アジアで拡大するベトナムのピックルボール|普及の現状と展望

ベトナムのピックルボール事情|アジアでの普及状況と今後の展望

ベトナムでピックルボールが急速に広がっている。

この新しいスポーツは、2018年頃にベトナムに上陸してから、わずか数年で全国的な現象へと発展しました。ホーチミン市やハノイといった大都市を中心に、専用コートが次々と開設され、週末には大会やトーナメントが定期的に開催されています。テニス、バドミントン、卓球の要素を組み合わせたこのラケットスポーツは、年齢や体力レベルに関わらず誰でも楽しめる点が、ベトナムの人々に受け入れられた大きな理由です。

本記事では、ベトナムにおけるピックルボールの普及状況、プレー人口の増加傾向、主要都市の施設情報、そしてアジア地域での位置づけと今後の成長可能性について詳しく解説します。


目次

ベトナムでのピックルボール急成長の背景

ベトナムは、アジアにおいてピックルボールが最も急速に成長している国の一つとして注目されています。

2018年頃から導入されたピックルボールは、わずか数年で全国的なスポーツへと発展しました。この急成長の背景には、いくつかの重要な要因があります。第一に、ベトナムの若い人口構成と、新しいスポーツやレクリエーション活動への関心の高さが挙げられます。都市部の中産階級の拡大により、余暇活動への投資が増え、健康とフィットネスへの意識が高まっているのです。

ベトナムの都市部でピックルボールを楽しむ人々

第二に、ベトナムには既存のバドミントンとテニスの文化があり、ラケットスポーツへの親しみがありました。ピックルボールは、これらのスポーツの要素を組み合わせているため、ベトナム人にとって理解しやすく、受け入れやすいスポーツだったのです。特にバドミントンの人気が高いベトナムでは、似たサイズのコートで遊べるピックルボールへの移行が自然でした。

第三に、ベトナムは製造業が盛んで、スポーツ用品の生産国として知られています。この製造能力がピックルボール用品の生産にも活用され、ベトナムは世界的なピックルボール用品の製造拠点の一つとなりつつあります。国内でKamito、Sypik、Facolosといったベトナム発のブランドが台頭し、手頃な価格帯ながら基本的な性能をしっかりと確保した製品を提供しています。

ベトナムの気候もピックルボールに適しています。熱帯モンスーン気候のため、屋外でのスポーツが年間を通じて可能です。ただし、雨季には屋内施設の需要が高まり、体育館やスポーツセンターでのコート設置が増えています。


プレー人口と普及状況

ベトナムのピックルボール競技人口は、この1年程で急速に拡大しました。

ある統計によると、国内大都市を中心に約1万人の競技者がいるとされています。最近では、若い女性インフルエンサーたちの間で、カジュアルかつセクシーなピックルボールのファッションをソーシャル・ネットワーキング・サービス上で披露するのが流行っており、人気に拍車をかけています。パドルもボールも軽量のため、怪我の心配が少ないのも人気の理由の一つとされています。

eコマースプラットフォームや国内新聞の統計によると、2025年の最初の10か月だけで、ベトナム人は約140万個のピックルボールを購入するために約4,000億ベトナムドンを費やしており、前年同期比で約800%増加しています。この驚異的な数字は、ベトナムにおけるピックルボールの急速な普及を如実に示しています。

出典 Vietnam.vn「ピックルボールは、イーロン・マスク氏のテスラを含む億万長者の遊び場」(2026年1月)より作成

ベトナムのピックルボール専用コートとプレイヤー

ベトナムでは、企業のチームビルディング活動としてもピックルボールが採用されています。多くの企業が従業員の健康促進とコミュニケーション強化のために、社内ピックルボール大会を開催しています。また、学校や大学でもピックルボールプログラムが導入され始めており、若い世代への普及が進んでいます。

