北海道・留寿都村のルスツリゾートが2026年6月27日、元サッカー日本代表の北澤豪を招いて「サッカー教室&ピックルボール体験」を開いた。会場は北海道初のピックルボール日本連盟公認コートとして4月末に始動したルスツの専用8面で、対象は地元の小学3〜6年生36名。サッカーの著名人がコートに立ち、子どもたちに旧来の競技と新競技を続けて教えるこの一日は、国内でピックルボールをどう根づかせるかという問いに、実務的な答えを一つ示している。施設運営者やスポンサー探しに動く関係者が見るべきは「誰を、どの企業の資金で、どこに立たせたか」という構図だ。
元代表がサッカーと新競技を続けて教えた2時間
体験会は同日15時から17時まで。受付はルスツリゾートホテル ノースウイング2階のアクティビティデスクで14時半から始まり、参加費は1人2,000円(税込)とした。プログラムは北澤によるサッカー指導と、その流れでのピックルボール体験を一続きに構成し、体を動かす楽しさとチームで協力する感覚を子どもに持ち帰らせる狙いだった。
参加者には北澤のサイン入りサッカーボールが贈られた。屋外の専用8面が主会場だが、悪天候の場合は屋内仮設コート(ルスツアリーナ)に切り替える運用で、山あいのリゾートで屋外競技を売る難しさに現実的な保険をかけている。持ち物は動きやすい服装とランニングまたはフットサルシューズで、スパイクは不可。芝ではなく舗装されたハードコートで行う競技だという前提が、こうした細部にも表れている。
なぜ舗装会社が体験会を支えるのか
この企画の特別協賛は、東亜道路工業株式会社と一般財団法人ピックルボール日本連盟(PJ)だった。東亜道路工業は東証プライム上場(証券コード1882)の独立系道路舗装大手で、アスファルト乳剤では国内最大手。景観・スポーツ施設の設計施工も手がけ、通期の売上高は1,270億円規模を見込む会社だ。舗装会社がなぜ小学生の体験会に名を連ねるのか、という違和感の答えは、コートそのものにある。
ルスツの8面は東亜道路工業が施工を担当し、同社が自社開発した屋外コート専用の表層カラー材「ピックルカラーテックス」を使っている。赤・青・緑の標準3色に特注色も加えられる製品で、同社は2024年12月にピックルボール日本連盟とスポンサー契約を結んでいる。つまりコートを敷く会社が、競技の普及そのものに投資している。国内の競技人口は当サイトが以前報じたように33万人規模、潜在層は1,189万人と試算される初期市場で、コートが増えれば増えるほど施工の受注機会が広がる。舗装会社にとって普及支援は社会貢献であると同時に、最も筋の通った先行投資でもある。
体験会の基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 名称 | サッカー教室&ピックルボール体験 |
| 日時 | 2026年6月27日(土)15:00〜17:00(受付14:30〜) |
| 会場 | ルスツリゾート ピックルボールコート8面(悪天候時はルスツアリーナ) |
| ゲスト | 北澤豪(元サッカー日本代表) |
| 対象・定員 | 小学3〜6年生/36名 |
| 参加費 | 2,000円(税込) |
| 特別協賛 | 東亜道路工業、ピックルボール日本連盟(PJ) |
立場ごとに違う「得るもの」
一つの体験会に集まった当事者は、それぞれ違う果実を狙っている。
- 地域の子ども・保護者——サッカー日本代表として名の通った指導者に直接教わり、まだ触れる機会の少ない新競技を無料に近い負担で体験できる
- ルスツリゾート——夏のアクティビティに競技体験を組み込み、家族連れの滞在動機を一つ増やす。8面のコートを季節営業の集客装置として回す
- 東亜道路工業——施工実績のあるコートを使ったイベントで自社の表層材と技術を露出させ、次のコート受注につなげる
- ピックルボール日本連盟——公認コート網を広げ、子ども世代への入口を各地に作る足がかりとする
著名元アスリート起用が普及に効く三つの理由
国内のプレーヤーと施設運営者にとって、この体験会が持つ示唆は三つある。
第一に、著名な元アスリートは競技の「入口」を作る。ピックルボールは認知率がまだ低い初期市場で、子どもを送り出す保護者にとって「聞いたことのない競技」は心理的な壁になる。そこに北澤豪という広く知られた名前が立つだけで、体験会は「見知らぬスポーツの勧誘」から「代表選手のサッカー教室のついで」に変わる。競技そのものの知名度不足を、人物の知名度が肩代わりする構図だ。北澤は現在も日本サッカー協会参与や日本フットサル連盟会長を務め、駒沢では未就学児から小学生までのスクールを続けており、子ども向けの指導者としての実績も揃っている。
第二に、コートを敷く企業が普及に投資する垂直の構図が、日本ならではの推進力になっている。米国ではSNS発の草の根拡大が主役だったが、日本では設備側の企業が需要そのものを育てにかかる。名刺管理のSansanが元テニスプロを迎えて自前のコートで普及を仕掛けた例と同じく、東亜道路工業もまた、自社の事業と地続きの場所で競技の裾野を広げている。設備・人材・イベントの三つを一社ないし数社が束ねられれば、普及の速度は個人の熱意任せより読みやすくなる。
第三に、リゾートと季節営業の相性だ。ルスツのコートは4月末から10月下旬までの季節営業で、冬はスキー客に転じる立地にある。屋外競技を通年で回せない土地でも、限られた営業期間に体験会や大会を集中させれば、遠征需要と地元需要の両取りが狙える。北海道という遠隔地でコートを持つ意味を、著名人イベントが一日で証明した形だ。
ルスツ8面コートの基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 面数 | 8面(北海道初のピックルボール日本連盟公認専用コート) |
| 営業期間 | 2026年4月29日〜10月25日 |
| 営業時間 | 8:30〜日没(受付は16:30まで) |
| 施工 | 東亜道路工業(表層材「ピックルカラーテックス」使用) |
| 所在地 | 北海道虻田郡留寿都村 ルスツリゾート |
まとめ——次に確かめるべきこと
北澤豪の体験会は、著名人・協賛企業・リゾートという三者が噛み合ったときに、初期市場のピックルボールがどう広がるかを地方で実演してみせた。国内の施設運営者がここから追うべきは三点だ。第一に、この一日を経てルスツが夏の間にどれだけ体験会や大会を積み増すか。第二に、東亜道路工業がルスツに続くコート施工をどの地域で受注するか。第三に、他競技の元アスリートを起用した子ども向け体験会が各地で増えるかどうかだ。コートを敷く会社が普及に投資する型が回り始めた以上、次にどのリゾートや自治体が同じ絵を描くかは、公認コートの新設ニュースを追っていれば兆しが見えてくる。まずは自分の地域で稼働し始めたコートが、誰の資金で敷かれたのかを確かめてみてほしい。

