チョコ工場跡27,000sqftが10面コートに——シアトル30面撤去計画と並走するThe Picklr開業

20年にわたりシアトルの食文化を象徴してきたチョコレート工場が、10面のインドアコートを備えるピックルボール専用クラブに生まれ変わった。フリーモント地区North 35th Streetにある旧Theo Chocolate倉庫27,000平方フィート(約2,508平方メートル)に、ユタ州拠点のチェーンThe Picklrが4月4日に開業。一方で同じシアトル市では、市公園局が36面の屋外コート撤去を含む「Racquet Sports Strategy」案を進めており、民間が増設・行政が削減という極めて対照的な構図が同月に表面化した。

目次

ニュースの詳細:チョコ工場跡が10面のインドア施設に

The Picklr Fremontはシアトル北部フリーモントの旧Theo Chocolate旗艦店跡に入居した。建物は1972年築の倉庫で、Theo Chocolateが2025年2月に閉店するまで約20年間使用してきた施設だ。新施設は27,000平方フィートのフロアを使い、選手権規格のチャンピオンシップコート1面を含む計10面を屋内に配置している。

オーナーのRajiv Khatri氏は地元メディアKIRO 7に対し「The Picklrをフリーモントに持ち込めることはコミュニティにとってのゲームチェンジャーだ」とコメント。さらに「5歳から85歳まで同じコートで楽しめる、非常にアクセスしやすく親しみやすい場所」と述べ、年齢を問わない参加機会を強調した。

背景:The Picklrとシアトルの需要

The Picklrは米ユタ州を本拠に、世界60拠点・米国20クラブを運営するインドアピックルボールチェーンだ。2022年以降、北米で急速に拡大しており、フランチャイズと直営の混合モデルで未進出地域に施設を投入している。シアトル都市圏ではフリーモントに続き、Tacoma(タコマ)とFederal Way(フェデラルウェイ)の追加開業も計画されており、太平洋岸北西部での拠点ネットワーク化を狙っている。

シアトルが選ばれた背景には、太平洋岸北西部特有の長雨という気候要因がある。秋から春にかけての降雨日数が多く屋外コートの利用が制限される地域では、屋内専用施設の希少性が高い。その結果、月会費型のクラブ運営が成立しやすい市場として、民間チェーンの参入が加速している。

シアトル市は同時期に36面撤去案——皮肉な構図

The Picklr Fremont開業と並行して、シアトル公園局(Seattle Parks and Recreation)は屋外コートのうち36面を撤去する「Outdoor Racquet Sports Strategy」草案を公表している。コロナ禍にテニスコートへピックルボール用ラインを追記して兼用化していたコートのうち、ライン撤去によりテニス専用へ戻す計画だ。実行されれば市内のピックルボール利用可能コートは現在の92面から56面へ縮小する。

新規コート建設費は1面あたり20〜30万ドルとされ、撤去候補が早ければ2026年6月から運用停止となる一方、新規コート建設のフィージビリティスタディは2027年まで開始予定がない。Seattle Metro Pickleball Associationは「新コート完成までは兼用コートを残してほしい」と求める署名を立ち上げ、2,400筆超を集めて市に再考を促している。

数値で見る対比:民間増設 vs 行政削減

項目The Picklr Fremont(民間)シアトル市(行政)
動き新規10面オープン36面撤去案
場所フリーモント(屋内)市内7地区(屋外)
時期2026年4月4日開業2026年6月以降に実施想定
面積規模27,000平方フィート市内全域
料金年会費メンバーシップ制無料(公共コート)
影響都市部のインドア需要を吸収92面→56面へ約4割減

この表が示す通り、シアトルでは「無料で気軽にプレーできる屋外コート」が縮小し、「会員制・有料の屋内コート」が拡張するという構造変化が同時進行している。プレーヤーにとってのアクセス手段は、公共から民間へ、屋外から屋内へ、無料から有料へとシフトしつつある。

業界・地域の反応

1. オーナーRajiv Khatri氏(The Picklr Fremont)
「10面をシアトル都市圏に持ち込むことで、カジュアルプレー機会を求めるプレーヤーの選択肢が広がる」と地元メディアmyballard.comで述べた。Pickleball 101(無料体験プログラム)、トーナメント、リーグ、クリニックを併設し、新規参入者の取り込みを重視する運営方針を打ち出している。

2. Seattle Metro Pickleball Association
協会は市の撤去案に対し「コロナ禍で得られた競技人口を行政が放棄するに等しい」と批判。署名を主導し、West Seattle BlogやKomoNewsの取材で「新規コート完成までの暫定維持」を要求している。

3. 全米メディアThe Dink Pickleball
シアトルの撤去案を「全米のピックルボール都市計画における試金石」と位置付け、「テニス専用化への揺り戻しが他都市にも波及する可能性」と分析した。同メディアは民間チェーンの拡大が公共削減を加速させかねない構図にも言及している。