現時点では健康増進や流行りものとしての側面が強く、本格的なスポーツとはみなされておらず、一部のプロ選手からも、高齢者と子供のスポーツと評されています。しかし、スポーツ局は近い将来、ピックルボールをトレーニング種目として組み込む方針で、国および国家機関として、この新しいスポーツの管理と発展を目指すとしています。

出典 VIET JO「ピックルボールがベトナムで流行中、競技人口は1万人超」(2024年8月)より作成


主要都市の施設とコミュニティ

ホーチミン市とハノイが、ベトナムにおけるピックルボールの二大中心地です。

両都市には専用コートを備えた施設が複数開設され、週末には大会やトーナメントが定期的に開催されています。Pickleball Vietnam Association(ベトナムピックルボール協会)が設立され、競技の普及と標準化を推進しています。この協会は、国内におけるルールの統一、指導者の育成、大会の運営など、ピックルボールの発展に必要な基盤整備を進めています。

ベトナムのピックルボールコミュニティは非常に包括的で、初心者から上級者まで、すべてのレベルのプレイヤーを歓迎する雰囲気があります。多くのクラブが無料の初心者レッスンを提供し、用具も貸し出しているため、金銭的な障壁が低く、誰でも気軽に始められます。テニスなどと比べると、お金もかからないので、若者を含めて幅広い年齢層に受け入れられています。

特筆すべきは、ベトナムにおけるピックルボールの社会的側面です。このスポーツは世代を超えた交流の場となっており、祖父母から孫まで一緒にプレイする光景がよく見られます。ベトナムの強い家族文化とコミュニティ意識が、ピックルボールの社会的普及を後押ししています。

メディア露出も増加しており、ベトナムのスポーツチャンネルやオンラインプラットフォームでピックルボールの試合が放送されるようになりました。ソーシャルメディアでは、ピックルボールのテクニックや試合のハイライトを共有するグループが数多く存在し、オンラインコミュニティも活発です。


アジア地域での位置づけと国際交流

ベトナムは、地域で最も急速に成長しているピックルボール市場の一つとして台頭しています。

アジア地域のピックルボール大会の様子

世界のピックルボール市場規模は670億ドルで、ベトナムは地域で最も急成長している市場として浮上しています。世界100カ国で事業を展開する世界的な調査・コンサルティング会社、コグニティブ・マーケット・リサーチのレポートによると、世界のピックルボールラケット市場は2024年に約670億ドルに達すると予想されています。

国際交流も活発で、ベトナムのプレイヤーは近隣諸国やアメリカで開催される大会に参加し、技術を磨いています。逆に、国際的なコーチやプレイヤーがベトナムを訪れ、クリニックやワークショップを開催することも増えています。ベトナム航空は、一般社団法人日本ピックルボール協会と2025年4月1日から2026年3月31日までの1年間、ダイヤモンドスポンサーシップ契約を締結しており、日本とベトナムの交流をさらに促進し、両国間の航空利用や観光需要の拡大を期待しています。

出典 PR TIMES「ベトナム航空、日本ピックルボール協会とダイヤモンドスポンサーシップ契約を締結」(2025年4月)より作成

将来的には、ベトナムがアジア太平洋地域におけるピックルボールのハブとなる可能性があります。既に東南アジア選手権の開催が計画されており、ベトナムが主催国候補となっています。また、ベトナムで製造された高品質で手頃な価格のピックルボール用品が、世界市場でのシェアを拡大する可能性も高いでしょう。


ベトナム発のブランドと製造業の成長

ベトナムのスポーツ用品製造業の成長に伴い、国内ブランドも台頭してきています。

これらのブランドは、品質と価格のバランスで市場に参入し、アジア太平洋地域での存在感を高めています。Kamitoは、ベトナム発のスポーツブランドとして注目されています。元々はサッカー用品からスタートしたKamitoですが、ピックルボール市場の成長を見据えて製品ラインを拡大しました。Kamitoのパドルは、手頃な価格帯ながら、ポリマーハニカムコアとファイバーグラス表面を採用し、初心者から中級者に適した性能を提供します。

