2026年4月7日、ピクルボール用パドルメーカーのJOOLAが、Franklin Sports・Adidas・RPM Pickleball等11ブランドを相手取り、米国際貿易委員会(ITC)と連邦裁判所へ同時に特許侵害訴訟を提起した。争点はJOOLA独自の「プロパルション・コア」技術——EVAフォームとポリプロピレンハニカムを組み合わせたU字構造で、パドルに制御されたフレックスとスプリング効果を与える設計だ。ITC提訴により、侵害品の米国市場への輸入差止めが視野に入る。
提訴の詳細——ITC+連邦裁の二面作戦
JOOLAは4月7日付でITCに対し、11社の製品が同社の特許を侵害しているとして調査開始を申し立てた。ITCは金銭的賠償を命じる権限を持たないが、侵害品の米国への輸入を排除する「排除命令」を発令できる。海外で製造されたパドルが大半を占める業界構造を考えれば、この戦略は的確だ。
並行して、JOOLAは連邦裁判所にも訴訟を提起し、将来的な損害賠償請求の道も確保している。CEO リチャード・リーは「これは原則に基づく判断であり、反射的な行動ではない」と声明を出した。
「プロパルション・コア」とは何か
争点となる技術は、パドル内部にU字型の馬蹄形EVAフォームを配置し、ポリプロピレンハニカムコアと組み合わせる構造だ。この設計により、スイング力を上げずにドライブやスピードアップのパワーを増幅できる。JOOLAはこの技術を2024年にGen 3、MOD TA-15、3Sパドルで市場投入した。
注目すべきは、パドル全周をフォームで囲む設計(SelkirkのEra Powerなど)は訴訟対象に含まれていない点だ。あくまでU字型の部分的フォーム配置が特許の核心となる。
被告11社一覧
| ブランド名 | 備考 |
|---|---|
| Franklin Sports | 大手スポーツ用品メーカー。MLB公式球も製造 |
| Adidas Pickleball | 2025年にピクルボール市場へ参入した世界的ブランド |
| RPM Pickleball | 急成長中のパドル専業メーカー |
| Engage Pickleball | 中級〜上級者向けパドルで定評 |
| Proton Sports | パフォーマンス重視のパドル開発 |
| Friday Labs | テック系スタートアップ出身のパドルブランド |
| Diadem Sports | テニス用品からピクルボールへ展開 |
| Facolos | 新興パドルメーカー |
| Volair | 軽量設計で注目を集めるブランド |
| Paddletek | ※和解済み(ロイヤルティ支払いで合意) |
| ProXR Pickleball | ※和解済み(ロイヤルティ支払いで合意) |
PaddletekとProXRは早期和解——ロイヤルティ契約で決着
11社のうちPaddletekとProXRの2社は、提訴後まもなく和解に至った。両社はJOOLAの特許をライセンス契約し、ロイヤルティを支払うことで合意。対象パドルは2026年秋までに段階的に販売を終了する。
残る9社については訴訟が継続中だ。和解に応じた2社の動きは、JOOLA側の特許の有効性を間接的に裏付けるものとも解釈できる。
業界関係者の反応
JOOLAのリチャード・リーCEOは「イノベーションを守ることは、他社の可能性を制限するためではない。このスポーツを前進させるために必要な投資・創造性・エンジニアリングを持続させるためだ」とコメントしている。
一方、パドルメーカー側からは「U字フォーム構造はJOOLA以前から存在していた」との反論も予想される。ITC調査では先行技術の存在が争点になる可能性が高い。
業界アナリストは「これはピクルボール業界初の大規模特許訴訟であり、今後のパドル開発の方向性を決定づける」と指摘する。パドル設計の自由度と知財保護のバランスが試される局面だ。
日本のプレーヤーへの影響
日本でJOOLA製品を使用するプレーヤーにとって、この訴訟は直接的な影響を及ぼさない。ただし、ITC排除命令が発令された場合、被告ブランドのパドルが米国市場から消える可能性がある。個人輸入でこれらのブランドを入手していたプレーヤーは、調達ルートに影響が出る場合がある。
長期的には、特許ライセンス料がパドル価格に転嫁される可能性もある。Apollo×ダンドンの2.25億ドル投資に見られるように、ピクルボール産業への資金流入が続く中、知財戦略がメーカーの競争力を左右する時代に入った。
パドル業界への波及——知財が勝敗を分ける時代に
今回の訴訟は、ピクルボール業界が「スタートアップの草創期」から「知財で差別化する成熟期」へ移行したことを象徴する。テニスやゴルフではクラブ・ラケットの特許訴訟が古くから存在するが、ピクルボールでこの規模の知財紛争は初めてだ。
パドルメーカー各社は今後、自社技術の特許出願を加速させるだろう。同時に、他社特許への抵触リスクを評価する「パテント・クリアランス」の重要性が高まる。MLP 2026シーズンのプロ選手が使うパドルの選択にも、この訴訟結果が影響するはずだ。
実用情報まとめ
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| 提訴日 | 2026年4月7日 |
| 提訴先 | 米国際貿易委員会(ITC)+連邦裁判所 |
| 対象特許 | プロパルション・コア(U字型EVAフォーム+ポリプロピレンハニカム構造) |
| 被告数 | 11社(うち2社は和解済み) |
| 和解企業 | Paddletek、ProXR(ロイヤルティ+ライセンス契約、秋までに対象製品を段階的終了) |
| ITC排除命令の場合 | 侵害パドルの米国輸入禁止 |
| 日本への影響 | 個人輸入ルートに限定的影響の可能性 |
まとめ——パドル技術の知財化が加速する
JOOLAの一斉提訴は、ピクルボール用品業界に「特許を取らなければ守れない」という明確なメッセージを突きつけた。PaddletekとProXRが早期和解に応じた事実は、プロパルション・コア特許の強度を示唆する。残る9社の対応と、ITCの判断が今後のパドル市場の地図を書き換えるだろう。新しいパドルの購入を検討しているプレーヤーは、訴訟の帰趨を注視しておきたい。