ベトナム・ホーチミン市で8月6〜9日に開かれた「PPAアジア500 MBホーチミンシティ・オープン2026」で、地元のヒエン・チュオンとクアン・ドーのペアが男子ダブルスを制した。海外勢が上位を占めがちなアジアの国際大会で、開催国の選手が最上段に立った一日だった。日本にとっても、7月に東京・立川で自前のPPAアジア500を開いたばかりの時期に、隣国の「地元開催で勝つ」実例が出た意味は小さくない。
地元ホーチミンで悲願の金、チュオン&ドー組がコリン・ジョンズ擁するペアを退けた
主役はヒエン・チュオン。一次報道によると、彼は今季ずっと自国開催の大会で銀・銅・銀と表彰台の上段に一歩届かず、母国のコートで金だけがなかった。その流れを断ち切ったのが、日曜のホーチミンだった。パートナーのクアン・ドーと組んだ男子ダブルス決勝で、チュオンらはホアン・ナム・リーとコリン・ジョンズのペアを 11-13, 11-6, 11-4 で逆転。第1ゲームを落としながら、第2・第3ゲームを立て直しての勝利だった。
相手ペアに名を連ねたコリン・ジョンズは、世界最上位クラスの男子ダブルスを長く支えてきたアメリカの実力者だ。その一角を含む組を、地元の観衆が90分間ほとんど立ちっぱなしという雰囲気の中で下したことは、ベトナム勢の底上げを象徴する結果になった。金がシングルスではなくダブルスだった点はチュオン本人にも思うところがあっただろうが、母国で金を取れなかった一年を終わらせるには十分な一勝だ。
金は男子ダブルスだけ、それでもベトナムは3種目で決勝に届いた
大会は5種目で争われ、金メダルの内訳は国際色が濃かった。ベトナムが頂点に立ったのは男子ダブルスの1種目だが、決勝の顔ぶれを見ると、開催国は複数の種目で最後まで残っている。
| Event | Winner | Runner-up | Score |
|---|---|---|---|
| Men's Doubles | ヒエン・チュオン / クアン・ドー(ベトナム) | ホアン・ナム・リー / コリン・ジョンズ | 11-13, 11-6, 11-4 |
| Women's singles | アンディ・ディコサヴリェヴィッチ(オーストラリア) | チャン・フイン(ベトナム) | 11-2, 9-11, 11-7 |
| Men's singles | アダム・ハーヴェイ(アメリカ) | ルック・ファム(アメリカ) | 11-4, 11-4 |
| Women’s doubles | ディコサヴリェヴィッチ / ユーフェイ・ロン(中国) | ワン=ベックヴァル / タン | 12-10, 11-5 |
| Mixed doubles | ジャック・ウォン / リンウェイ・コン(香港ほか) | タン / キム | 4-11, 11-8, 11-9 |
女子シングルスのチャン・フインは決勝で敗れて銀。男子ダブルスでは金のチュオン&ドーに続き、準優勝ペアにもホアン・ナム・リーが名を連ねた。男子シングルス準優勝のルック・ファムはベトナム系だが競技登録はアメリカで、開催国の選手が決勝まで残ったのは男子ダブルスと女子シングルスの2種目になる。それでも金1つという数字以上に、開催国の層の厚みが見える大会だった。女子シングルスを制したディコサヴリェヴィッチは、女子ダブルスでも中国のユーフェイ・ロンと組んで優勝し、この大会の二冠に輝いている。
PPAアジア500はベトナムで2度目、東京・北京・KLと広がる巡回路線
今回のホーチミン大会は、PPAツアー・アジアが2026年にベトナムで開いた2つ目のストップにあたる(同年のハノイ開催に続く形)。アジアの巡回路線はほかにも東京、クアラルンプール、マカオ、シンガポール、北京などに広がっており、主催側の発表では今大会だけで20を超える国・地域から500人以上が集まったとされる。賞金総額はUS$70,000、ランキングポイントは500ポイント。1ドル=150円で換算すると賞金はおよそ1,050万円にあたる。
会場はホーチミンの新都心「ザ・グローバル・シティ」内のシティパーク。屋外の国際規格コートに加え、空調を備えたアリーナも用意された。北米発のPPAが、東南アジアの都市の一等地にこれだけの規模を持ち込むようになった事実は、アジアのピックルボールが観戦・興行として立ち上がりつつあることを示している。
東京オープンを持つ日本にとって、ホーチミンの勝ち方が示すもの
日本も、この巡回路線の当事国になった。7月1〜4日には東京・立川のアリーナ立川立飛で「PPAアジア500 Sansan東京オープン2026」が開催され、賞金US$50,000(約750万円)を懸けて争われている。TBSホールディングスや三井不動産といった大企業がスポンサーに名を連ねた点も含め、日本での大会立ち上げの経緯はSansan東京オープン2026の開催決定を伝えた記事で詳しく取り上げている。
ホーチミンでベトナム選手が地元開催の金を取ったことは、同じ「アジアに自前のストップを持つ国」の日本にとって現実的な目標を映し出す。船水雄太や畠山成冴といった日本のプロも同じPPAアジアのドローで戦っており、東京というホームコートで頂点を狙える環境はすでに整いつつある。左利きの畠山成冴のような日本人プロがアジアの巡回戦でどこまで勝ち上がれるか、ホーチミンの結果はその物差しになる。
プレー面でも学べる点はある。チュオンらは第1ゲームを 11-13 で落としながら、第2ゲーム以降でリターンとサーブの精度を上げ、11-6、11-4 とスコアを開いた。格上を相手に一度崩れても立て直せる勝負勘は、国内の競技志向のプレーヤーが練習で意識できる部分だ。
ホーチミンの一勝が残したもの
ヒエン・チュオンにとっての金は、母国のコートで銀・銅・銀と続いた一年の締めくくりになった。海外の強豪が金の多くを持ち帰る中で、開催国が3種目の決勝に食い込んだこの大会は、アジアのピックルボールが「見に行く・出場する」双方で成熟してきた段階を示している。次に同じ景色を東京で作れるかどうかは、日本のプレーヤーとファンの側に投げ返された問いだ。
Sources
- Pickleball News Asia「MB Ho Chi Minh City Open 2026: Hien Truong Gets Hometown Gold, Andie Dikosavljevic Wins」(2026年8月9日)
- PPA Tour「PPA Asia 500 – Ho Chi Minh City Open」大会ページ
- Vietnam.vn「FPT Play exclusively broadcasts PPA Asia 500 – MB Ho Chi Minh Open 2026」(賞金・出場規模)
- PPA Tour Asia「Sansan Tokyo Open」大会ページ(日程・賞金)