日本のピックルボール業界が読み取るべきポイント

シアトルで起きている「行政削減と民間増設の同時進行」は、日本でも遠からず直面する論点になり得る。日本では学校体育館・公民館・廃校活用が中心で、専用屋内施設はまだ少ない。シアトル型の民間チェーンモデル(年会費制・10面以上の大箱)が日本に上陸した場合、自治体コートとの棲み分け・利用層分化がそのまま再現される可能性がある。

特に注視すべきは「兼用コートの取り扱い」だ。日本ではテニスコートやバドミントン・体育館へのライン追記による暫定運用が広がっているが、テニス側からの専用化要求が顕在化した場合、シアトルと同じ削減論議に直面する。プレーヤー団体の組織化・データに基づく利用実績の提示が、日本でも先回りして必要になる。

業界への波及:民間チェーンの「居抜きインドア」モデル

The Picklrのフリーモント案件は「都市部の遊休大型物件をインドアコートに転用する」モデルの代表例だ。チョコレート工場・倉庫・スーパー跡地・ボウリング場など、20,000〜40,000平方フィート級の大箱が居抜きで活用できれば、新築コストを大きく圧縮できる。北米ではShopRite跡地・Sears跡地などへの転用も進んでおり、リテール衰退とピックルボール拡大が交差する形になっている。

日本でも商業施設の閉店跡・倉庫・物流施設の二次活用を検討する事業者にとって、この「居抜きインドア」モデルは参考価値が高い。スコッツデールのThe Picklr案件などと比較すると、フリーモント案件は工場跡という稀少物件を活かした事例として位置付けられる。

The Picklr Fremont 実用情報

項目内容
施設名The Picklr Fremont
所在地シアトル・フリーモント地区 North 35th Street
面積27,000平方フィート(約2,508平方メートル)
コート数10面(うちチャンピオンシップ規格1面)
オープン日2026年4月4日
運営者Rajiv Khatri氏(フランチャイジー)
提供プログラムPickleball 101(無料体験)、トーナメント、リーグ、クリニック、トレーニング
会員制度年会費制メンバーシップ、ジュニア・ファミリーパスあり
建物履歴旧Theo Chocolate旗艦店倉庫(1972年築、2025年2月閉店)
同チェーン拡大予定Tacoma、Federal Way

まとめ:プレー機会の「再分配」が始まる

The Picklr Fremontの27,000平方フィート・10面開業は、単なる施設オープンではなく「公共から民間へ、屋外から屋内へ、無料から有料へ」というアクセス手段の再分配を象徴する出来事だ。シアトル市の36面撤去案と同じ4月に発生したことで、その対比が鮮明に浮かび上がった。

日本のピックルボール関係者にとっては、行政コート・兼用コート・民間専用施設の三層構造をどう設計するか、また民間チェーンの上陸に対しどのように地域コミュニティと折り合いをつけるかが、これから問われていくテーマとなる。シアトルの動きは、その先行事例として継続的に観察する価値がある。シアトル36面撤去案の続報と、日本国内のインドア施設動向もあわせて参照したい。

引用元・参考ソース

  • Fox 13 Seattle「From chocolate to pickleball: Seattle’s massive indoor courts open in Fremont」
    https://www.fox13seattle.com/news/indoor-pickleball-courts-fremont-seattle
  • KIRO 7 News「’A game-changer for our community’: New 10-court pickleball club brings the heat to Fremont」
    https://www.kiro7.com/news/local/game-changer-our-community-new-10-court-pickleball-club-brings-heat-fremont/UVPT2LQCBZFSFJ5TRAKAE2CIBY/
  • The Dink Pickleball「Seattle Proposal Could Remove 30+ Pickleball Courts」
    https://www.thedinkpickleball.com/seattle-proposal-could-remove-30-pickleball-courts/
  • Pickleball.com「Seattle Parks and Recreation proposes eliminating 36 outdoor pickleball courts」
    https://pickleball.com/news/seattle-parks-and-recreation-proposes-eliminating-36-outdoor-pickleball-courts
  • MyBallard.com「The Picklr to open Fremont indoor pickleball facility April 4」
    https://www.myballard.com/2026/04/01/the-picklr-to-open-fremont-indoor-pickleball-facility-april-4/
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この記事を書いた人

ベトナム在住3年目のピックルボール愛好家です。高校時代はバドミントン部に所属し、シャトルを追う毎日を過ごしていました。現在はホーチミンの熱気の中、バドミントンの経験を活かしたスピーディーなボレーと、ピックルボール特有の戦略的な駆け引きにどっぷり浸かっています。現地のコート情報や、バドミントン経験者ならではの上達のコツなど、ベトナムのリアルなプレイ環境をゆるく発信していきます!

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