バドミントンコートだった場所のラインが引き直されて、ピックルボールコートになっていた。空き地にネットが張られ、駐車場だったスペースにもコートができる。ベトナムに住んで三年になるが、街の景色がこう変わったのは、この一、二年のことだ。ホーチミンでどのあたりにコートが集まっていて、どこが打ちやすいのか。住んでいる側の実感を書いておきたい。
街を歩くと、コートが増える速さが分かる
ベトナムでピックルボールのコートが増えている、という話は数字でも裏付けられている。ホーチミン市内のコート施設はおよそ1,000か所規模に達し、ハノイのロンビエン区では2024年末の集計で54面を超え、実数はすでに100面を上回るとみられると報じられている。ピックルボール用品のネット通販の売上も、2024年1〜3月の約150億ドン(約9,200万円)から2025年7〜9月には約3,570億ドン(約22億円)へと膨らんでいる。
増え方が速い理由のひとつは、ゼロから作らなくていいことにある。ピックルボールコートは13.41m×6.10mで、バドミントンのダブルスコートとほぼ同じ寸法だ。つまりバドミントン場は線を引き直せばそのまま使える。ホーチミンではバドミントン場・テニスコート・ビリヤード場からの転用が各所で起きていて、テニスコート1面からはピックルボールコートが4面取れるため売上は2〜3倍になりうると現地紙は伝えている。ベトナムの街に空きスペースが出ると、いま真っ先に候補に挙がるのがピックルボールコートという状況になっている。
コートが多いのはタオディエン。ただし「多い=快適」ではない
ホーチミンでコートの密度が突出しているのは、欧米人の居住者が多いタオディエン周辺だ。私が普段打っているのもこのあたりだが、体感では周辺だけでコートが20〜30面ある。歩いて回れる範囲にこれだけあるので、時間さえ合えばどこかしらで打てる。
新しいコートと、古いコート
ただ、面数が多いことと環境が良いことは別だった。新設は今も続いているが、早い時期にできた古いコートは路面ががたついていたり、サイドやバックのスペースが狭くて思い切り下がれなかったりする。コートの数では日本の比ではないのに、当たり外れは大きいというのが、三年打ってきた実感だ。予約サイトの写真だけでは分からないので、初めての場所は一度短時間で試してから通うかどうかを決めている。
では中心街(1区)はどうなのか
観光で来る人が最初に泊まるのは1区の中心街だと思うが、このエリアはコートが無いわけではないものの、タオディエンほどの数はない。市の労働文化会館のように2面規模で運営している施設もあり、中心街の物件は面数が限られる。中心街に滞在してピックルボール中心で動くなら、コートのあるエリアまで出る前提で予定を組んだほうがいい。
ローカルのエリアのほうが、コートがきれいで賑わっている
一方で、9区・7区・4区といった外国人が少ないエリアには、ベトナム人プレーヤーで埋まっているコートがある。ここが個人的にいちばん意外だったところで、ローカルのエリアのほうが、きれいなコートが多い。後発で作られた分だけ路面もフェンスも新しく、平日の夜でも人がぎっしりいる。7区のフインタンファット体育センターは平日も予約で埋まっていると報じられているし、3区のホースアンフオン体育館では、テニスコート2面を転用して5面が用意された。
ソーシャルこそローカルに出る
だから交流会(ソーシャル)に参加するときは、あえてローカルのエリアを選ぶようにしている。普段は行かないコートで打てて、顔ぶれも変わる。ソーシャルの募集はReclubというアプリに集まっていて、ホーチミンのクラブはここでレベル別・時間帯別に枠を出している。レベル表記は現地基準で高めに出ることがあるので、申し込むときは控えめに見積もっておくといい(このあたりはコートのマナーの記事にまとめている)。
コート脇メモ:「9区」はもう住所には無い
ここまで区の名前で書いてきたが、ベトナムは2025年7月1日の行政区画再編で「区(クアン)」という階層そのものを廃止し、住所は坊(フン)単位になった。タオディエンも坊としては統合され、アンカイン坊の一部になっている。それでも現地の会話では今も「7区」「9区」で通じるし、コートの場所を説明するときも旧区名のほうが話が早い。住所表記と会話が食い違っている状態なので、地図アプリに入れる住所と、人に伝える言い方は分けて考えたほうがいい。
予約は先払い・QR決済。旅行者がつまずくのはここ
旅行者が止まるのは、先払いのQR決済
コート予約はALOBO(アロブッキング)というベトナムのアプリが広く使われている。空き枠がその場で見えて、コートのオーナーに連絡しなくても押さえられるのは楽なのだが、支払いが先払いで、しかもクレジットカードではなくベトナムのQRコード決済が必要になる。ベトナムの銀行口座を持っていない旅行者は、ここで止まる。
17時以降は埋まる。朝と日中が狙い目
その場合は、コートに直接行って申し込むのが現実的だ。幸いコートの数が多いので、当日の飛び込みでも入れることは珍しくない。ただしタオディエンのように人気のあるエリアは、夕方17時以降がまず埋まる。時間帯で難易度がはっきり違うので、動き方を分けておくといい。
| 時間帯 | 取りやすさ | 旅行者の動き方 |
|---|---|---|
| 早朝〜午前 | 取りやすい | 飛び込みでもほぼ入れる。暑くなる前に打てる |
| 日中 | 取りやすい | 屋根付き・屋内を選ぶ。当日でも空きがある |
| 17時以降 | 埋まりやすい | 事前予約が前提。無理なら中心部から離れたエリアへ |
支払い方法や前金の考え方はコート料金相場の記事に、アプリを使わずコートと直接やり取りする方法はZaloで予約する記事にまとめてある。パドルを現地で調達するならショップガイドも合わせてどうぞ。
ホーチミンで打つコートを探すなら、エリアから絞るのが早いです。
まとめ
ホーチミンはコートの数だけで選ぶとタオディエンになるが、路面や広さまで含めた打ちやすさで選ぶなら、ローカルのエリアに足を延ばす価値がある。そしてタオディエンのコートが以前より取りにくくなってきたこと自体が、ベトナムでピックルボールをやる人が増えている何よりの証拠だと思っている。
2026年8月6日から9日には、PPAツアーアジアの「MBホーチミンシティ・オープン」(PPA Asia 500)がザ・グローバルシティで開かれる。20を超える国と地域から500人以上が集まる大会で、こうした国際大会が定期的に来るようになったことも、この一、二年の変化のひとつだ。コートはこれからも増えるだろうし、旅行のついでに打ちたい人にとっても、しばらくは面白い場所であり続けると思う。
(文・小島怜/ベトナム在住)

