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コートが足りない時代、床屋が市場を立ち上げるインドの逆算

2026 6/24
コート 海外
2026年6月24日
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インドのアクリル系スポーツ床材メーカーPacecourtが2026年6月17日、競技統括団体のAll India Pickleball Association(AIPA)と提携し、国際規格に沿ったピックルボールコートをインド全国で整備すると発表した。対象は学校・大学、スポーツクラブ、住宅コミュニティ、企業キャンパス、競技アカデミーまで幅広い。プレー人口が急増する一方で「そもそも打つ場所が足りない」という状況に対し、コートという物理インフラの供給側から市場を押し上げる動きだ。施設運営や用品流通でコート不足に頭を悩ませてきた日本のプレーヤー・業界関係者にとっても、市場の立ち上がり方の一つのモデルとして読む価値がある。

目次

発表の要旨

今回の提携の核は、床材メーカーと競技団体が組み、「国際基準を満たすコートをインド全国に量産する」と打ち出した点にある。Pacecourtは設計・計画から床の施工、最終のライン引きまでを一貫して請け負う体制を強調しており、AIPA側は競技の普及加速という目的でこれに名を連ねた。スター選手の招致や大会開催ではなく、足元のコート整備から市場をつくるという順番が、この発表をやや異質なものにしている。

背景:急成長するインド市場と「コート供給」という論点

Pacecourtは合成アクリル系のスポーツ床材を手がけるメーカーで、同社によると15年以上の事業実績があり、これまでに4,000面を超えるコートを施工してきたという(資料内では4,500面超との記載もある)。同社はITF認証システムや8層構造のアクリル床、デリー・ムンバイ・バンガロール・ハイデラバード・チェンナイなど主要都市を含む全国対応も自社の強みとして挙げている。これらはいずれも企業公式の発表に基づく自社主張であり、第三者による検証ではない点は割り引いて読む必要がある。

提携相手のAIPAは、インドにおけるピックルボールの統括団体で、国際ピックルボール連盟への加盟歴を持つ。インドのプレー人口については複数の報道で、近年急増しているとの指摘がある。一例として、アクティブプレーヤーが2025年初頭に6万人規模、カジュアル層を含めると10万人規模に向かいつつあるとする報道がある。あわせて、別の床材以外のプレーヤー(会場予約プラットフォームや新興リーグ)が数億ルピー規模を投じて100面単位でコートを増設する計画も伝えられており、「コートをどう増やすか」がインド市場の中心的な論点になりつつあることがうかがえる。

データで見る:報道ベースの参考値と自社主張の切り分け

今回の発表まわりの数字は、検証できる外部情報と、企業の自己申告とを分けて読む必要がある。

  • 一部報道による参考値(本記事では独自に裏取りしていない):インドのアクティブプレーヤーは2025年初頭で6万人規模、カジュアル層込みで10万人規模に向かうとの報道がある。会場予約系や新興リーグが数億ルピー規模・100面単位のコート増設を計画しているとも伝えられる。これらは規模感の参考にとどめたい。
  • Pacecourtの自社主張(同社によると):施工実績4,000面超(資料内に4,500面超の記載も)、事業実績15年以上、ITF認証システム、8層アクリル床、全国対応。
  • 今回の提携で確定している事実:Pacecourtとの提携、対象が学校・クラブ・住宅・企業キャンパス等であること、全国整備という方針。整備の具体的な目標面数や投資額は、公式発表内では明示されていない。

つまり「何面つくるか」という肝心の規模感は、今回の発表時点では数字として固まっていない。打ち出されたのは方向性であって、達成済みの実績ではない、という整理が正確だ。

受け止め:現場では何が語られているか

この種の発表に対する反応は、立場によって温度差が出る。ここでは業界内で交わされがちな見方を、特定の発言ではなく傾向として意訳・匿名でまとめておく。

第一に、施設をつくる側からは「順番として正しい」という肯定的な受け止めがある。プレーしたい人が増えてもコートがなければ熱は冷める、だからインフラ先行は理にかなっている、という見方だ。

第二に、慎重派からは「面数の裏付けが見えるまでは評価を保留したい」という声がある。提携の発表と、実際に稼働するコート数は別物であり、企業の施工実績の数字も第三者検証ではない以上、過度に期待するのは早い、という温度感だ。

第三に、競技団体寄りの視点からは「コートの規格統一こそ普及の土台」という評価がある。国際基準に沿った面が各地に増えれば、大会運営や指導の標準化が進み、競技としての厚みが出る、という長期目線の歓迎だ。

日本への示唆:コート不足という共通課題と「インフラ先行」という選択

ここからが本題だ。日本のピックルボールも、競技人口の伸びに対してプレーできる場所が足りないという、インドとよく似た構造的な課題を抱えている。体育館の時間枠を借りる、テニスコートに簡易ラインを引いて間借りする、といった「既存施設の流用」が当面の主流で、ピックルボール専用の常設コートはまだ限られている。需要が先行し、供給が後追いになっている点はインドと共通する。

