株式会社ティップネスが、東武スカイツリーライン草加駅西口すぐの草加TIP’S 6階に、ピックルボールコートを1面つくる。開業は2026年11月17日で、24時間営業・年中無休。WEB予約と事前決済を済ませた人が、受付を通らず無人の入館ゲートからコートに入る。料金は平日0〜18時が1面1時間4,950円、平日18〜24時と土日は終日7,480円。人数は問わず1面単位で課金し、パドルとボールは無料で貸す。10月2日のリリースにそう書かれている。
コートは縦11m×横6.1m。公式規格より縦が2.4m短い初心者向けの短縮規格だ。全国にフィットネスクラブを展開する会社が選んだのは、7面や20面の専用施設ではなく、既存ビルの1フロアに収まる短縮規格の1面と、受付を置かない運用だった。豊洲や東伊豆で進む多面化とは、はっきり逆の方向を向いている。
開業は11月17日、平日昼は1面1時間4,950円で夜と土日は7,480円
場所は埼玉県草加市氷川町2127-13、草加TIP’Sの6階。ティップネスが運営する「MiiBA」という業態の草加店に、コートを足す形になっている。MiiBAは24時間ジムを軸に、カフェ、ワークスペース、ピラティス、ビューティーを同じ建物に入れた施設で、草加店はこの5つがそろう。つまりコートは、ゼロから建てた専用施設ではなく、すでに人が出入りしているビルの上階に差し込まれた1区画だ。
| Time slot | 料金(1面1時間) | 4人で割った場合 |
|---|---|---|
| 平日 0〜18時 | 4,950円 | 約1,238円 |
| 平日 18〜24時 | 7,480円 | 1,870円 |
| 土日 終日 | 7,480円 | 1,870円 |
料金はティップネスの発表値。1人あたりの額は4で割っただけの計算値で、発表されたものではない。MiiBAの会員には割引が適用されるが、その額はリリースに書かれていない。予約と決済はMiiBAのマイページから行い、問い合わせ先は048-951-1918。開業前の11月1日から15日までは無料で使える体験期間が設けられ、課金が始まるのは11月17日からになっている。
この料金表で見落としたくないのは、平日の区切り方だ。0時から18時までが一本の単価にまとめられている。深夜0時から6時までの6時間と、昼下がりの14時が、同じ4,950円で売られているということだ。有人の受付を置く施設では、そもそも商品にならない時間帯が、ここでは昼と同じ値札を付けて在庫に並んでいる。
ノンボレーゾーンの後ろが4.57mから3.37mへ、横幅は削られていない
一般財団法人ピックルボール日本連盟が公表している公式ルールでは、コートは13.4m×6.1m(44ft×20ft)で、バドミントンのダブルスコートと同じ広さだ。ネットの高さは中央が86.3cm、両端の最も高い部分が91.4cm。ネットを挟んだ両側それぞれ7フィート(2m13cm)以内がノンボレーゾーンで、このゾーン内ではノーバウンドで打てない。
草加のコートは横幅6.1mを守り、縦だけ11mに詰めている。差は2.4m、片側あたり1.2mだ。ライン内側の面積は公式規格が約81.7㎡、草加が約67.1㎡で、約18%小さい。
| Item | 公式規格 | MiiBA草加 |
|---|---|---|
| コートの縦 | 13.4m(44ft) | 11m |
| コートの横 | 6.1m(20ft) | 6.1m |
| ライン内側の面積 | 約81.7㎡ | 約67.1㎡ |
| ノンボレーゾーン(片側) | 2.13m(7ft) | 発表なし |
| ノンボレーゾーンの後ろ(片側) | 約4.57m | 約3.37m |
面積は縦×横の掛け算、後ろの奥行きはコート半分の長さからノンボレーゾーンを引いた値だ。草加側の3.37mは、ノンボレーゾーンを公式どおり2.13mに据え置いた場合の計算で、リリースにゾーンの寸法は書かれていない。
この1.2mが、プレーのどこに出るか。公式規格ではベースラインからノンボレーゾーンのラインまで約4.57mあるが、草加では約3.37mになる。比率では約26%の短縮で、横幅はまったく削られていないのに、前後の奥行きだけが4分の1以上落ちる。ピックルボールはネット際の攻防と後方からの返球を往復する競技なので、削られたのは「下がって打つ」側の半分だけだ。
では何を捨てたのか。ひとつは公式規格の試合だ。縦13.4mを満たさないコートでは、連盟のルールに沿った大会や公式戦を開けない。もうひとつはダブルスの後方だ。ノンボレーゾーンの後ろが4.57mから3.37mへ、片側1.2m縮む。ロブを追って下がる余地、深いサーブに合わせて一歩引く余地が、そのぶん消える。4人が入ってラリーが伸びたとき、最初に窮屈になるのはここだ。初心者向けと銘打っているのは、裏を返せば、下がる動きが少ないレベルを前提に寸法を決めたという意味になる。
リリースの見出しには「国内初(※)24時間営業のピックルボールコート」とある。この米印の中身が重要で、注記には「2026年10月2日現在。インターネットによる当社調べ。」と書かれている。第三者機関や連盟が確認した記録ではなく、ティップネスが自社でインターネットを調べた範囲での「初」だ。ティップネスの発表では国内初、というのが正確な言い方になる。重要なのは初かどうかではなく、24時間を前提に料金表が組まれていることだ。
豊洲の屋内7面と逆方向に、ティップネスは1面だけに絞った
