ピックルボールの普及を語るとき、話題になるのはパドルや大会、選手のことが多い。だが実際にコートを開くとき、運営者が最後まで悩むのは「足元」だ。ベーススポーツパフォーマンス合同会社(BASE SPORTS PERFORMANCE)は2026年6月16日、ピックルボール専用に設計した床材タイル「ELITE COURT CONTROL(エリートコート・コントロール)」の販売を開始した。用品ではなく、コートそのものを作る裏方のプロダクトである。専用コートの不足が普及のボトルネックになっている日本にとって、この種の供給側の動きは見落とせない。
専用設計の床材タイルが国内で発売
同社の発表によると、ELITE COURT CONTROL はピックルボール特有の動きに合わせて設計された組み立て式の床材タイルだ。素早いステップや切り返しに対応するグリップ性能、足や膝への負担を抑えるクッション性、そしてボールが自然に弾むバウンド特性を両立させることを狙っている。屋内・屋外のどちらにも施工でき、10色のカラーバリエーションから選べる。設置が短時間で済む点と、5年保証が付く点も特徴として挙げられている。価格は発表時点で公開されていない。
同社は2026年7月8〜10日に東京ビッグサイトで開かれるスポーツ施設の展示会「SPORTEC 2026」(ブースE1-4-40)に出展予定で、そこで実物を踏んで確認できる見込みだ。
なぜ「床」が今クローズアップされるのか
背景には、日本のコート環境がまだ整っていないという事情がある。株式会社ピックルボールワンが2026年4月に実施した3万人規模の調査によると、国内の競技人口は約33万人と推計され、前年の約4.5万人から約7倍に伸びた。一方で、興味・関心を持つ潜在層は約1,189万人とされ、現在の競技人口の約36倍にあたる規模が眠っている。
ところが、プレー環境を見ると、専用コートでプレーしている人は約3割(30.1%)にとどまり、約半数(49.5%)は公共体育館を間借りしている状態だ。競技人口を受け止めるための「箱」が足りていない。バドミントンやバスケットボール用の体育館の床でプレーすると、グリップやボールの弾みが本来の競技感覚とずれる。専用環境が整えば定着と人口拡大が加速すると見込まれるなかで、床材という地味な部材が、実は普及の速度を左右する位置にある。
体育館の床・海外タイルとどう違うのか
ELITE COURT CONTROL が示すのは、ピックルボール市場の関心が「遊ぶ道具」から「遊ぶ場所をつくる部材」へと一段降りてきたことだ。床材には大きく三つの選択肢があり、それぞれ性格が違う。
- 体育館の既存床は他競技向けに設計されており、ピックルボール本来のグリップとバウンドは出しにくい。間借り前提で、常設コートにはしにくい。
- 海外製の専用モジュラータイルは選択肢が増えてきたが、取り寄せ・保証・アフター対応が国外窓口になりやすく、屋外耐久や納期の確認に手間がかかる。
- 国内で供給される専用床材は、仕様を国内で確かめ、保証・補修・追加タイルの発注を国内窓口で受けられる。オープン後に一部が傷んでも交換タイルを早く取り寄せられるかどうかは、運用コストに直結する。
今回発売された ELITE COURT CONTROL は、同社のコート用床材シリーズ「ELITE COURT」の一つとして位置づけられる。シリーズ共通の構造として、表面にグリップと反発を担うTPE素材、土台に安定性と耐久性を持たせるPP素材を使い、衝撃吸収のためのクッション材を組み込む設計が採られている。固定用の専用ツールで床に留められる仕様もあり、屋外での風による位置ずれや盗難を防ぐ工夫がなされている。組み立て式のタイルであるため、既存スペースを短期間でコートに転用でき、傷んだ部分だけを差し替えられる。用品中心だった市場に、床材・施工・保証という耐久財とサービスの層が加わる転換点だ。
施設運営者が床材を選ぶときの着眼点
専用コートを検討する運営者が床材を比較するとき、見るべき軸はおおむね次のように整理できる。発表情報と施設導入の実務観点から、判断ポイントを表にまとめた。
