インドのコートは2024年初めの約200面から、2025年前半には1,200面へ増えました(インド商工省傘下のIBEFによる集計)。コートが増えれば道具が要ります。そこにインド国内のブランドが、この1〜2年で一気に並び始めました。
日本から見ると、まず値段が目に入ります。木製パドルが809ルピー、カーボン面のモデルでも4,000ルピーを切るものがある。その一方で、USA Pickleballの公認パドル一覧に名前が載っているのは、調べた8社のうち2社だけでした。
この記事では、各社の公式サイトで確認した拠点・製品・価格と、公認一覧との照合結果を並べます。ブランド単位の詳しい情報はインドのピックルボール用具ブランドにまとめました。
この記事でわかること
- インドの主要8ブランドの拠点・価格帯・公認の有無が一覧でわかる
- パドルの価格が809ルピーから14,999ルピーまでどう刻まれているか
- USA Pickleball公認を持つインドのブランドが2社だけという照合結果と、その調べ方
- 「インド初」を名乗るブランドが3社ある理由
- 日本から買えるのか、日本の大会で使えるのか
インドの用具ブランド8社を早わかり比較
まず全体を表で押さえます。価格は2026年9月18日に各社公式サイトで確認した表示価格で、セール価格を含みます。
| ブランドと拠点 | パドルの価格 | USA公認 |
|---|---|---|
| Hundred テランガナ州ランガレッディ |
1,890〜 7,490ルピー |
22モデル |
| Nivia パンジャブ州ジャランダル |
1,952〜 8,799ルピー |
2モデル |
| Strokess グジャラート州ヴァドダラ |
3,495〜 14,999ルピー |
確認できず |
| Gliderz マハラシュトラ州プネ |
1,350ルピー〜 | 確認できず |
| Cosco ハリヤナ州グルグラム |
1,796〜 9,301ルピー |
確認できず |
| Airavat インド(1985年創業) |
999〜 12,999ルピー |
確認できず |
| Vector X パンジャブ州ジャランダル |
809〜 3,869ルピー |
確認できず |
| Vinex ウッタル・プラデーシュ州メーラト |
合板パドル (B2B中心) |
確認できず |
1. 価格は809ルピーから14,999ルピーまで
いちばん安いのはVector Xの木製パドルで809ルピー。いちばん高いのはStrokessの最上位RAGE SERIESで14,999ルピーです。同じ「パドル」でも18倍以上の開きがあります。
あいだの価格がどう刻まれているかを並べると、市場の重心が見えます。
- 809ルピー:Vector X 木製パドル
- 999ルピー:Airavat BLAST
- 1,350ルピー:Gliderz の最安モデル
- 1,796ルピー:Cosco Tango
- 1,890ルピー:Hundred N Force 40
- 1,952ルピー:Nivia K-500
- 1,990ルピー:Hundred Spirit X(USA Pickleball公認)
- 2,339ルピー:Vector X Beast 13mm
- 3,495ルピー:Strokess Carbon X 16mm
- 3,671ルピー:Cosco Carbon Arc
- 6,799ルピー:Nivia K-3000 PRO(USA Pickleball公認)
- 7,490ルピー:Hundred Raptor 80 Extend
- 9,301ルピー:Cosco Carbon Charge
- 10,999ルピー:Airavat IONIX
- 12,999ルピー:Airavat ASTRA・VALOUR(いずれも在庫切れ)
- 14,999ルピー:Strokess RAGE SERIES
2,000ルピー以下に商品が集まる
並べてみると、2,000ルピー以下の帯に6ブランドの商品が入ります。ここはまだ道具を持っていない人が買う帯です。コートが増え続けている市場では、この帯に商品を置けるかどうかが売り場の広さを決めます。Airavatが999ルピーから12,999ルピーまでをパドル22モデルで刻んでいるのは、その帯を取りにいく作り方です。
上位帯を作っているのは専業ブランド
6,000ルピーを超える帯に残るのは、Strokess、Airavatの上位7モデル、Coscoのカーボン上位、Hundredの上位、Niviaの公認2モデルです。素材の呼び方もこの帯から変わります。StrokessはT700カーボン、18Kケブラー、チタンメッシュ、サーモフォームド加工を並べ、芯も16mmのコントロール寄りと13mmのパワー寄りに分けています。米国の専業ブランドが使っている語彙とほぼ同じで、スペックの書き方は国際標準に寄せてきています。
2. ブランドは出自で3つに分かれる
8社を横に並べると同じ「インドのパドルブランド」に見えますが、どこから来たかで中身が違います。
ピックルボールだけで立ち上がった2社
Strokessはグジャラート州ヴァドダラのブランドで、運営はStrokess Sporting Solutions。ヴァドダラで「3rd Shot by Strokess」というコートも運営しており、公式サイトでは同施設を「Vadodara’s first DUPR-affiliated club」と説明しています。売る場所と打つ場所を自分で持っているのが、ECだけのブランドとの違いです。
