スーパーヨットが係留されたマリーナの水面に、固定式のピックルボールコートが現れた。米フロリダ州フォートローダーデールの高級リゾート「Pier Sixty-Six」が、約10億ドルの再開発の目玉として水上コートを開業した(2026年6月29日報道)。試合後には冷たいおしぼりで汗を拭ける配慮まである。コートを「競技の場」から「滞在体験の一部」へと引き上げる動きは、施設の高付加価値化を探る日本のホテル・リゾート・コート運営者にとって参考になる。
水上に固定された、フルサイズの一面
コートはインターコースタル・ウォーターウェイ(内陸水路)に面したマリーナに設置され、しっかりとアンカー固定された安定的なプラットフォーム上にフルサイズの競技面を備える。利用は1時間60ドル(約9,600円、1ドル≈160円で換算、最大4人まで)、延長は30分ごとに30ドル(約4,800円)。営業は毎日9〜20時で、パドル・ボール・ボトル飲料が含まれる。
そして特徴的なのが、試合後に提供される「冷たいおしぼり」だ。クールダウンのためのこの心遣いは、日本では当たり前でも、欧米の体験設計に取り込まれると新鮮な発見になる。
| 項目 | 内容(円換算) |
|---|---|
| 料金(1時間・最大4人) | 60ドル(約9,600円) |
| 延長(30分ごと) | 30ドル(約4,800円) |
| 営業時間 | 毎日9〜20時 |
| 含まれるもの | パドル・ボール・ボトル飲料・冷たいおしぼり |
| 立地 | マリーナの水上(アンカー固定) |
| プール利用 | 別途デイパスが必要(コート料金に含まれない) |
10億ドル再開発が生んだ「体験の器」
Pier Sixty-Sixは約10億ドルを投じた再開発を経て生まれ変わった。敷地は32エーカー、客室・スイートは325室、マリーナは全長400フィート級のスーパーヨットを受け入れる。さらに約13,000平方フィートのスパ、複数のプール、12のレストラン&バーを備える。水上ピックルボールコートは、この「体験の器」のなかの新しい目玉として位置づけられている。
コートはスキルを問わず誰でも歓迎する設計で、「熟練のプレーヤーでも、ちょっと試したいだけの人でも」を掲げる。競技志向だけでなく、宿泊客の遊びの選択肢として開かれている点が、リゾート併設コートの肝だ。
体験型コートが選ばれる理由
ピックルボールは用具が軽く、初心者でもすぐ打ち合える間口の広さが魅力だ。だからこそ「絶景の水上で、手ぶらで、短時間」という体験は、リゾートの滞在価値と相性がいい。プレー自体が目的の競技者だけでなく、「思い出に残る非日常」を求める層を取り込める。
世界の高級リゾート・ホテルがコート導入を進める流れは鮮明だ。米国では大型施設投資が別次元に入り(関連記事)、体験の差別化として「どこで打つか」が問われ始めている。
日本の読者・施設運営者への示唆
日本でも、リゾートやホテルがピックルボールを「滞在の付加価値」として商品化する動きが出ている。クラブメッド・トマムのコート併設(関連記事)や、ヒルトン東京の屋上ビアガーデンとの掛け合わせ(関連記事)は、その先行例だ。
Pier Sixty-Sixの事例が示すのは、コートの「立地そのものを体験に変える」という発想だ。海・川・屋上・庭園など、その施設にしかないロケーションにコートを置けば、単なる運動施設が「写真に撮りたくなる体験」へと変わる。手ぶらで遊べるパッケージ化(用具・飲料込み)と、おしぼりのような細やかなホスピタリティを組み合わせれば、単価と満足度の両立が見込める。
日本の温泉旅館やビーチリゾート、都市部のルーフトップは、いずれも「ここでしか打てない一面」を作れる素地がある。競技人口の拡大を待つだけでなく、非競技層を呼び込む体験設計が、施設側の新たな収益源になり得る。
まとめ
水上に固定されたフルサイズコートと、試合後のおしぼり。Pier Sixty-Sixの試みは、ピックルボールが「競技」から「体験」へと広がる象徴だ。立地を体験に変え、手ぶらで楽しめるパッケージと細やかなもてなしを足す──この設計思想は、コートの新設や高付加価値化を考える日本の施設運営者にとって、すぐに応用できるヒントになる。
世界で加速する「リゾート×ピックルボール」
Pier Sixty-Sixの水上コートは突出した事例だが、背景には高級リゾート・ホテルがピックルボールを滞在価値の一部として取り込む世界的な潮流がある。用具が軽く、初心者でもすぐ打ち合える間口の広さは、宿泊客の「ちょっと遊ぶ」需要と相性がいい。プールやスパと並ぶ「館内アクティビティ」として、コートを位置づける施設が増えている。
収益設計の観点でも示唆がある。1時間60ドル・最大4人という料金は、コートという固定資産から時間貸しで継続収益を生む。用具・飲料込みのパッケージにすれば客単価を上げつつ、手ぶらで来られる手軽さで稼働率も確保できる。日本の施設運営者にとっては、「会員制で埋める」発想に加えて、宿泊・日帰り客に向けた体験型の時間貸しという、もう一つの収益モデルを示している。立地そのものを売りにできるロケーションを持つ施設ほど、この手法は効く。
参照元
Time Out Miami: A floating pickleball court just opened in Fort Lauderdale

