フィリピンのピックルボールが、施設を増やす段階から指導者を育てる段階に動いた。7月25日に現地メディアが報じたのは、国際的なコーチ認証プログラム「RacketPro(RPO)APAC」がレベル1認証ツアーをマニラ・セブ・ダバオの3都市で開き、100人を超える指導者を育てるという計画だ。会場の新設でも大会の誘致でもなく、教える側の数と質をまず整える——この順番に、日本のピックルボール普及を考える手がかりがある。
RPO APACがマニラ・セブ・ダバオで100人超のコーチを認証
RPO APACのレベル1認証は、選手育成、体系立てた指導法、レッスン設計、実地のオンコート指導までを、オンラインと対面を組み合わせて修了させる。技術面を統括するのは元プロ選手のコリン・ジョンズ氏、運営を担うコナー・グエン氏、体験設計のデレク・ソーヤー氏らが指導陣に並ぶ。7月下旬から8月初旬の短期集中で100人超を認証する規模は、一度きりの体験講習とは性格が違う。修了者がそのまま各地でクラブや教室の担い手になる前提で設計されている。国内だけで通じる修了証ではなくAPAC規模で共通の水準を持つ認証のため、選手が海外の大会へ出るときにも指導の質を裏づける。
加盟クラブ492・登録選手46,400人に指導者が追いつかない
フィリピン・ピックルボール連盟(PPF)は、加盟クラブ492、登録選手46,400人超、全国の会場427カ所という数字を公表している。遊ぶ場所が先に広がり、そこで教えられる人材が慢性的に足りない。この順序は、多くの新興国のスポーツ普及がぶつかる壁でもある。連盟が会員数を数字で開示することは、行政やスポンサーに投資判断の材料を渡す行為でもある。
Helios25面とPPA Tour Asia2027が指導者育成と同時に動く
指導者育成は単独で走っているわけではない。Kosmas Athletic VenturesとRobinsons Landが組んだ複合施設「Helios」は、17,500平方メートルの敷地に25面のプロ仕様コートを備え、ジムやスポーツクリニック、飲食まで抱える。PPA Tour Asiaは2027年からこの会場で大会を開く計画を示しており、興行と施設を接続する見取り図がすでにある。指導者(教育)、登録選手(大衆参加)、複合施設(商業投資)、プロツアー(興行)が、別々にではなく束になって前に出ている点が、この動きの核心だ。
| 層 | 担い手 | 確認できた数字 |
|---|---|---|
| 大衆参加 | フィリピン・ピックルボール連盟 | 加盟クラブ492/登録選手46,400人超/会場427カ所 |
| 指導者育成 | RacketPro APAC(レベル1認証) | マニラ・セブ・ダバオで100人超を認証予定 |
| 商業投資 | Kosmas Athletic Ventures/Robinsons Land | 複合施設Helios=25面・17,500平方メートル |
| 興行 | PPA Tour Asia | 2027年からHeliosで大会開催予定 |
岡山・津山でも指導者養成講座が定員に達した
日本はコートの新設や大会開催では着実に前進している一方、指導者を体系的に認証し、教室からクラブ、地域リーグへとつなぐ経路づくりは後回しになりがちだ。国内でも岡山・津山の指導者養成講座が定員に達し、教えられる人材の不足が表面化したように、需要は先に立ち上がっている。競技人口の裾野は都市部だけでなく地方へ伸びており、フィリピンでは首都ではなくネグロス島に国内最大級の施設が生まれた例や、マレーシア・サバ州で女子160人規模の大会が地方から立ち上がった動きもある。プロツアーが域内で定着すれば、日本の選手や大会運営も、この地図の中で自分の位置を測り直すことになる。
施設整備と指導者認証を同じ計画に置く
国内の協会・施設運営者にとっての具体策は二つに絞れる。ひとつは、コート増設と同じ計画表に指導者認証の目標人数を書き込み、修了者の受け皿(教室・クラブ・地域リーグ)まで一続きで設計すること。もうひとつは、会員数や会場数を外部に開示できる形で管理し、スポンサーや自治体に投資判断の材料を渡すことだ。フィリピンは、見えやすい設備よりも先に、人と数字という土台を組みに来た。順番の付け方そのものが、日本が次に何から着手するかを問い直させる。
参照元:Context.ph(2026年7月25日)/World Pickleball Magazine/Pickleball.com(Helios複合施設)