Gliderzはマハラシュトラ州プネのGliderz Sports Equipments Private Limited。「100% of its paddles on Indian soil」と全量国内生産を掲げ、商工省産業国内取引促進局(DPIIT)のスタートアップ認定と「Make in India」登録を前面に出しています。個人向けECよりも、クラブや法人向けのカスタム・ロット生産をWhatsAppで受ける売り方です。
他競技から入ってきた5社
数のうえで多いのはこちらです。Hundredはバドミントンが主力のブランドで、公式サイトにはスリカンス・キダンビの名前を冠したラケットシリーズが並びます。運営はテランガナ州のSunlight Sports Studio LLP。Niviaはサッカーボールやシューズで知られるジャランダルのメーカー。Vector Xも同じジャランダルで、運営はSoccer International Pvt Ltd。サッカーボールでFIFA認証を掲げる会社です。Coscoはハリヤナ州グルグラム、Airavatは1985年創業の総合スポーツ用品ブランドです。8社のうち2社がジャランダルから出ている点は、後で触れる産地の話とつながります。
既に持っている売り場に棚をひとつ足す形なので、立ち上がりが早く、価格の下も強い。Coscoの商品はAmazon.inだけでなく、BlinkitやZeptoといった即配アプリにも商品ページがあります。ピックルボール専業のブランドが個別に作れない流通です。
輸出で食べてきたメーラトのメーカー
Vinex(VINEX Enterprises Pvt. Ltd.)はウッタル・プラデーシュ州メーラトの会社で、公式サイトでは「India’s largest Manufacturer and Supplier of diverse range of sporting goods since 1957」を名乗ります。インドのスポーツ用品輸出振興協議会(SGEPC)から「2004-05年以降、陸上競技用具の輸出額1位」として表彰されたことも公表しています。
ピックルボールでは9mm厚の合板パドル、ボール、ネット、ネットスタンドを揃えますが、相手は学校・自治体・海外のバイヤーです。カーボンの高級機を競う専業ブランドとは、そもそも売る相手が違います。
3. USA Pickleball公認を持つのは8社中2社
パドルを国際大会や公認大会で使えるかを左右するのが、USA Pickleballの公認一覧です。ブランドごとではなくモデルごとの登録で、「Pass」になったものだけが載ります。
5,336モデル・1,382社と突き合わせた
ピックルタイムス編集部で公認パドル一覧を全ページ取得し、重複を除いた5,336モデル・メーカー名1,382社と、インド各社のラインナップを突き合わせました(2026年9月18日取得)。モデル名まで一致したのは次の2社です。
| メーカー表記 | モデル | 登録日 |
|---|---|---|
| HNDRD (Hundred) |
Phantom 20/60/80、Raptor 20/80、Zephyr 20/80、Spirit-X、Vigor 100の各Wide・Extend/13mm・16mm 計22モデル | 2025年 2月5日〜 4月16日 |
| NIVIA | K-3000 PRO | 2025年 9月26日 |
| NIVIA | K-5000 PRO | 2025年 11月24日 |
Strokess、Gliderz、Airavat、Cosco、Vinexの登録は確認できませんでした。なお一覧には「VECTOR X」名義でAQUA・SHADOWの2モデルがありますが、インドのVector Xの現行ラインナップに同名の製品が見当たらないため、同一のメーカーと断定できません。ここでは数えていません。
シリーズ名だけで判断しない
Hundredについては、店頭のラインナップと公認一覧が完全には重なりません。最安のN Force 40(1,890ルピー)は一覧に無く、Spirit Xも公認されているのは13mm厚の仕様です。店にある「Spirit X Pop」「Spirit X Blast」「Spirit X Flow」といった派生モデルは一覧に見当たりません。名前が一致するもので最も安いのはSpirit Xの1,990ルピーで、買うときはシリーズ名だけでなくWide/Extendと厚みまで照合するのが確実です。
ちなみにHundredの公式サイトには、公認を示す表示が見当たりませんでした。自分で一覧を引かないと気づけない状態になっています。
公認が無いパドルをどう見るか
公認が無いこと自体は、品質が低いという意味ではありません。申請には費用と手間がかかるため、国内向けだけで売るブランドが取らない選択をするのは自然です。Gliderzが掲げているのもUSA Pickleballではなく、インド国内団体のAIPA(All India Pickleball Association)の承認です。
