ホテル・商業施設がピックルボールを「集客装置」に位置づけ始めた
日経アジアは2026年5月2日付の特集記事で、日本国内のホテルや商業施設がピックルボールコートを相次いで導入している動向を報じた。品川プリンスホテルが宴会場の一部を転用してコートを開設した事例を軸に、宿泊施設・リゾート・都市型商業ビルでの導入が「本業との相乗効果を狙った経営判断」として広がっている実態を伝えている。
国内のピックルボール競技人口は急拡大を続けており、東京都内の常設専用コートはまだ4カ所にとどまる。施設不足を商機と捉えた事業者が、既存のスペースを活用して参入する流れが加速している。
品川プリンスホテル「SEIBU FAST SPORTS FIELD」の全容
品川プリンスホテルは2026年3月23日、メインタワー10階に「SEIBU FAST SPORTS FIELD 品川ピックルボール」をオープンした。宴会場の一画を転用した屋内コート1面(幅5.2m×長さ13.4m)で、最大8名まで利用できる。運営は株式会社西武メディア・コミュニケーションズが担う。
料金は1コマ50分制で、平日日中8,000円、平日夜間・土休日11,000円。パドルやシューズのレンタル(各500円)も用意されており、手ぶらでの利用が可能だ。品川駅から徒歩圏内というアクセスの良さから、出張ビジネスパーソンやインバウンド旅行者の利用も見込む。
ホテル・リゾートから都市型施設まで――導入事例の広がり
ピックルボールコートを導入した施設は、品川プリンスホテルだけではない。北海道・ルスツリゾートは専用コート全8面を整備し、2026年4月29日から10月25日までのシーズン営業を開始した。北海道初の専用コートとして、リゾート滞在者に新たなアクティビティを提供している。
都市部では、東京タワーフットタウン屋上にコートが常設され、2025年7月のオープン以来予約が埋まり続けている。2025年11月には平和不動産が新橋に都市型インドア施設「PICKLEBALL ONE GINZA SHIMBASHI」を開業し、上層階のホテル「メルキュール東京日比谷」との連携で宿泊・スポーツ体験の一体化を図った。
さらに、Sansan株式会社は2026年7月に池袋で屋内3面・屋外4面・ジム併設の大型専用施設「Sansanピックルボールコート池袋」を開業予定だ。名刺管理SaaS企業がスポーツ施設を運営するという異業種参入は、ピックルボール市場の注目度を象徴している。
国内の主要ピックルボール施設一覧
| 施設名 | 所在地 | コート数 | 開業時期 | 特徴 |
|---|---|---|---|---|
| SEIBU FAST SPORTS FIELD 品川 | 東京都港区(品川プリンスホテル内) | 1面 | 2026年3月 | ホテル宴会場転用、手ぶら利用可 |
| ルスツリゾート | 北海道留寿都村 | 8面 | 2026年4月 | 北海道初の専用コート、シーズン営業 |
| 東京タワーピックルボールコート | 東京都港区(東京タワー屋上) | 常設 | 2025年7月 | ナイター営業あり、ランドマーク立地 |
| PICKLEBALL ONE GINZA SHIMBASHI | 東京都港区新橋 | インドア | 2025年11月 | ホテル併設型、都市型インドア施設 |
| Sansanピックルボールコート池袋 | 東京都豊島区池袋 | 屋内3面+屋外4面 | 2026年7月予定 | SaaS企業参入、ジム併設 |
| VIPインドアピックルボールクラブ | 東京都江東区東陽町 | 3面 | 営業中 | 高木工業運営、テニスコーチ指導 |
業界関係者の反応――「ピックルボールは不動産の新しい集客エンジン」
世界最大のインドアピックルボールフランチャイズ「The Picklr」のCEO ホルヘ・バラガン氏は、日本市場について「単なる一市場ではなく、アジア展開の発射台だ」と語っている。同社は日本ピックルボールホールディングスとのマスターフランチャイズ契約を締結し、東京を皮切りに5年間で国内20施設の開業を計画している。
ピックルボールワンは2026年4月にアシックス・電通・三井不動産など5社連合を結成。コート運営だけでなく、用品・メディア・不動産が一体となった「エコシステム型」の事業展開を進めている。同社は東京に20面以上の日本最大級フラッグシップコートの構想も明らかにしており、市場の本気度がうかがえる。