| 項目 | ELITE COURT CONTROL の内容 | 運営者が確認したい点 |
|---|---|---|
| 製品タイプ | ピックルボール専用設計の組み立て式床材タイル | 転用・撤去のしやすさ、保管スペース |
| 設置環境 | 屋内・屋外の両方に施工可能 | 自施設が屋内か屋外か、兼用するか |
| 性能の狙い | グリップ・クッション性・自然なバウンド | 実際の打球感を展示会や試打で確認 |
| デザイン | 10色のカラー展開 | 施設ブランドやライン配色との整合 |
| 保証 | 5年保証 | 屋外利用時の耐久・摩耗の扱い |
| 価格・納期 | 価格は未公開/2026年6月16日発売 | 施工面積ごとの見積もりと施工期間 |
導入判断で実際にネックになるのは、表の数値以外の点が多い。価格が未公開のため、施工面積に応じた見積もりは個別に取る必要がある。オープン日から逆算した施工期間の確保、屋外設置時の固定方法の運用も詰めておきたい。既存のテニスコートや多目的スペースを転用する場合は、施設の用途変更や床材の扱いについて、建築・消防まわりの確認が必要になるケースもある。床材ならではの論点も外せない。屋外なら雨で濡れたときの滑りや夏場の表面温度・反り、屋内なら集合住宅や商業施設で問題になりやすい打球音、そして摩耗した一部だけを交換できる補修性だ。クッション性とバウンドはカタログ数値より打球感のほうが納得につながるため、展示会や試打で実物を踏んで確かめるのが堅い。
日本のプレーヤー・施設にとっての示唆
- 運営者向け:海外ブランドの大型コート進出と国内供給の専用床材が同時に動く今は、仕様を比較しながら設計できるタイミング。自前で小規模に始めるなら、組み立て式タイルが初期投資と撤去リスクを抑えやすい。
- プレーヤー向け:専用床材の選択肢が増えるほど「間借りから常設へ」の流れが進む。公共体育館の予約争奪に頼らず、本来の打球感で打てる環境が増えれば、続ける人が増える。
首都圏では大型インドア施設の整備が進み、首都圏旗艦を構想する動きもある。こうした施設側の構想に床材という部材の選択肢が加わることで、コート開設の実現性は一段上がる。米国系チェーンの日本上陸のような動きが需要の追い風になる一方、裏方の供給が整って初めて、その需要は常設コートとして形になる。
市場への波及
用品から床材へと供給の裾野が広がることは、ピックルボール市場が一過性のブームではなく、設備投資を伴う産業として根を張り始めたサインだ。商品単体の人気が「場づくりの部材・サービス」を呼び込む段階に入ると、市場の厚みが変わる。これは食やイベントの世界でも同じで、Agriture でも食品OEMやノベルティの現場で、人気の高まりが原料・資材・販促ツールといった裏方の供給を動かす局面を見てきた。床材の国内供給は、ピックルボールがその段階に差しかかったことを示している。
よくある質問
ELITE COURT CONTROL は屋外でも使えますか
発表によると、屋内・屋外のどちらにも施工できる仕様です。屋外利用では風による位置ずれを防ぐ固定の工夫もあるとされていますが、耐久や摩耗の扱いは保証条件とあわせて確認することをおすすめします。
価格はいくらですか
2026年6月の発売発表時点では価格は公開されていません。施工面積や仕様に応じた見積もりを個別に確認するのが現実的で、2026年7月のSPORTEC 2026 出展などが実物確認の機会になります。
体育館の床ではなく専用床材を入れる意味はありますか
体育館の床はバドミントンやバスケットボール向けに設計されており、ピックルボール本来のグリップやボールの弾みとはずれが出やすいとされます。専用床材は、その打球感を整えることを狙って設計されています。実際の感触は展示会や試打で確かめるのが確実です。
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