化が形づくられつつあります。この記事では、韓国での普及の歩みと最新の動き、日韓のつながり、そして今後の展望を、2026年6月時点の情報で整理します。
韓国でのピックルボール普及の歩み【早わかり年表】
韓国のピックルボールは、大学発の小さなクラブから10年ほどで全国へと広がりました。まずは普及の流れを年表で押さえましょう。
| 時期 | できごと |
|---|---|
| 2016年 | 延世大学でピックルボールクラブが誕生。バドミントンコートを代用してスタート |
| 2017〜18年 | 光州など各地にクラブが拡大し、2018年に大韓ピックルボール協会が設立。国際連盟にも加盟 |
| 2024年〜 | テニスブームを背景に愛好者が増加。日韓交流大会も開催 |
| 2025〜26年 | 芸能人の発信や公共コート整備で一気に拡大。ソウルに大型専用コートが開業 |
大学クラブから全国組織へ
韓国でピックルボールが本格的にプレーされ始めたのは2016年です。
名門・延世大学で「ピックルボールクラブ」が立ち上がり、当初はバドミントンコートを代用して行われていました。その後、光州をはじめ各地に愛好者のクラブが広がり、2018年には大韓ピックルボール協会が設立されます。同年、国際ピックルボール連盟への加盟も果たし、競技としての土台が整いました。現在は競技志向のプロ団体や指導者団体も生まれ、組織面の整備が進んでいます。
日本より遅いスタート、しかし伸びは急
普及の時期だけを見れば、韓国は日本より少し遅れて始まりました。
日本では2015年に元全米チャンピオンのダニエル・ムーア氏が八王子市などで体験会を開き、同じ2015年4月に日本ピックルボール協会が設立されています。韓国のスタートはその翌年ですが、爆発的なテニスブームという追い風を受け、ここ数年の伸びはむしろ日本を上回る勢いを見せています。
テニスブームが押し上げる韓国のラケットスポーツ文化
韓国のピックルボール人気を語るうえで欠かせないのが、爆発的なテニスブームです。
公営テニスコートは予約抽選の倍率が高く、なかなか当たらないほどの過熱ぶりです。テニスをテーマにしたホテルが登場し、SNSにはテニスを楽しむ若者の投稿があふれています。このブームはラケットスポーツ全体への関心を押し上げ、より手軽でコートも小さいピックルボールへの注目につながりました。
ピックルボールはテニス経験者がスキルを活かしやすく、それでいて運動量を抑えられて社交的に楽しめます。バドミントンが広く親しまれてきた土壌も大きく、似たサイズのコートを使えることが移行を後押ししています。テニスやバドミントンで培った感覚を、より気軽な形で楽しめる受け皿として広がっているのです。

韓国各地に広がる活動拠点
韓国でのプレー拠点は、首都ソウルを中心に全国へと広がっています。クラブ活動が確認されている主なエリアを整理しました。
| エリア | 主な都市 | 特徴 |
|---|---|---|
| 首都圏 | ソウル、パジュ(坡州)、イルサン(一山)、ソンド(松島) | クラブ数が最も多い中心地。国際都市ソンドは外国人プレイヤーも多い |
| 地方主要都市 | プサン(釜山)、クァンジュ(光州)、テグ(大邱)、チョンジュ(全州) | 釜山は日本との交流が活発。光州は協会発祥にゆかりがある |
| 地方・リゾート | アンドン(安東)、ヤンピョン(楊平)、チェジュ(済州島) | 自然豊かな地域や観光地でも体験の場が広がる |
これらの都市では、既存のスポーツ施設を活用しながら専用コートの整備が進み、ソウルや釜山では大会やトーナメントも定期的に開催されています。地域コミュニティの結束を強める役割も担い始めています。
出典 Pickle One「韓国でのピックルボールの盛り上がりは?」(活動拠点の一覧)より作成
2025〜2026年に加速した「公共コート」と「芸能人」
韓国の普及は、ここ1〜2年で新しい段階に入りました。
大きな転機となったのが、芸能人による発信と、行政主導の公共コート整備です。韓国の有名人がピックルボールを楽しむ様子を発信したことで「おしゃれで新しいスポーツ」というイメージが広がり、若いオフィスワーカーや外国人居住者、元テニス経験者が一気に流入しました。
ソウルの漢江沿いに大型コートが開業
象徴的なのが、ソウル市による公共コートの整備です。
2026年4月、ソウルの広津(クァンナル)漢江公園に14面の専用コートを備えた、市内でも最大級の施設がオープンしました。週末には大会や一般向けプログラムも行われ、誰もが気軽にプレーできる環境づくりが進んでいます。日常の運動の場としてピックルボールを位置づける、行政の姿勢がうかがえます。
出典 The Korea Herald「From niche hobby to public courts — pickleball gains ground in Korea」より作成
プレイヤー増にインフラが追いつかない
急拡大の一方で、課題も見え始めています。
プレイヤーの増加スピードにコート整備が追いつかず、人気施設では混雑が常態化しつつあります。指導者の育成やルールの標準化、大会運営のノウハウ蓄積もこれからの段階です。ただ、行政が公共スペースにコートを設ける動きは各地に広がっており、需要を受け止める環境は着実に整いつつあります。