Sansan株式会社はピックルボールワンへの出資も実施。名刺管理プラットフォームの法人ネットワークを活かし、企業研修やビジネス交流の場としてもコートを活用する意向を示している。
プレーヤーにとっての意味――コート不足の解消は進むか
東京都内の常設専用コートが4カ所という現状は、競技人口の増加ペースに対して明らかに不足している。今回の施設ラッシュが実現すれば、2026年後半には都内だけで10カ所以上の専用施設が稼働する見込みだ。
ただし、ホテルや商業施設内のコートは1面あたり50分8,000〜11,000円と、テニスコートの公共施設レンタル(1〜2時間1,000〜3,000円程度)に比べて割高な設定が多い。施設の質とアクセスの良さをどう評価するかは、プレーヤーの目的やレベルによって分かれるだろう。
「スポーツ×不動産」の波及効果
今回のトレンドは、ピックルボール単体の話にとどまらない。ホテルにとっては宴会需要が減少するなかでの遊休スペース活用策であり、商業施設にとっては滞在時間を延ばすための「体験型テナント」の選択肢となっている。
The Picklrが対象とする施設形態に「小売・オフィス・軽工業スペース」が含まれている点は注目に値する。ピックルボールコートは天井高と一定の面積さえ確保できれば設置可能であり、用途変更のハードルが比較的低い。空きテナント問題を抱える地方商業施設にとっても、有力な転用候補となり得る。
The Picklrの展開予定地には東京・大阪だけでなく、福岡・北海道・沖縄・広島・宮城も含まれており、地方都市への波及も視野に入っている。
これからコートを探す人のための実用情報
| 施設 | 料金目安 | 予約方法 | レンタル | アクセス |
|---|---|---|---|---|
| 品川プリンスホテル | 8,000〜11,000円/50分 | Web予約 | パドル・シューズ各500円 | 品川駅徒歩2分 |
| ルスツリゾート | リゾート利用者向け | 施設直接 | あり | 新千歳空港から車90分 |
| 東京タワー | 要確認 | Web予約 | あり | 赤羽橋駅徒歩5分 |
| PICKLEBALL ONE 新橋 | 要確認 | Web予約 | あり | 新橋駅徒歩3分 |
| VIPクラブ東陽町 | レッスン形式 | Web予約 | あり | 東陽町駅徒歩圏 |
まとめ
日経アジアが報じた「ホテル・商業施設へのピックルボール導入」は、一過性のブームではなく、不動産・ホスピタリティ業界が本腰を入れた構造的な動きだ。品川プリンスホテルの宴会場転用、The Picklrの20施設計画、Sansanの異業種参入――それぞれの事業者が異なる動機でピックルボールに投資している事実が、この市場の奥行きを物語っている。
コート不足に悩んできたプレーヤーにとっては朗報だが、施設の増加がそのまま競技人口の底上げにつながるかは、料金設定と立地のバランスにかかっている。2026年後半に相次ぐ新規開業の動向を、引き続き追いかけていきたい。
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よくある質問
日本でピックルボールができるホテルはどこですか?
2026年5月時点では、品川プリンスホテル(東京)とルスツリゾート(北海道)が専用コートを備えています。新橋のPICKLEBALL ONE施設は上層階のメルキュール東京日比谷と連携しており、宿泊とセットでの利用が可能です。
東京都内のピックルボール専用コートは何カ所ありますか?
2026年5月時点で常設専用コートは約4カ所ですが、7月にSansanピックルボールコート池袋が開業予定で、年内にさらに増える見込みです。
品川プリンスホテルのコートは初心者でも利用できますか?
パドルとシューズのレンタル(各500円)があり、手ぶらで利用できます。ただしコーチングサービスは併設されていないため、経験者と一緒に行くか、事前に基本ルールを覚えておくとスムーズです。
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