Sypikは、ベトナムで急成長しているピックルボール専門ブランドです。比較的新しいブランドながら、技術革新と品質へのこだわりで市場での評価を高めています。Sypikのパドルは、カーボンファイバーとグラファイトを組み合わせた複合素材を使用し、軽量性とパワーのバランスに優れています。

Facolosは、ベトナムの新興ピックルボールブランドとして、独自のアプローチで市場に参入しています。Facolosの最大の特徴は、ベトナムの伝統的な職人技術と現代的な素材を融合させた製品づくりです。ブランドコンセプトとして、「アクセシブルな高品質」を掲げており、できるだけ多くの人々にピックルボールを楽しんでもらうことを目指しています。

これらのベトナムブランドに共通するのは、急成長する国内市場への対応と、国際市場への進出を見据えた品質向上の努力です。国際ブランドとの価格競争力を維持しながら、品質基準を満たすことで、徐々に市場シェアを拡大しています。また、ベトナムは多くの国際ブランドのOEM生産拠点でもあり、この経験が自国ブランドの技術向上にも貢献しています。

ベトナム製ピックルボール用品とパドル


今後の展望と課題

ベトナムのピックルボールは、今後さらなる成長が期待されています。

ベトナム政府もスポーツ振興の一環として、ピックルボールを含む新しいスポーツの発展を支援しています。地方自治体が公共スペースにコートを建設するケースも見られ、コミュニティレベルでの普及が進んでいます。経済的側面では、ピックルボール関連ビジネスがベトナムで急成長しています。コート建設、用品販売、コーチングサービス、トーナメント運営など、新しい雇用機会も生まれています。

一部の起業家は、ピックルボールカフェやピックルボールリゾートといった複合施設を開発し、スポーツと社交を組み合わせたビジネスモデルを展開しています。このような動きは、ピックルボールが単なるスポーツを超えて、ライフスタイルの一部として定着しつつあることを示しています。

しかし、課題も存在します。ベトナムブランドの今後の課題は、国際市場での認知度向上と流通網の拡大です。現在は主にベトナム国内と一部の東南アジア諸国での販売が中心ですが、オンライン販売の強化や国際的な展示会への出展などを通じて、グローバル市場への進出を図っています。品質と価格のバランスが優れているため、特に価格に敏感な新興市場では大きな可能性を秘めています。

また、競技レベルの向上も重要な課題です。現在は健康増進やレクリエーションとしての側面が強いですが、今後は競技スポーツとしての発展も期待されます。国際大会への参加や、プロ選手の育成など、競技力向上に向けた取り組みが求められています。

ベトナムのピックルボールは、アジアにおける成功事例として、他の国々にも影響を与えています。急速な普及、製造業との連携、コミュニティ形成の成功は、他の新興市場にとって参考になるモデルとなっています。今後、ベトナムがアジアのピックルボールハブとして、さらなる発展を遂げることが期待されます。


ベトナムのピックルボールは、わずか数年で驚異的な成長を遂げました。競技人口の急増、国内ブランドの台頭、国際交流の活発化など、多方面での発展が見られます。今後も、政府の支援、ビジネスの成長、国際的な連携を通じて、ベトナムはアジアのピックルボールシーンにおいて重要な役割を果たしていくでしょう。

ピックルボールに興味を持たれた方は、ぜひお近くの施設で体験してみてください。年齢や経験に関わらず、誰でも楽しめるこのスポーツの魅力を、実際に感じてみてはいかがでしょうか。

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この記事を書いた人

ベトナム在住3年目のピックルボール愛好家です。高校時代はバドミントン部に所属し、シャトルを追う毎日を過ごしていました。現在はホーチミンの熱気の中、バドミントンの経験を活かしたスピーディーなボレーと、ピックルボール特有の戦略的な駆け引きにどっぷり浸かっています。現地のコート情報や、バドミントン経験者ならではの上達のコツなど、ベトナムのリアルなプレイ環境をゆるく発信していきます!

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