カリフォルニア州マルティネス市でコートが突然閉鎖
アメリカ・カリフォルニア州のマルティネス市で、ピックルボールコートが近隣住民からの騒音苦情を受けて閉鎖に追い込まれた。地元メディアKRON4が2026年3月20日に報じたこのニュースは、急速に拡大するピックルボール人気の「影の部分」を改めて浮き彫りにした。
マルティネスはサンフランシスコ・ベイエリアの東側、コントラコスタ郡に位置する人口約4万人の中規模都市。コミュニティ志向の強いこの街でも、ピックルボールは近年急速に普及していた。しかし、コート周辺に住む住民から「打球音がうるさすぎる」「早朝から夜遅くまで続く音に悩まされている」といった声が相次ぎ、行政が使用禁止の判断を下したという。
なぜピックルボールの音はこれほど問題になるのか
ピックルボールの騒音問題は、マルティネスに限った話ではない。全米各地で同様の事例が報告されており、スポーツそのものの普及を阻む壁となっている。
その根本的な原因は、ピックルボール特有の「打球音の性質」にある。硬いプラスチック製ボールがポリマーコアのパドル面に当たる際に発生する「パキッ」という高音は、周波数的に人間の耳に届きやすく、数十メートル離れた場所でも明瞭に聞こえる。テニスのような低音の「ドン」という音と比べて、高音は障害物を回り込む性質が弱い一方で、遠くまで突き抜けやすい特性がある。
さらに、ピックルボールのコートはテニスコートより小さく(ピックルボールのコートサイズ完全ガイドを参照)、1面のスペースに複数コートを設置しやすいため、住宅街の公園や学校の敷地など住居に近い場所に作られがちだ。これが騒音被害を増幅させる要因となっている。
アメリカ全土で繰り返されるコート問題の実態
爆発的に広がるアメリカのピックルボールでも解説しているとおり、アメリカではここ数年でピックルボール人口が急増。USAピックルボール協会の推計によれば、2025年時点で全米のプレーヤー数は2000万人を超えるとされる。
この急拡大に施設整備が追いついていない現状が、各地でのコート問題を招いている。フロリダ州、アリゾナ州、ニューヨーク州など、ピックルボール人口が多い地域では訴訟に発展したケースもある。マサチューセッツ州ニュートン市では裁判所が住民側の差し止め請求を認め、コートが一時閉鎖された例もある。
行政側の対応策としては以下が挙げられる。
| 対策 | 内容 |
|---|---|
| 防音フェンス・防音壁の設置 | コート周囲に吸音材入りフェンスを張る |
| 使用時間の制限 | 早朝・夜間のプレーを禁止する |
| 低騒音ボールへの変更 | 音を抑えた素材のボールを使用 |
| コートの移転 | 住居から離れた場所への移設 |
| 防音設計のコート新設 | 最初から騒音対策を組み込んだ設計 |
日本のプレーヤーが今から学べること
この問題は、日本のピックルボールコミュニティにとっても対岸の火事ではない。日本のピックルボール事情を分析でも触れているように、日本でも都市部を中心にプレーヤー数が増加し、コート設置の需要が高まっている。
アメリカの失敗から学べる教訓は大きく3つある。
1. コート設置前の地域コミュニケーションが不可欠
プレーヤーや運営者が主体となって近隣住民への説明会を開き、懸念に対して丁寧に対応することが長期的なコート維持につながる。
2. 最初から騒音対策を組み込む
コート新設の段階で防音フェンスの設置、プレー可能時間の自主的な設定を行うことで、苦情が生まれる前に問題を防げる。
3. 低騒音器材の活用を検討する
近年、騒音を抑えた素材のピックルボールが市販されている。住宅街や施設内でプレーする際は、こうした器材の選択も一つの配慮になる。
ピックルボールコミュニティが果たすべき役割
スポーツが地域に根付くには、プレーヤー自身の「良きご近所」としての振る舞いが欠かせない。コートを使わせてもらっている感謝の姿勢、ゴミの持ち帰り、声の大きさへの配慮——こうした小さな積み重ねが、コートを守り、新しいプレーヤーを迎え入れる土壌をつくる。
マルティネス市の閉鎖が示しているのは、ピックルボールの「強さ」ではなく「脆さ」だ。どれだけ多くの人が楽しんでいても、周囲との関係が壊れれば一瞬でコートを失う。日本のピックルボールがこれから広がっていく中で、この教訓を活かし、コミュニティ全体で持続可能なスポーツ文化をつくっていきたい。
参照元:Martinez pickleball courts shuttered after neighborhood complaints – KRON4
よくある質問
Q1: ピックルボールの音はどのくらいうるさいですか?
A1: ピックルボールの打球音は70〜85デシベル程度とされており、これは掃除機の音と同程度です。高周波数の「パキッ」という音質が人の耳に届きやすく、特に静かな住宅街では問題になりやすいとされています。
Q2: 騒音問題を避けるためにプレーヤーができることはありますか?
A2: 使用時間を早朝・深夜に限定しない、低騒音タイプのボールを使用する、大声を控えるなどの配慮が有効です。コート周辺の住民への挨拶や定期的なコミュニケーションも長期的なコート存続につながります。
Q3: 日本でも同様のコート閉鎖問題は起きていますか?
A3: 2026年時点では大規模な閉鎖事例の報告は少ないものの、都市部の公共施設でのプレー制限や時間規制の事例は出始めています。プレーヤー人口の増加に伴い、今後は日本でも同様の課題が顕在化する可能性があります。