米国発の最高峰プロツアー「PPAツアー」が、2026年7月23〜26日にスロベニアのポルトロージュ(Portorož Sport Center)で欧州初の大会「PPA Italy P125 Portorož」を開いた。アドリア海をはさんでヴェネツィアの対岸に位置する保養地での開催で、これはPPAが新設したイタリア系列(PPA Italy)の初戦にあたる。同じ週末にアジアではシンガポールとマレーシアでもPPA・APP系の大会が走っており、北米で完成したプロ興行が、アジアに続いて欧州へと版図を広げた瞬間だった。日本のプレーヤーや大会運営者にとっても、世界巡回がどの順序でどこまで来ているかは、これから関わり方を決めるうえで無視できない材料になる。
ポルトロージュ初戦はハンガリー・スペイン・英独勢が制した
Forbesの週末まとめによると、シングルスでは男子がハンガリーのバリント・バコ(Balint Bako)がスペインのペップ・カニャデル(Josep “Pep” Canyadell)を下して優勝、女子はサブリナ・メンデス・ドミンゲス(Sabrina Mendez Dominguez)が頂点に立った。ダブルスは男子がイングランドのルイ・ラヴィル(Louis Laville)とドイツのトム・プロツェク(Tom Protzek)組、女子が英国のクラウディア・カイメル・ロメロとケイティ・モリス組。混合ダブルスはケイティ・モリスとベン・カウストン組が制し、モリスは2冠を挙げた。
顔ぶれがハンガリー・スペイン・イングランド・ドイツ・英国と欧州勢で埋まっている点が、この大会の性格を物語る。PPAは米国の有名選手を空輸して「本場の看板だけ」を持ち込むのではなく、開催地域のローカル選手が主役になる舞台を用意した。プロへの入り口を地域ごとに作り、その地の競技人口を土台にして興行を根付かせる。アジアや日本への展開を読むうえで、この「地元選手が勝つ初戦」というかたちは示唆に富む。
125という点数が示す「欧州はまだ入り口」という位置づけ
今回の大会は優勝者に125ポイントが付く「スターター大会」で、これは通常のPPA大会のおよそ8分の1の価値にあたる。PPA Italyは今季、ポルトロージュに加えてイタリア・ブレシアなどで125〜250クラスの大会を組む予定で、まずは小さな点数の大会から市場を耕していく段取りだ。
一方、同じ週末にシンガポールで開かれていたのは「PPA Asia 500 Leapmotor Singapore Open」で、賞金は7万米ドル(1米ドル≒155円換算で約1,100万円)、ランキングは500ポイント級。マレーシアではペナン・オープンも走っていた。つまり同時刻に地球の反対側で回っていた大会は、点数でも賞金規模でもアジアの方が一段上だった。PPAの世界地図では、アジアはすでに500クラスの巡回段階、欧州は125の入り口段階という「世代差」が生まれている。
| 地域 | 大会(2026年7月26日の週末) | ランク | 規模の目安 | 開催地 |
|---|---|---|---|---|
| 欧州(新設) | PPA Italy P125 Portorož | 125ポイント | スターター大会(通常の約1/8) | スロベニア・ポルトロージュ |
| アジア | PPA Asia 500 Singapore Open | 500ポイント | 賞金7万米ドル(約1,100万円) | シンガポール |
| アジア | Penang Open | ー | APP系の地域大会 | マレーシア・ペナン |
北米→アジア→欧州、拡大順路の中で日本はすでに巡回対象
PPAの海外展開は、北米で興行モデルを完成させ、2026年にアジア(PPA Tour Asia)へ本格進出し、そのうえで欧州(PPA Italy)を立ち上げるという順番で進んでいる。ここで日本の読者に直結するのは、PPA Tour Asiaの2026年カレンダーに日本がすでに組み込まれているという事実だ。ハノイ杯、クアラルンプール・オープン、マカオ・オープンなどに加え、中国・日本・シンガポール・ベトナム・マレーシア・香港を回る計画が公表されている。
この地図を踏まえると、日本のプレーヤーがランキングポイントや賞金を狙うために欧州まで遠征する必然性は薄い。むしろアジア圏内に500クラスの舞台が来ている以上、近場でプロへの階段を上れる環境が整いつつある。欧州がいまポルトロージュで踏んだ「地元選手が初戦を制する」段階を、アジアはすでに一つ上の点数帯で通過している――日本にとっての機会は、地理的にも点数的にも欧州より手前にある。当サイトでは以前、東南アジアの拠点化についてシンガポールが住宅地に10面を構えて東南アジアの拠点になる動きを取り上げたが、今回のツアー同時開催はその流れが競技興行の面でも具体化していることを示している。
興行側の商機は「グローバル看板の一戦」を地域に呼び込めるかどうか
プレーヤー目線だけでなく、大会運営やスポンサー側の視点でも今回の欧州初開催は検討に値する。ポルトロージュはリゾート地の既存スポーツセンターを会場に使い、125という小さな点数の大会から始めた。いきなり大規模大会を狙うのではなく、地域の保養地・既存施設・地元選手を組み合わせて「世界ツアーの一戦」という肩書きを地域に落とし込む――このやり方は、施設や誘客資源を持つ日本の地方にとっても移植しやすい。
実際、アジアではベトナム・ダナンが80カ国4,000選手が集まる2026年Pickleball World Cupの開催地に選ばれ、都市誘致の競争が始まっている。欧州側でも上場企業VVV Sportsが欧州・中東・アフリカの巡回戦TOPSERIESを買収し、興行そのものが投資対象になりつつある。PPA Italyの125スタートは、こうした「まず点数の小さい大会で地域を耕す」という王道の入り口であり、日本の観光地や商業施設がプロツアー誘致を検討するときの現実的なひな型になる。
選手はアジア500を優先、施設誘致は125〜250クラスから始める
- 選手:欧州遠征より、PPA Tour Asiaの日本・東南アジア日程を先に押さえる。500クラスならポイントと賞金の効率が欧州の125を大きく上回る。
- コーチ・アカデミー:欧州初戦を地元選手が制した事実は、地域からプロを育てる導線が機能する証拠。国内の育成カリキュラムに「アジア巡回でのポイント獲得」を目標として組み込む余地がある。
- 施設・自治体・スポンサー:まずは125〜250クラスの誘致から検討する。既存の温泉・リゾート・大型商業施設は、ポルトロージュ型(保養地×既存施設×地元選手)のモデルと相性がよい。

