米国のプロ団体戦リーグ Major League Pickleball(MLP)のシカゴ大会最終日、2026年7月26日にダラス・フラッシュがブルックリン・ピックルボール・チームを下した。11連勝、そして2週連続でスーパーサンデー・ベルトを持ち帰った。ところがレギュラーシーズンを走り終えたダラスの順位は4位で、しかも最終的には6位に落ちる見込みだと Pickleball.com は書いている。勝ち続けても順位が上がりきらないポイント表の仕組みは、団体戦リーグを日本で設計する側にとって、試合内容より先に読むべき部分だ。
これはコロンバス戦とは別の一戦
本サイトは先に、ダラスがコロンバス・スライダーズを破った試合を伝えている(同じ街で晴らした1年越しの雪辱、ダラスが宿敵コロンバスを撃破)。今回は相手も大会も別で、7月23〜26日にイリノイ州ノースブルックで行われたMLPシカゴの決勝、対戦相手はブルックリンだ。同じ「ダラスの雪辱」でも中身が違うので、混同しないでほしい。会場はライフタイムのノースショア施設で、米国のフィットネス大手がピックルボールのコートに投じている資本の規模は別稿でも扱った(ライフタイムが28面の巨艦、米国の施設投資は別次元へ)。
4種目を2-2で分け合い、勝負はドリームブレイカーへ
MLPの1試合は女子ダブルス、男子ダブルス、混合ダブルス2試合の計4種目で争われ、2勝2敗で並ぶと第5戦のドリームブレイカーに入る。この日はダラスが女子ダブルスと2つ目の混合を取り、ブルックリンが男子ダブルスと1つ目の混合を取った。ブルックリン側の勝ち星はレイチェル・ローラバッカーとクリスチャン・オルションが、ダラスの2つ目の混合はダニエル・タウンゼンドとオージー・ゲが挙げている。
ドリームブレイカーの冒頭で流れを作ったのはJWジョンソンだった。PPAツアーの男子シングルス1位、クリス・ヘイワースを相手に4-0のローテーションで押し切っている。最上位のシングルス選手を序盤に封じたことが、そのまま点差になった。ダラスは21-10で勝ち切り、2週連続で25標準ポイントを積んだ。
この相手には今季、MLPニューヨークで同じドリームブレイカーに持ち込まれ、19-11とリードしながら逆転を許していた。同じ形式で、今度は11点差をつけて返したことになる。
3種目に出たタウンゼンドと、6人全員を使う制度
この試合で目立ったのはオーストラリアのタウンゼンドだ。ダブルス2試合を勝ち、ドリームブレイカーではジャッキー・カワモトから決着の1点を奪った。本人は「アメリカにいられて最高だし、それを最大限に生かしている」(原文 “I’m just stoked to be here in America and making the most of it.”)と話し、自分はまだ毎日うまくなっている、観客の存在が支えになる、という趣旨も語っている。
1人の選手が3種目に出られるのは、2026年から先発と控えの区分が消え、6人のロースター全員が起用対象になったからだ。ドリームブレイカーに送り出す4人も、ダブルスでの交代に関係なく男女2人ずつを自由に選べる。調子のいい選手にその日の出番を寄せられる設計になっている。エース1人では団体戦を勝ち切れない構造は以前も書いたが(世界最上位でも11-1、ベン・ジョンズの惨敗が示すエース1人の限界)、この日は逆に、調子のいい1人に出番を集められる制度が効いた形になった。
11連勝でも4位、順位表の算数
The Dink が最終週前にまとめた順位表と、Pickleball.com の記述を突き合わせると、勝ちの量と順位が噛み合っていない理由が見える。
| チーム | 標準ポイント | 消化大会 | 1大会あたり |
|---|---|---|---|
| ニュージャージー・ファイブス | 93 | 4 | 23.3 |
| セントルイス・ショック | 93 | 4 | 23.3 |
| コロンバス・スライダーズ | 83 | 5 | 16.6 |
| ダラス・フラッシュ | 72 | 5 | 14.4 |
| ロサンゼルス・マッドドロップス | 71 | 4 | 17.8 |
| ブルックリン・ピックルボール・チーム | 66 | 4 | 16.5 |
各チームのレギュラーシーズンは5大会。ダラスは5大会を終えて72ポイントで打ち止めだが、LAとブルックリンには最終戦のオーランドが残っている。優勝すれば25ポイントが入るので、LAは2ポイント取ればダラスを抜き、ブルックリンも7ポイント取れば上回る。だから Pickleball.com は、ダラスがレギュラーシーズンを6位で終える見込みだと書いた。