日本とつながる韓国のピックルボール
韓国の盛り上がりは、日本の愛好者にとっても他人事ではありません。
日韓のコミュニティは交流を深めており、2024年8月には釜山から来日した選手団を迎えた「日韓交流ピックルボール大会」が開かれました。こうした国際交流は、双方のプレイヤーにとって技術向上とコミュニティ拡大の貴重な機会になっています。国内のツアーでも、上位選手に韓国遠征や現地選手との合同練習の機会を用意する取り組みが見られ、アジア全体でレベルを引き上げようという流れが生まれています。
視野を広げれば、ベトナムやインド、中国、タイなどアジア各国でも普及が加速しており、韓国はそのネットワークの重要な一角を占めています。DUPRなどの国際的なプレイヤーデータでも、アジアは北米に次ぐ規模へと成長し、最も伸びている地域となっています。各国の事情はベトナムや中国、インドの記事でも掘り下げています。
出典 八王子ピックルボール協会「日韓交流ピックルボール大会」(2024年8月)より作成

韓国の伸びを読むカギは「公共コート」です。民間ジム任せではなく、自治体が漢江沿いのような一等地にコートを作ると、一気に日常スポーツとして定着します。日本でも河川敷や公園の活用が進むかどうかが、今後の普及スピードを左右しそうです。
韓国ピックルボールの今後の展望
韓国の市場は、これからさらに伸びる余地があります。
テニスブームを経験した若年層が、次のステップとしてピックルボールへ移る流れは続きそうです。企業のチームビルディングや従業員の健康づくりに採用する動きもあり、学校や大学でのプログラム導入も少しずつ進んでいます。手軽さと社交性を兼ね備えたこのスポーツは、幅広い世代に受け入れられる土壌を持っています。同じくテニス文化の強いイギリスや、リゾート需要で伸びるタイと比べても、韓国は公共コート主導という独自の伸び方をしています。日本の団体や制度の動きはJPAの解説もあわせてご覧ください。
残る課題は、コート不足の解消と、指導・大会運営の体制づくりです。とはいえ、行政の支援と公共コートの整備という追い風がある以上、韓国がアジアの主要なピックルボール拠点へと育っていく可能性は十分にあります。日本にとっても、すぐ近くで起きているこの急成長は、今後の普及を考えるうえで参考になるはずです。
よくある質問
韓国でピックルボールはいつから広まったのですか?
2016年に延世大学でクラブが誕生したのが始まりです。2018年には大韓ピックルボール協会が設立され、2025〜2026年には芸能人の発信や公共コートの整備を起点に一気に拡大しました。
韓国でピックルボールが人気になった理由は何ですか?
爆発的なテニスブームでラケットスポーツへの関心が高まったことが土台です。そこへ芸能人がプレーする様子を発信したことで「おしゃれで新しいスポーツ」というイメージが広がり、若い世代や外国人居住者を中心に愛好者が急増しました。
韓国にはピックルボールの専用コートはありますか?
あります。2026年4月にはソウルの広津漢江公園に14面の大型専用コートがオープンするなど、行政主導の公共コート整備が進んでいます。一方で、プレイヤーの増加に施設が追いつかず、混雑が課題になっています。
韓国と日本のピックルボール交流はありますか?
活発です。2024年8月には釜山の選手団を迎えた日韓交流大会が開かれ、国内ツアーでも韓国遠征や合同練習の機会が設けられています。アジア全体でレベルを高めようという連携が進んでいます。
まとめ:公共コートが切り開く韓国の新しいスポーツ文化
韓国のピックルボールは、2016年の延世大学での導入から約10年で、大きな転換点を迎えています。
当初の大学クラブ中心の広がりから、2025〜2026年には芸能人の発信と公共コートの整備を起点に、一気に主流の余暇スポーツへと近づきました。ソウルの漢江沿いに大型コートが誕生し、若い世代や外国人居住者を巻き込みながら、アジアでも有数の成長市場になりつつあります。
日本との交流も活発で、アジア全体のネットワークの中で韓国は重要な役割を担っています。コート不足などの課題はあるものの、行政の後押しを受けた普及の勢いは続くでしょう。すぐ近くで進む韓国の動きは、日本のこれからを占ううえでも見逃せません。

