東京・南青山の地下1階に、ピックルボールコートが「たった1面」だけ生まれた。2026年7月15日にグランドオープンしたPickle9(ピックルナイン)は、専用体育館を新設するのではなく、既存のインドアゴルフラウンジの一角にコートを1面だけ差し込む形をとる。都心一等地でニュースポーツを始めるとき、これほど身軽な構えは珍しい。日本のピックルボールが「広い土地に何面つくるか」で語られてきた流れに対して、Pickle9は「1面でも都心で成立する」という別の設計図を示している。
コート1面、ゴルフ打席のとなりに
運営は株式会社CopterOne。場所は港区南青山3-4-8、KDXレジデンス南青山のB1Fで、同社が運営するインドアゴルフ施設「Loun9ine 青山パークナイン」の店内にコートを併設した。同じフロアにはゴルフシミュレーターが4打席並ぶ。ゴルフの打席とピックルボールコートが同居する構成で、来店客はどちらも1時間単位で使える。
営業時間は11:00〜23:00(最終予約22:00)で、利用はオンライン予約制。パドルとボールのレンタルがあるので手ぶらで立ち寄れる。仕事帰りに1時間だけラリーを楽しむ、という都市生活者の使い方を最初から想定した造りだ。
料金は「時間貸し」、都心の坪単価と向き合う
Pickle9の料金は時間帯で変わる。夜と土日祝が高く設定されているのは、需要が集中する時間に価格を寄せる都市型施設の定石どおりだ。
| 時間帯 | 1時間あたり(税込) |
|---|---|
| 平日昼(11:00〜18:00) | 9,000円 |
| 平日夜(18:00〜23:00) | 11,000円 |
| 土日祝 | 13,000円 |
コート1面を1時間単位で貸す方式なので、4人で使えば1人あたりの負担は2,250〜3,250円に収まる。1面でも都心で成立しうるのは、コート自体の面積が小さく既存施設の固定費に相乗りできること、そして法人の貸切利用で単価を作れることが大きい。南青山という土地の坪単価を考えれば、専用コートを何面も構えるより、既存施設に1面を差し込むほうが投資も家賃リスクも小さい。「まず1面、うまくいけば増やす」という段階的な出店が、都心では現実的な入口になる。
「大きさ」で競わない、という選択
日本のピックルボールでは、規模の大きい施設が目立ってきた。20面を並べて「聖地」を目指す動きもあれば(20面の温泉リゾート、伊豆稲取が日本最大のピックル聖地になる日)、自治体が予約不要の無料コートを整備して裾野を広げる例もある(茅ヶ崎が予約不要の無料コート、自治体がピックル拠点を作る狙い)。Pickle9はそのどちらとも違う。1面で、有料で、都心のど真ん中で、というポジションを選んだ。
ゼロから専用施設を建てるのではなく、すでに人が集まる場所へコートを1面差し込む――この「手持ちの資産にピックルボールを足す」発想は、テニススクール大手が自社のノウハウにサウナを掛け合わせて新しい層を取りにいく動き(テニス大手ノアが挑む、ピックルボール×サウナで作る新市場)とも根は同じだ。集客装置としてのピックルボールを、余っている空間や既存の顧客基盤に乗せていく。
販促・福利厚生から見た読みどころ
CopterOneはPickle9を、個人利用だけでなく企業の福利厚生やスポーツ交流にも使える場として打ち出している。体験レッスンやイベント企画、企業向けの交流プランを順次展開する予定だという。ルールが単純で運動が得意でない人でもすぐ打ち返せるピックルボールは、社内イベントやチームビルディングの受け皿になりやすい。都心のオフィス街に近い立地は、平日夜に社員を集める用途と相性がいい。
ノベルティや販促の観点でも、1面のコートは「体験を配る」箱として使える。来場者にラリーを体験してもらいながらグッズを渡す、コラボ企画のリアル接点にする、といった使い方は、専用施設よりも小回りの利く1面施設のほうが組みやすい。少ない面数を高回転で回すには、予約と告知の設計が肝になる。
都心の遊休スペースが次のコートになる
Pickle9が興味深いのは、インドアゴルフという「すでにある屋内スポーツ空間」にコートを足した点だ。同じ発想でいけば、ボルダリングジム、フットサルコート、貸しスタジオなど、床面積と天井高のある屋内施設はどこもピックルボールの候補地になる。都市部の空きテナントや稼働率の低い時間帯を、コート1面で埋める――この最小構成のモデルが広がれば、日本のコート数は「大型施設の新設」を待たずに増えていく。
裏を返せば、1面あたりの回転率と単価をどう設計するかが施設側の勝負どころになる。時間帯で価格を変え、レッスンやイベントで平日昼の空き時間を埋め、企業需要を平日夜に流し込む。Pickle9の料金設計には、その狙いがすでに表れている。
施設概要
| 施設名 | Pickle9(ピックルナイン) |
|---|---|
| 運営 | 株式会社CopterOne |
| 所在地 | 東京都港区南青山3-4-8 KDXレジデンス南青山 B1F(Loun9ine 青山パークナイン内) |
| コート | ピックルボールコート1面(ゴルフシミュレーター4打席併設) |
| 営業時間 | 11:00〜23:00(最終予約22:00) |
| 料金 | 平日昼9,000円/平日夜11,000円/土日祝13,000円(1時間・税込) |
| 予約 | オンライン予約制 |
| オープン | 2026年7月15日 |
まとめ
Pickle9は「1面でも都心で回る」ことを証明しにいく施設だ。広い土地を確保して何面も並べる路線とは逆に、既存のインドアゴルフに1面を相乗りさせ、時間貸しと企業需要で稼働を埋める。土地代の高い都市部でピックルボールを始めたい事業者にとって、投資も家賃リスクも抑えた現実的な入口になる。まずは平日夜に4人で予約して、南青山の地下でラリーを体験してみるところから始めたい。増えるコートの次の一手が、大型施設ではなく「街なかの1面」から生まれるかもしれない。