1大会あたりの数字を見ると、ダラスの14.4は表の中でいちばん低い。11連勝を含む後半に25点を2回積んでも平均が上がらないのは、序盤の3大会で取りこぼしていたからだ。年間の順位表は、シーズン終盤の勢いをほとんど拾ってくれない。上位12チームがプレーオフに進み、上位4シードは1回戦を免除される。1回戦に出る中で最上位の5シードが9〜12位から対戦相手を選び、以降6・7・8シードが順に指名する。同点の場合は試合勝率、次にゲーム勝率で並び順が決まる。ダラスは絶好調のままシード争いの外側で待つことになる。
この結果を関係者はどう置いたか
Pickleball.com の記事を書いたウィル・ドートンは、11連勝と2大会連続のベルトという達成を見出しに置きつつ、本文では順位が6位に落ちる見通しを併記している。勝ち星の話と順位の話を切り分けて書いた形だ。The Dink は最終週のプレーオフガイドで、12番目の枠に届く目安を31ポイント前後と見積もり、同点時のタイブレークまで示している。下位の駆け込みと上位のシード争いが同時に動く週だという整理だ。
選手側の言葉は、順位表とは別のところにあった。タウンゼンドは会場の空気を勝因に挙げ、まだ伸びている最中だと語っている。3種目に出て全部に絡んだ選手の実感が、平均ポイントの話に回収されないのは当然でもある。
日本のリーグ設計に効く「消化ペース」の問題
日本で企業チーム制の団体戦リーグを組むとき、順位の付け方は往々にして後回しになる。だがMLPの例が示すのは、全チームが同じ数の大会を消化し終えるまで、順位表は順位を意味しないということだ。ダラスの4位は暫定であり、残り試合数の違いを補正しないまま公表されている。参加企業が広報にこの表を使えば、翌週には訂正が必要になる。
解決策は難しくない。消化数を必ず併記するか、1大会あたりの平均で並べた表を同時に出すか、どちらかで足りる。逆に、暫定順位のまま出す不確かさを演出として使う道もある。最終戦まで誰がシードを取るか分からない状態は、それ自体が集客の材料になる。どちらを取るかは、リーグが誰に向けて数字を出しているかで決まる。
もう一点、日本のリーグが真似しにくいのが5大会という構造だ。20球団が各5大会に出る回り持ち方式は、球団数が多いから成立する。国内でチーム数が一桁の段階では、総当たりの方が公平で説明もしやすい。MLPの方式を輸入するなら、まずチーム数を増やす順序になる。
次の日程と観戦の手がかり
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 今回の大会 | MLPシカゴ(2026年7月23〜26日) |
| 会場 | Life Time North Shore(米イリノイ州ノースブルック) |
| 決勝の結果 | ダラス・フラッシュがブルックリンをドリームブレイカー21-10で撃破 |
| ダラスの記録 | 11連勝/2週連続のスーパーサンデー・ベルト/25標準ポイント |
| 最終レギュラーシーズン戦 | Amway MLP Orlando(7月30日〜8月2日) |
| プレーオフ1回戦 | ダラス(8月6〜9日)/5〜12シードが出場 |
| プレーオフ出場枠 | 上位12チーム。上位4シードは1回戦免除、5シードが9〜12位から相手を指名(以降6・7・8が順に) |
| 同点時のタイブレーク | 試合勝率、次にゲーム勝率 |
| 準決勝・決勝 | ニューヨーク |
まとめ
ダラスの21-10は、同じ形式で19-11から取りこぼした相手に対する明快な返答だった。それでも順位表の位置は動かず、決めるのは来週プレーしている他球団だ。この非対称は、リーグの制度が勝ち星ではなく大会単位で価値を配っている以上、避けようがない。国内でリーグや大会シリーズを運営しているなら、順位表を公表する前に消化数の併記を仕様に入れてしまうのが早い。観戦する側は、7月30日開幕のオーランドでLAとブルックリンが何点積むかを見れば、ダラスの最終シードがその場で確定する。プレーオフ1回戦は8月6日からダラスで始まる。
参照元:Pickleball.com/Pickleball.com(MLPシカゴ)/The Dink Pickleball(プレーオフガイド)/The Dink Pickleball(2026年ルール)/The Kitchen Pickleball

