採用面談の前に、応募者が代表やメンバーと一緒にコートでピックルボールを打つ。Z世代向けの企画・エモマーケティングを手がける僕と私と株式会社が2026年9月7日に発表した「ピックルボール採用」は、書類と面談だけでは伝わりにくい人柄や会社の雰囲気を、一緒にプレイしながら知ってもらう試みだ。ただしプレイ自体は合否を決める選考ではなく、参加するかどうかも応募者が選べる。同社はこれまでもサウナ採用やお花見採用を実施してきた。国内のプレーヤーや施設運営者にとっては、競技が採用広報の場に使われ始めた一例として読める話だ。
参加から正式面談まで、ピックルボール採用はどう進む?
発表によれば、応募者は採用面談の前に代表やメンバーとピックルボールを楽しみ、互いの人柄や会社の雰囲気を知る。そのうえで希望者は、後日あらためて正式な面談へ進める。競技経験は問わない。会社側は「面接だけで、お互いのことをどこまで知れるのだろう」という問いを出発点に、プレイを通じた自然なやり取りから応募者と会社が互いを知る機会をつくると説明している。
プレイは選考ではなく、参加も任意
この施策で押さえておきたいのは、プレイが合否を左右しない点だ。同社はリリースで、プレイの上手さや運動能力、勝敗を採用評価に用いないと明記している。参加自体も任意で、コートに出ずに通常のカジュアル面談だけを選ぶこともできる。加えて同社はギルド型組織を掲げ、ジョブ型の業務委託契約を前提としている。一般的な正社員採用の面接とは前提が異なることを、最初に押さえておきたい。
サウナ採用・お花見採用に続く面談前の交流企画
同社はエモマーケティングを掲げ、Z世代の調査と企画を本業とする。過去にはサウナ採用やお花見採用を実施しており、ピックルボール採用はその流れに連なる。面談の前に別の場を挟む方法を複数試してきた会社が、今回はスポーツを入口に選んだ形だ。自社の採用企画そのものが、Z世代に向けた発信の題材にもなっている。下の表に、今回の施策の位置づけを整理した。
| 観点 | ピックルボール採用の位置づけ |
|---|---|
| プレイの目的 | 互いの人柄・会社の雰囲気を知る(合否の選考ではない) |
| 評価への扱い | 競技経験・運動能力・勝敗は採用評価に用いない |
| 参加 | 任意。通常のカジュアル面談も選べる |
| 競技経験 | 不問 |
| 契約形態の前提 | ギルド型組織/ジョブ型の業務委託 |
プレイ中の交流で何が分かり、何は分からないか
プレイを通じて人柄を知るという狙いは、期待できる部分と、そこまでは踏み込めない部分に分けて考えられる。合否を決める場ではないからこそ、応募者も会社も肩の力を抜いて向き合いやすい。一方で、短い時間のスポーツ体験だけで見えることには限りがある。
同じ競技に一緒に立つと会話のきっかけが増える
面談は評価する側と評価される側が机を挟んで向き合う構図になりやすく、応募者は身構えがちだ。コートで一緒に打てば、代表が打ち損じて笑いが起きたり、応募者の一打で盛り上がったりと、会話のきっかけが増える。役割が一時的にゆるむ場面が挟まることで、面談だけでは出にくい雑談や素の表情が生まれやすくなる。
短時間のプレイだけで適性は測れない
ただし、一緒にプレイして感じの良さが伝わることと、その人と長く働けるかは別の話だ。短時間のスポーツ体験だけで職務上の協働性まで判断できるわけではないし、そもそも同社はプレイを評価に使わないと明言している。この施策は選抜の道具ではなく、面談に入る前にお互いの緊張をほぐし、相互理解の入口を広げる仕掛けと捉えるのが実態に近い。
なぜ面談前の交流にピックルボールを選んだのか
交流のためだけなら他の遊びでもよさそうだが、初対面の相手と短時間で一緒に楽しむには条件がある。短い時間で成立し、経験の有無で場が壊れにくく、会話が生まれる距離であること。ピックルボールはこの点で扱いやすい競技だと会社側は位置づけている。
初心者も一緒に楽しみやすいという競技の特徴