今回のインドの動きが示唆的なのは、市場を立ち上げる主体が必ずしも選手や大会ではなく、床材メーカーという「インフラ供給側」でもありうる、という点だ。コートを面として用意できる事業者が競技団体と組めば、規格を揃えながら一気に拠点を増やせる。日本に当てはめれば、スポーツ床材・施工事業者や、遊休施設を抱える不動産・商業施設の運営者が、競技団体や地域コミュニティと組む形は十分に考えられる。

施設ビジネスの視点で見ると、ピックルボールはテニスより小さい面で済み、初期投資・運営負荷が相対的に軽い。商業施設の空きスペースや、稼働率の落ちた屋内施設を転用する余地は大きい。インドが「学校・住宅・企業キャンパス」という生活動線の近くにコートを置こうとしているのは、専用施設をゼロから建てるより、人が日常的にいる場所に面を差し込むほうが普及が速い、という判断とも読める。日本でマンションの共用部や企業の福利厚生施設、商業施設の屋上などにコートを組み込む発想は、ここから学べる部分がある。

市場への波及

インフラ先行で面が増えると、その周辺に連鎖的な需要が生まれる。ライン引き・床メンテナンスといった施工後の保守、ネットやパドル・ボールの用品供給、初心者向けのレッスンや運営代行、予約・決済のプラットフォーム——コートという「箱」が増えるほど、こうした周辺サービスの市場も立ち上がる。インドで会場予約系の事業者がコート増設に資金を投じているのは、まさにこの連鎖を見越した動きだろう。

日本でも、もし常設コートが面として増えていく局面が来れば、用品流通・施設運営・指導者育成といった裾野のプレーヤーに商機が回る。逆に言えば、コートが増えない限りこれらの市場も本格化しにくい。「どこが最初にコストを負ってコートを増やすか」が、市場全体のボトルネックであり起点でもある、という構造はインドも日本も変わらない。

実用情報:施設運営者・関係者が押さえておきたい視点

今回の動きを自分の現場に引きつけるなら、次のような着眼点が実務的だ。

  • 新設より転用を起点に考える:稼働率の落ちた屋内スペースや既存コートの再利用なら、初期投資を抑えてコートを確保しやすい。
  • 規格を意識する:大会や交流戦を見据えるなら、最初から国際基準に近い寸法・床仕様で組むほうが後から手戻りが少ない。
  • 立地は「生活動線の近く」を優先する:専用施設をゼロから建てるより、人が日常的に集まる場所に面を置くほうが稼働が安定しやすい。
  • 周辺サービスまで含めて設計する:床保守・用品・レッスン・予約の流れをセットで考えると、コート単体より収益の見通しが立てやすい。

よくある質問

Pacecourtが整備するコートの面数は決まっているのですか?

公式発表の時点では、整備する具体的な面数や投資額は明示されていません。打ち出されたのは学校・クラブ・住宅・企業キャンパス等を対象に全国整備を進めるという方針であり、達成済みの実績数とは区別して読む必要があります。なお同社は過去の施工実績として4,000面超(資料内に4,500面超との記載も)を掲げていますが、これは同社による自社主張です。

このニュースは日本のピックルボールにどう関係しますか?

直接の事業上の関係はありません。ただし、競技人口の伸びに対してコートが足りないという課題はインドと日本で共通しており、床材メーカーのような「インフラ供給側」が市場を立ち上げるというモデルは、日本の施設運営者や用品・サービス事業者にとって一つの参照点になります。

ITF認証や施工実績の数字は信頼できますか?

これらはいずれもPacecourtの公式サイト上の自社申告であり、第三者による検証情報ではありません。記事中でも「同社によると」と帰属を付けており、読み手としても割り引いて受け止めるのが妥当です。

まとめ

PacecourtとAIPAの提携は、選手や大会ではなくコートという物理インフラの供給側から市場を立ち上げようとする動きだ。整備の規模はまだ数字として固まっておらず、企業の実績主張も自己申告である点は冷静に見ておきたい。一方で、「需要先行・供給後追い」という構造はインドも日本も共通しており、誰がコストを負ってコートを増やすかが市場全体の起点になる。日本の施設運営者や業界関係者にとっては、生活動線の近くに面を差し込み、周辺サービスまで含めて設計するという発想に、学べる点があるニュースだ。

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【参照元】Pacecourt Partners with AIPA to Build World-Class Pickleball Courts Across India(Pacecourt公式)

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この記事を書いた人

小島 怜のアバター 小島 怜

ベトナム在住3年目のピックルボール愛好家です。高校時代はバドミントン部に所属し、シャトルを追う毎日を過ごしていました。現在はホーチミンの熱気の中、バドミントンの経験を活かしたスピーディーなボレーと、ピックルボール特有の戦略的な駆け引きにどっぷり浸かっています。現地のコート情報や、バドミントン経験者ならではの上達のコツなど、ベトナムのリアルなプレイ環境をゆるく発信していきます!

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