ただしインドでは、政府(青年スポーツ省)が国内競技団体に認定したのはIPA(Indian Pickleball Association)のほうで、AIPAとは係争が続いています(2026年4月時点)。「どの団体の公認か」で意味が変わるため、大会で使う予定があるなら主催団体の規定を先に見たほうが確実です。団体の関係はインドのピックルボール事情で整理しています。
4. 「インド初」を名乗るブランドが3社ある
調べていて目を引いたのが、3社が別々の言い回しで「インド初」を掲げていることです。
- Strokess:「India’s first “Proudly Made in India” manufacturer of high-tech, durable, top-quality pickleball paddles」
- Gliderz:「India’s first AIPA-approved pickleball manufacturer」
- Airavat:「FIRST PICKLEBALL BRAND IN INDIA」(さらに4,999ルピーのSYLNTは商品名が「INDIA’S FIRST NOISELESS PICKLEBALL PADDLE」)
文言が少しずつ違うので、厳密には両立し得ます。ただ第三者が検証した情報は見当たらず、どれが本当に最初だったかは確かめられません。市場が立ち上がった直後で、まだ誰も「業界の歴史」を持っていない段階だと考えたほうが実態に近いでしょう。ブランド選びの材料としては、この手のキャッチコピーより、拠点・価格・公認の有無のほうが確かめやすい指標です。
5. 日本から買えるのか、日本の大会で使えるのか
日本に正規代理店を置いているブランドは、確認した範囲ではありませんでした。
ただしStrokessの公式ストア(Shopify)は、配送先国の選択肢に日本を含んでいます(価格表示はルピーのまま)。配送ポリシーにも「we dispatch hundreds of products to satisfied customers across the world」「発送まで1〜4日、配送は通常10〜15日」と書かれています。ほかのブランドのストアには日本向けの配送設定が見当たりませんでした。
大会で使うことを考えるなら、判断材料は公認一覧です。上のとおりインド勢でそこに載っているのはHundredとNiviaだけなので、実質この2社が候補になります。Hundredは名入れ(Paddle Remix)を無料で受け付けており、公認モデルが1,990ルピーから並ぶのは世界的にも安い部類です。
そのStrokessですが、公式ストアの商品データを確認したところ、2026年9月18日時点で在庫があるのは最上位のRAGE SERIES(14,999ルピー)だけで、残る7製品はすべて在庫切れ表示でした。注文する前に在庫と配送可否を問い合わせたほうが確実です。
6. コートが増えたからブランドが増えた
インドで用具ブランドが立て続けに出てきた背景には、はっきりした数字があります。IBEFの集計では、コートは2024年初めの約200面から2025年前半に1,200面へ。選手は2024年時点で6万人、2028年には100万人と見込まれています。コート1面の整備費は30万〜50万ルピーで、バドミントンコート(最大150万ルピー)よりはるかに安く作れます。
もうひとつは、作る側の土台がすでにあったことです。メーラトとジャランダルは、独立前からスポーツ用品を作って輸出してきた産地です。合板やカーボンの加工、ネットの縫製、輸出の実務が地場にある。ゼロから工場を建てなくても、既存のラインにパドルを流せます。Vinexのような輸出メーカーが自然にピックルボールの棚を持っているのは、そのためです。
用具の話は、資本が動いている話ともつながっています。Shark Tank India シーズン4では、コート施工と用具を手がけるGoodland Pickleball(共同創業はHemant ChavanとYogesh Chavan)が、投資家のAman Guptaから800万ルピー(80 lakh)を6%の株式と0.5%のロイヤリティで調達しました(Business Today、2025年1月30日)。ベンガルールのGoRallyも6,460万ルピー(6.46 crore)を調達しています。
インドのパドルを見るときに確認する4つ
- 公認の有無:大会で使うならUSA Pickleballの公認一覧にモデル名があるか。インド勢ではHundredとNiviaのみ
- 「公認」の出どころ:AIPAかIPAか。インド国内では団体の認定が係争中で、意味が変わる
- 拠点と生産:国内生産を掲げるか、海外から仕入れて売るだけか。Gliderzのように全量国内生産を明言する社もある
- 価格の帯:2,000ルピー以下は入門帯、6,000ルピー超は上位帯。同じブランドでも素材と芯の厚みで別物になる
各社の詳しい製品ラインと価格はインドのピックルボール用具ブランドに、施設や団体・リーグの状況はインドのピックルボール事情にまとめています。
よくある質問
この記事に寄せられることの多い疑問をまとめました。
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参考リンク
※価格・ラインナップ・公認状況は2026年9月18日時点で各公式サイトおよびUSA Pickleball公認一覧を確認した内容です。最新情報は各公式サイトをご確認ください。

