ベトナム最大の商業都市ホーチミンに、プロツアーが帰ってくる。PPA Tour Asiaは2026年8月6日から9日まで、市内の複合開発地区グローバルシティで「MB Ho Chi Minh City Open」を開催する。冠に就くのは軍系大手のMB銀行(Military Commercial Joint Stock Bank)で、同行にとってPPAアジアとの提携はこれで4大会連続となる。プロ・アマ両部門で参加登録も始まった。金融機関が競技の興行インフラを丸ごと支える構図は、コート不足とスポンサー探しに悩む日本のプレーヤーにとっても他人事ではない。
ホーチミンに戻るPPA、冠は再び軍系銀行
大会の正式名称は「MB Ho Chi Minh City Open」、格付けはPPA Asia 500。会場のグローバルシティは、300席超の観客席を備えた国際規格の屋外コートと、空調完備のアリーナを持つスポーツ複合施設だ。同じ会場では2025年9月に「MB Vietnam Open」が開かれており、ホーチミンはすでにPPAアジアの定番開催地になりつつある。今回の再上陸で、その定着が一段はっきりした。
プロ部門はランキングポイントを、アマ部門はメダルを争う。年齢別カテゴリーも複数用意され、競技歴の浅い一般プレーヤーも同じ大会の枠内で試合ができる設計になっている。プロの興行とアマの参加型イベントを一つの器に同居させる作りは、PPAアジアがベトナムで繰り返し採ってきた型でもある。
「4大会連続」が意味するもの
注目したいのは、MB銀行がこの大会をきっかけに突然スポンサーになったわけではない点だ。同行は2025年の「MB Vietnam Open」(ホーチミン)と「MB Vietnam Cup」(ダナン)、そして2026年4月にハノイで開かれた「MB Hanoi Cup」と、PPAアジアの主要大会に冠として名を連ね続けてきた。今回のホーチミン大会が4大会連続の後ろ盾になる。単発のイベント協賛ではなく、ツアーそのものに継続して資金を入れる立ち位置だ。
MB銀行はベトナム国防省傘下として1994年に設立された商業銀行で、軍需企業向けの資金調達を起点に、いまは証券・保険・消費者金融まで抱える総合金融グループへ育った。通信大手Viettelが戦略株主に名を連ねる。その規模の金融機関が、まだ競技団体も興行主も体力の薄い新興スポーツに、繰り返し冠スポンサーとして張り付いている。ここにベトナム特有の事情が透けて見える。
大会格付けと規模を並べて読む
MB銀行が支えてきた各大会の格を並べると、ツアーの重心が見えてくる。数字はいずれもPPAアジアおよび現地報道で確認できたものに限った。
| 大会 | 開催地 | 格付け・規模 |
|---|---|---|
| MB Vietnam Cup 2025 | ダナン | 賞金総額US$150,000/約600人参加 |
| MB Hanoi Cup 2026 | ハノイ | PPA Asia 1000/賞金最大US$300,000 |
| MB Ho Chi Minh City Open 2026 | ホーチミン | PPA Asia 500 |
ハノイのHanoi Cupが最上位格の1000ポイント大会、今回のホーチミンが500ポイント大会という位置づけだ。首都で最大級の看板大会を張り、商業都市で中規模大会を回す。冠は一貫してMB銀行が務める。一つの金融機関が国内の複数都市でツアーの骨格を組んでいるとわかる。
現地・業界の受け止め
MB銀行のマーケティング責任者は今回の再協賛にあたり、世界水準のスポーツ体験をベトナムの観客に近づける長期的な取り組みだと位置づけ、豊かさは金銭的な成功だけでなく生活の質の体験にも及ぶという銀行の理念を重ねた。金融ブランドがスポーツを通じて生活文化に食い込もうとする姿勢がにじむ。
ツアー運営側は、同じ会場での大会を重ねることでホーチミンをアジアの定番開催地として押し出す。現地のプレーヤー層からは、プロの試合とアマの参加枠が同居する大会形式が競技人口の裾野を広げているとの見方が出ている。プロを間近で見て、翌日には自分がコートに立てる。この距離の近さが新興競技の勢いを後押ししているという受け止めだ。
日本のプレーヤー・関係者への示唆
ベトナムの構図を裏返すと、日本のいまの課題がくっきりする。日本では大会の冠に配信企業やメーカーが付き始めた段階で、金融機関がツアー全体を継続して支える例はまだ乏しい。東京で世界最高峰ツアーが立川で開幕し、配信企業がプロ選手を抱えて大会に乗り込むといった興行の芽は出てきたが、ベトナムのように「一つの大資本が複数都市の大会を年間で回す」構造にはまだ届いていない。
日本のプレーヤーにとっての実利は二つある。一つは、8月のホーチミン大会がアマ部門と年齢別カテゴリーを開放している点だ。アジア圏のPPA公式大会で実戦を積みたい市民プレーヤーにとって、渡航して参加できる現実的な選択肢になる。もう一つは、国内で大会を立ち上げたい層への示唆だ。競技団体単独ではなく、地域に根ざした大資本を長期の冠に据える設計が、興行を安定させる近道になり得る。ベトナムはそれを金融機関で実証している。
市場への波及と、日本勢の距離感
MB銀行が繰り返し冠に就く背景には、ベトナムでのピックルボールの急拡大がある。首都ハノイでのHanoi Cupには800人近い選手が登録し、ダナンのVietnam Cupには約600人が集まった。競技人口の伸びが観客とスポンサー価値を生み、その価値が金融機関を呼び込む。この循環が国内複数都市で同時に回り始めている。日本勢もPPAアジアの舞台に挑み始めており、北京大会などアジアの上位大会で世界の壁と向き合う段階に入った。ベトナムが作った興行の受け皿は、日本の選手が海外で試合数を稼ぐ場としても機能し始めている。
参加を検討する人への実用情報
ホーチミン大会の会場グローバルシティは市内の複合開発地区にあり、屋外の国際規格コートとアリーナを併設する。プロ・アマ両部門と複数の年齢別カテゴリーで登録を受け付けている。海外大会への参加を考えるなら、渡航・宿泊の手配とあわせて、部門や年齢区分の要件を公式の登録ページで早めに確認しておきたい。国内でPPAアジアの空気感を掴んでおきたい人は、東京や北京で開かれた最近の大会の報道を追っておくと、当日の運営や競技レベルの見当がつく。
まとめ
ホーチミンへのPPA再上陸は、単なる大会追加ではない。軍系大手MB銀行が4大会連続で冠に就くことで、金融機関が競技の興行インフラを継続的に担うベトナム型の構造が、より鮮明になった。日本のプレーヤーにとっては、アジア圏の公式大会に挑む実戦の場が一つ増えたということだ。まずは8月大会の部門・カテゴリー要件を公式ページで確認し、渡航参加が現実的かを見極めること。そして国内で大会運営に関わる立場なら、地域資本を長期の冠に据えるベトナムの設計を、自分たちの興行に引き寄せて考える価値がある。