国内のコート整備は、ここ数か月、面数を増やす方向に動いてきた。豊洲のPICKLRは屋内7面・約1,850㎡で、非会員は1人1時間2,500円。東伊豆の稲取ではリゾートがテニス6面を改修して20面にした。Sansanも池袋で屋内の多面拠点を広げると発表している。大きく造って、人を集めて回す型だ。
ティップネス自身は、9月に渋谷区の無料体験会を受託している。小学生から16歳以上までを2部制で回した9月21日の体験会は、自治体の事業として人に触らせる側の仕事だった。草加はそこから、時間を売る側へ回る。
草加が近いのは、どちらでもない3つめの型になる。南青山のPickle9は、インドアゴルフラウンジの地下1階に1面を差し込んだ。運営はCopterOne、料金は平日昼が9,000円、平日夜が11,000円、土日祝が13,000円で、いずれも1面1時間・人数問わずの課金だ。既存空間への同居という発想は草加とそろっている。
違うのは値段と人だ。1面単位で比べると、草加の平日昼4,950円は南青山の9,000円の55%にあたる。平日夜は7,480円対11,000円で68%。立地の地価差がそのまま出ているとも読めるが、もう一点ある。南青山は有人のゴルフラウンジに同居していて、受付はラウンジが兼ねる。草加は受付そのものを置かない。この差が料金に乗っている。
人数単位の豊洲と並べると構図がはっきりする。豊洲の非会員2,500円で4人そろえると1面あたり10,000円相当。草加の平日昼は4,950円なので、4人で使うなら半額を下回る。逆に2人で使えば1人2,475円で、豊洲の非会員1人分とほぼ並ぶ。1面単位の値付けは、人を連れてくる負担を利用者側に渡す代わりに、連れてきた人には安く使わせる設計だ。
受付を置かないかわりに、深夜0時から6時までが売れる在庫になった
1面しかない施設で24時間を有人で回すと、どうなるか。発表された料金から理論上の売上上限を出すと、平日は18時間×4,950円+6時間×7,480円で133,980円、土日は24時間×7,480円で179,520円。これは1分の空きもなく埋まった場合の数字で、現実にはこの何分の一かにしかならない。3交代の受付をここに載せる余地は、1面では出てこない。
無人入館は成立条件だった。1面で3交代の受付を載せる余地が、売上の上限から出てこない。消えた費用は受付の人件費で、同時に営業時間という上限も消えた。有人なら営業時間が売れる時間の上限になるが、無人なら上限は24時間になる。
もっとも、建物が完全な無人というわけではない。草加店にはカフェ、ワークスペース、ピラティス、ビューティーが同居している。コートの床やネットの点検、忘れ物、設備の不具合は、日中に人がいる前提で回せる。コート単体を無人にしたのであって、建物を無人にしたのではない。カフェとワークスペースの日中スタッフに寄せられるかどうかが、空きフロアだけを持つ事業者には先に問われる。
無人化で消えないものも並べておく。コートの清掃、ネットの張力調整、貸出パドルの破損確認、落ちたボールの回収。1面しかなくても、これらは誰かが毎日触る仕事だ。受付が消えたのは「客が来るたびに発生する接客」のほうで、「設備を維持する作業」は残っている。残った作業を同じ建物の日中スタッフに寄せられるかどうかが、この型を使えるかどうかの分かれ目になる。予約の刻みが1時間単位で、30分枠や按分を置いていないのも、入退室の管理を単純に保つ側の判断だろう。
事前決済にも効き方がある。1面単位で先に決済させるので、当日に人数が減っても売上は変わらない。予約した人が来なければ、その枠は売れたまま空く。有人受付の施設が当日精算でこぼす分を、決済のタイミングで先に回収している。
ジムが追加で用意するのは67㎡の空き区画と入館の鍵だけ
この型が広がりやすいと見る理由は、追加で必要なものが短いリストに収まるからだ。ライン内側67.1㎡と周囲の余白が取れる平坦な区画、ネットと支柱、そして予約・決済・入館の3点。ティップネスはこの3点を新しく作っていない。MiiBAのマイページがそのままコートの在庫表になり、24時間ジムが会員向けに持っている入館の仕組みがそのままゲートになる。
区画の条件も、公式規格を諦めたぶん緩い。連盟が書いているとおり公式コートはバドミントンのダブルスコートと同じ広さなので、13.4m取れる体育館やスタジオなら公式規格が入る。草加が11mに詰めたということは、バドミントン1面が入らない奥行きの区画でも成立させたという意味だ。マシンフロアの一角、使われていないスタジオ、テナントが抜けたワンフロア。候補はそこまで広がる。
坪に直すと話が早い。ライン内側67.1㎡は約20.3坪、公式規格の81.7㎡は約24.7坪だ。周囲の余白を取っても、草加のコートは30坪前後の区画に収まる計算になる。30坪前後の区画に、時間貸しの商品が1つ立つ。フィットネスクラブのスタジオ1室、使われていないシアタールーム、テナントが抜けた小区画がそのまま候補になる。公式規格を捨てた見返りは、この区画サイズの下限を下げたところにある。
追随する側が先に決めることは3つある。ひとつは深夜に人を入れる責任の範囲で、監視カメラと緊急連絡の線をどう引くか。ふたつめは課金の単位で、1面単位なら集客を利用者に任せられ、人数単位なら1人で来た客からも取れる。みっつめは規格を捨てるかどうかで、大会やリーグを呼びたいなら13.4mは譲れない。草加は3つとも、小さく始める側に振った。
その答え合わせは11月に始まる。1日から15日までの2週間は無料体験で、課金が立つのは17日から。1面だけの施設が最初に測るのは面数の足りなさではなく、深夜を含む24コマのうちどこが埋まるかだ。平日0〜18時を一本の単価にまとめた料金表は、その2週間の結果次第で、いちばん先に書き替わる場所でもある。