ピックルボールは球がゆっくり飛び、コートが狭い。ネット際にはノンボレーゾーンが設けられ、この区域ではボレーが禁じられるため、ネット前での激しい打ち合いが起きにくい。初心者でもラリーを楽しみやすいという競技の特徴は、同社が経験不問を掲げられる背景にある。もっとも技量の差はプレイに出るので、初対面同士で楽しむには、当日の声かけや強度の調整といった配慮は要る。
コートが狭く、打ち合いながら声を掛け合える
ピックルボールのコートはバドミントンのダブルスコートとほぼ同じ大きさで、テニスコートより狭い。相手との距離が近いぶん、打ち合いながら自然に声を掛け合える。この近さが、緊張をほぐす雑談を生みやすくする。面談前に会話の糸口をつくるという目的から見ると、競技としての手軽さと距離の近さがかみ合っている。
企業がピックルボールを取り入れる場面、大会から面談前交流まで
企業がピックルボールを使う場面は、今回の採用企画だけではない。社内の交流や福利厚生の文脈でも、競技を取り入れる動きが出てきている。用途は異なるが、初対面や部署をまたいだ人同士が一緒に楽しめるという競技の性質が、いずれの場面でも生きている。
関西では企業対抗の大会が動き出した
大阪ではミズノとRondが企業対抗の大会を仕掛け、参加の上限を16社とする枠を設けた。この関西の企業対抗戦は、部署を越えた社内交流の道具として競技が選ばれ始めた例だ。社員同士の横のつながりを狙う大会と、応募者との接点をつくる面談前交流は目的こそ違うが、どちらも一緒にプレイして打ち解けるという同じ性質を利用している。
体験会の申込が示す初心者の受け皿
面談前に一度触れておきたい応募者にとっては、初心者が気軽に打てる場があるかどうかが要る。女性誌Oggiが定員60人で募集した体験会には1000人を超える申し込みが集まった。このOggiの体験会が見せたのは、初心者向けの企画に対する需要の厚さだ。ここから一般の応募者心理まで断じることはできないが、初めての人が打てる場が各地にあること自体は、経験不問の施策を後押しする。
参加を迷う人と、導入を考える企業が確認したいこと
この話を読み物で終わらせず、当事者の行動に落とす。コートに出るか迷う応募者と、似た施策の導入を考える企業とでは、確認したい点が異なる。
参加する場合に事前に触れておく方法
参加は任意なので、事前の練習は必須ではない。それでも一度打っておけば当日の勝手がつかめて気は楽になる。触れる場は大きく三系統に分かれる。買い物のついでに立ち寄れる商業施設の常設屋内コートのような場所も増えている。下の表に、事前体験の入口と確認しておきたい点をまとめた。
| 入口 | 向いている人 | 確認すること |
|---|---|---|
| 自治体・協会の体験会 | 費用を抑えて試したい人 | 開催日と定員、参加費、申込方法 |
| 商業施設の常設コート | 都合に合わせて行きたい人 | 予約枠、料金、レンタル用具の有無 |
| 民間スクールの初回体験 | 基礎から教わりたい人 | 料金と初心者クラスの設定 |
企業が交流施策として導入する前の三つの論点
似た施策を試したい企業は、企画の勢いだけで走らない設計がいる。第一に目的の言語化だ。プレイで何を伝え合いたいのかを決めておかないと、場の印象だけが残る。合否には使わないという今回の前提も、参加者に誤解なく伝える必要がある。第二に参加者への配慮で、運動が難しい人が不利にならないよう、参加しない選択肢を必ず用意する。第三に安全と場所の確保だ。転倒やけがのリスクと、貸しコートの費用を織り込んでおく。この三点を詰めておけば、話題づくりだけで終わらない交流施策として運用しやすくなる。
面談前の交流、応募者と企業は次に何をするか
ピックルボール採用は、一企業のユニークな採用広報であると同時に、面談に入る前の関係づくりをどう設計するかという問いを投げかけている。競技が広がり、初めての人でも打てる場が各地にあるからこそ成り立った企画だ。応募者にとっての次の一手は具体的で、参加を考えるなら、通常のカジュアル面談も選べることと当日の持ち物を確認しておくとよい。似た施策の導入を考える企業なら、参加者数や正式面談へ進んだ割合、参加者の受け止めといった指標を決めておくと、話題性の先にある効果を後から見直せる。
参照元

